異世界ハンター生活日記

宇宙猫

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第1章

第12話

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「ルーア、リーア……射撃準備完了。いつでも撃てるけど、そっちは大丈夫?」

場所は、村の北側。主に小麦などを育てる田畑の外れにある、数本の木の集まり。
その中にある、木の幹に、M24 SWSという新しいライフルを構えた私は、口元にあるマイクへそう言いました。
それは、迅速かつ円滑な連携するために無線機を装備したルーア達に対してです。
獣人の耳は構造が良く分からないので、無線機に片耳イヤホンを耳にズボッとしただけ。
彼女たちも特に気にする様子もないのでそのままにしているものの大丈夫か心配……。

それはともかく、偵察していた時に見つけたキャステイトを遠距離から狙撃ように展開した私は、通信ができるかのテストも兼ねて、ルーア達に態勢が整っているか聞きました。

『……』

『ルーア姉、私共に準備完了です。いつでもどうぞ』

少しの間を置いて、喋ろうとしない姉ルーアに変わって、妹リーアが答えました。
M24のスコープ越しに、木の影からお互いジェスチャーし合う様子を捉え、大丈夫なようなので特に言うことはなく、その先にいるキャステイトの群れへと集中します。

「じゃあ、撃つよ」

ボルトアクションライフル特有の、コッキングレバーを前後する手動装填を行い弾を入れると、銃を構え、スコープの先に見える集団。その先頭にいるキャステイトの足へと、照準を定め──刹那、息を止め、右手人差し指をかけたトリガーを引きました。

撃鉄が落ち、押し出された撃針によって薬莢底部の雷管を叩かれ爆発。
それを起爆剤として、薬莢内の火薬が急速に燃焼、その燃焼ガスによって弾丸は強く押し出され、ライフリングの溝を高速回転しながら、銃口から飛び出していきました
重く、かつ乾いた銃声は銃口に取り付けたサイレンサーによって抑制され、その甲高い音は遠くまで聞こえません。

初弾が命中し、足にダメージを負ったキャステイトは、その痛みに悶えながらバランスを崩し、砂埃をたてて倒れました。

それを確認すると、私の右手は素早くコッキングをして二発目を装填。
間髪入れず、他のモンスターの足を狙い、そう簡単には逃げられないようにします。
それでも逃げるようでしたら、ルーア達が通せんぼする。という予防線も貼ったので、弾倉一発を残した状態で、新たな弾倉に交換。

再びスコープを覗くと、被弾した足を引きずり、鈍足ながらも逃げようとするキャステイト達に、せめて一撃で死ねるように心がけながら、7.62mmの弾丸を頭部に打ち込みました。

──────

一連の攻撃が終わり、舞い散った砂埃の中にロイスローの死体が八匹横たわる様は、突然死のようにあっという間のことでした。
その一方的な攻撃を間近で見ていたリーアは、いとも容易く命絶えたキャステイトに驚くと共に、黒恵の持つ武器の威力の高さを実感していました。

ですが、姉のルーアは少し違いました。
確かに、妹のリーアの思うようなところもありましたが、それ以上に、その攻撃目標が私達であったら。という、黒恵に対しての畏怖の念を抱いていました。

それは、数世紀先に出来た武器がもたらす狙撃という概念なのですから、その畏怖も自然な考えなのではないかと思うのです。
どうも、スラム街にひっそりと住む猫です。

そもそも、狙撃とはなんなのでしょう?
復習がてらゲリラ的☆ミリタリー講座と行きましょう。

まあ狙撃は呼んで字の如く、「狙って撃つ」という意味合いもあり、近距離からの銃撃でも一個人を特定して狙った場合。特に暗殺目的のものは狙撃という言葉が使われることも少なくありません。
ですが、この場に限っては遠距離からの狙撃についてなので、どんどんいきましょう。

まずは、軍隊や警察においての狙撃では、小銃(特に狙撃銃)を使って遠距離の目標を狙い撃つことを狙撃としています。
自動小銃やアサルトライフル、短機関銃等の自動火器を用いた制圧射撃や近接戦闘と対になる概念である、狙撃を専門とする者を狙撃手と呼び、軍隊や警察に存在します。

