異世界ハンター生活日記

宇宙猫

文字の大きさ
4 / 17
第1章

第3話

しおりを挟む
「結構、大きいなぁ……」

 ギルドに到達すると、私はその大きさに驚きました。
 木造三階建てのその建物は、他の建物よりも、その存在感を放っていたので、気づけなかったのが不思議になるぐらいです。

「では、私はここで。案内してくれて、ありがとうございました」

 彼女は私に一礼すると、待たせていたようで、2人組の人達の元へと走っていきました。恐らくパーティーの方なのでしょう。
 私も、それを追うように入っていきました。
 ギルド内部は、体育館1個分の広さの所に、等間隔で設けられたテーブルとイス。
 奥の方にはカウンターがあり、その左右横にはクエストの用紙や軍団レギオン、パーティーの募集用紙などが、ぎっしりとボードに貼られていました。
 さらに二階に続く階段もあり、ギルドが太鼓判を押す武器屋、防具を作る鍛冶屋や道具店などが揃っていました。

「やっぱり大きい、受付は何処でしょうか?」

 田舎者よろしくキョロキョロと、辺りを見回しているのを見たのでしょうか、受付嬢と思われる女性が小走りで走って来ました。

「いらっしゃいませ、今日は、どういった用件でしょうか?」

 ヨーロッパの民族衣装の様な服に袖を通し、頭には頭巾を結び、やたらと小物を入れるポケットが多い白いエプロンを腰に巻いています。
 手元には配膳用のおぼんのような、丸い金属製のものとメニューと思われる、本を持っていました。
  クエスト受注等のほかにも、飲食が可能な様です。

「すみません。冒険者登録をしたいのですが、初めて来たので、よく分からなくて」

 まだ言語が通じるだけマシですが、異世界こことは違う世界に生きて来た為、やはり根本的な所から分からないことが山ほどあります。
 まあ、ヒューイさんから送られた、この世界の諸情報を書いたメールを見れば、分かるかもですが……。
 どうも文字の羅列って、読むのがしんどいのです。
 〇ate/〇rand 〇rderとか、〇ード〇ート・〇ンラインなどの、ライトノベルとかはまだ楽しいから読めますが。

「冒険者登録ですね。でしたら、この札を持って、3番カウンターへお願いします」

 受付嬢の女性は、沢山ある小物入れの中から、緑色の5と書かれた札を取り出して渡します。
 ここで要件を聞き、その種類で、色を分けている。とか、そういうシステムなのでしょうか?

「3番カウンターですね、ありがとうございます」

 よく分からないながらも、それを受け取り、一礼をします。幼い頃からそういうように教育された為か、無意識。という訳ではありませんが自然に心をこめて感謝します。

「いえいえ、では失礼します」

 礼を言ったのが良かったのか、受付嬢さんは笑顔で、気持ち良く送ってくれました。
 その後、ルンルン気分で歩いていた所をずっこけたのは、多分気の緩みでしょう。
助けに行こうとしたものの、近くにいた男性に起こされた様子で、大丈夫らしいです。
 というか、何で二人共赤い顔をしているのでしょうか……。

「……冒険者登録に行こう」

 目の前でリア充予備軍が出現したのを横目に、さっきの受付嬢の女性に言われた、3番カウンターへと向かいます。
 その3番カウンターには、同じように赤色の2や、青色の7と書かれた札を、持った人達が並んでいました。
 同じように緑の札を持っている人は、いませんでした。
 私で5人目だから、そう頻繁にあるものでもないですよね……。

「次の方、どうぞ~」

 そう思っていると、とうとう自分の番になりました。
 カウンターへと行くと、民族衣装を着る受付嬢と違って、こちらは近代的なスーツの様な格好をしている男性が、受付をしていました。
 どこかの会社の、サラリーマンに紛れ込んでても、気にならないかもです。
 今の職業的にも、あっているような気が、してなりません。

「まずは札を、貰ってもよろしいですか?」

「はい。これですね」

 受付嬢の人に渡された、緑色の5の札を渡します。
 男性は、それを受け取ると、用紙の緑色欄に書かれた四本の横線に、縦線を引きました。
 前世日本でいうところの、正の字で書く集計と、同じようなものでしょう。

「はい、ではこのアンケートを書いた後に、隣の、4番カウンターにて、提出して下さい」

「分かりました。ありがとうございます」

 カウンターからアンケート用紙と、羽根ペン。インク壺等を受け取ると、近くの席を取って、羊皮紙で出来たアンケート用紙の必要事項を、記入していきます 。

 アンケート欄には名前、年齢、出身地、種族、信仰する宗教、魔術師か否か、魔術師であればそのランク、前職、使用する基本的な武器、使用言語、使用文字等々。

 ですが、ところどころ異世界こことは違う世界で生きて来ただけに、やはり根本的に分からないところが多いです。
 言い訳を考えてもキリがないので、こんな時は、神様に聞いてみましょう。
 スマホを取り出し、用意された電話番号を使い、電話をかけました。

「もしもし?どうされましたか?黒恵様』

 2回の呼び出し音の後、神様の声が聞こえます。無事繋がって何よりです。
 というか、水蒸気を用いた機械は、既にありそうですが、太古の地層に在りし油なんて、なにそれ美味しの?状態のこの世界で、電波も飛んでない中、どうやって通信出来ているのでしょう?
 私、ちょっと気になります!

「すみません。今冒険者登録のアンケートを書いている所なんですが、出身地とか、魔術師か否か等々、わからないところがあるのですが、どうすればよろしいでしょうか?」

 羽根ペンを、小中学校の頃、授業中によくやっていた、シャーペン回しの要領で器用に、くるくると回しながら、分かる所だけを書いていきます。
 今のところ分かるのは名前、年齢、種族、信仰する宗教(なし)、前職(なし)、使用する基本的な武器ぐらい。
 使用言語と使用文字は、日本語で良いのか分からませんし、書いてません。

『ああ、なるほど。メールで書いたと思いますが、多すぎましたかね?』

「バリバリ多すぎです。あの量はびっくりしましたよ~」

『それはすみません。ちょうどあなたを、見ているのでお手伝いしますね……まず、出身地は、前世は日本国という所に、お住まいだったそうで、そこから因んで東方連合で大丈夫です。ここの国でその国出身の冒険者は、そう珍しくもありませんし』

「了解です。東方連合っと……」

『次に魔術師です、素質自体は、ステータスの底上げによって、十分にあります。ですが、魔術師用のスキルは用意してなかったので、今は否でお願いします。黒恵様が、魔術師を希望する様でしたら、近日中に用意しておきますが?』

「いえ、大丈夫です。奴隷を買って、仲間にして、教えてもらう予定なので」

『了解です。あと言語ですが、東方連合の東方語、それと、ここルファント公国のルファント語、をお書き下さい。読み書きは、こちらの方で補助を行っているので、使用言語も、その二つをお書き下さい』

「分かりました、東方語と、ルファント語ですね。ありがとうございます。全て書き終わりました」

『はい。それでは、また何か用事があれば、よろしくお願いします』

 その言葉を最後に、電話は切れました。
 とりあえず、完成したアンケート用紙を、4番カウンターに提出すれば、あとはオッケーですね。

 席を立ち、少し伸びをすると、アンケート用紙、羽根ペン、インク壺等々を持って、私はカウンターへと向かいました。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...