第二次世界大戦時代の軍隊では、小銃手の中でも射撃技術が優れる者が狙撃の役割を担っていましたが、現代の先進国の軍隊での狙撃手は、専門の教育課程を経て養成され、一般的な歩兵部隊とは独立して行動することも多いです。
アメリカ陸軍やロシア陸軍などでは、歩兵部隊に配属されて遠距離の射撃を行う兵士は選抜射手と呼ばれ、狙撃手と区別されています。

狙撃手というのはわかった、じゃあ具体的にどうやって運用するんやねんと思われそうなので、さらに行きますよー。

まあ、狙撃はそこそこ有能で、特定の目標に対して致命的な攻撃を行うことができるので、敵の人員のうち特に指揮官、通信兵、機関銃手など重要目標を狙い撃ち、敵の戦闘力を削ぐと同時に、敵全体にプレッシャーを与え、行動を制限すると共に士気を低下させるということができます。

フォークランド紛争においては、アルゼンチン軍の兵士がM2重機関銃にスコープを装備してイギリス軍の兵士を狙撃した例も存在し、これがアメリカのバレット M82などの12.7mm以上の大口径対物狙撃ライフルができるきっかけになったのです。
ここら辺のを頭に受けると、夏といえば海、海といえばスイカ割りですが、そのスイカを割った時のような感じでグチャっと……。
それがハーグ陸戦条約の、「不必要な苦痛を与える兵器」に該当するのではないかという見方もありますが、条約の条文に12.7mmだの、大口径銃弾だの記述があるわけでもないので、私も少し前は知らなかった事ですが、具体的に使用を制限する条約や法律は存在しません。

軍隊以外では、特に警察の特殊部隊においては人質救出時に犯人を狙撃して無力化することにより、突入後に銃撃戦を行って流れ弾で人質を傷つける危険性を減らすことができるため、狙撃手を養成している部隊もあります。

また内戦や地域紛争においては、交通の要衝や井戸などの生活の拠点を狙えるポイントに狙撃手を隠して配置し、その地点を利用する一般住民を無差別に標的とした(市民生活を妨害・委縮・圧迫させる)狙撃作戦が実行される、ユーゴスラビア紛争・ISILといった事例もあります。

とりあえず、今後もちょくちょく現れてはゲリラ的解説コーナーをは開くので、ご贔屓にお願いします。
では、そろそろ本編へ……。

『ルーア、リーア、キャステイトの回収お願い。この勢いなら、早めにお金も払えそうじゃない?』

依然、ルーア姉妹には衝撃が強かったのでしょうか、一方的な戦闘が終わり、一区切り着いたところで、二人に無線でそういうと、私もM24を背負い木から降りました。

我に返った二人は慌てた様子で木の影から出てくると、一匹、一匹生死の確認を取りながら、足を縛り、血痕などに薬品を数滴垂らしたりなどの処理を行いました。

さすがにキャステイト八匹は三人で分担しても十分重いものなので、収納強化魔法を付与した大きな旅行バックに限界分である4匹を詰め込み、作業が終わるとその喜びからか、早足でキャンプへと戻りました。

「いやー、初手で八匹は幸先よくないですか?」

そう言って、横一列に並べられたキャステイトの状態を確認してまわったリーアは、普通じゃ一日で狩れる限界に近い数をあっという間に仕留めたことに興奮を隠せずにいました。

「うーん、実を言うと、これをあと100匹ぐらい狩りたいんだよね、お金も相応に期待できるし、何よりルーアの支払いを済ませたいしね」

「100匹……」

桁がひとつ増えてない?とルーア姉妹は疑問を抱きつつ、その数を狩って得られる報酬が如何程に膨れ上がるのか半ば期待もある彼女達は、数にこだわらず考えるのをやめました。
稼げる時に稼がなくて何が冒険者ですか。

「とりあえず、このバックの中に入れておいて、また狩りに行こうか」

ちょっといいとこ見つけた。と口ずさみながら、私は弾薬を補充した新しい弾倉へ交換し、2人の準備を見終わるとまた狩りに出かけました。
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