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17・大人か子供か 後
しおりを挟む「陛下、今回は誠に申し訳ございません」
ガルグィードは跪いて深く頭を下げた。
フィブリスが「彼の立場上、一度は謝罪してくるでしょう」と言ってたけど、その通りだった。私は鷹揚に頷いて(そのくらいがいいって、これもフィブリスが言った)、ガルグィードに声をかける。
「ガルグィードが悪い訳じゃないから、もういいよ。でも、モドンは困る」
「はっ」
「私がこんな見た目だから、敬えと言われても難しいのは分かる。でも、式典でああいうことをする奴は……そのうち上司の命令も聞かなくなるんじゃないのかな?」
「……おっしゃる通りです、陛下」
ガルグィードはまた頭を下げ、それから不思議そうに私を見る。
「今、『こいつ意外と分かってるんだな』とか思ったでしょ」
「はっ!? え、いや決してそのような……」
いかついおっさんのガルグィードが、ちょっとかわいそうなくらい狼狽えた。そして救いを求めるようにフィブリスを振り返る。フィブリスは苦笑気味だ。
「ガルグィード、陛下の見た目に騙されてはいけません。この方は少なくとも、二百歳程度の精神をお持ちです」
―――げ、よく分かったねフィブリス。
人間として十五年。その後転生し、ミミィとして四十年。こっちの十年が人間の一年くらいに当たるらしい。前からそう思っていた。前世の記憶を加えたら、確かに私はそのくらいに相当すると思う。……見た目はせいぜい小学生だけれど。
「なるほど、それで得心がいきました」
ガルグィードは立ちあがった。近づいてきたフィブリスと目を合わせて頷き合う。
「加えて転生者としての資質に、先ほどの術。これは侮れませんな」
「振り回されるほうはたまりませんがね」
フィブリスが私をちらりと見て肩をすくめた。
とりあえず、ガルグィードが報告したのは次のことだった。
モドンはしばらく謹慎。将軍としてはいっそ降格させてしまいたいのだけど、表向きたいした罪でもないので、それはできない。ただ今後大人しくなるかは怪しいので、当面は、将軍の判断で式典などには参加できない任務を割り当てるつもりだという。
「うん、いいんじゃない? ただし、次はもうないよ」
「はっ」
思ったよりも冷酷に聞こえたのか、ガルグィードは少し意外そうな顔で退出していった。
本当はいちいち噛みついて来ないでくれるなら、モドンなんてどうでもいい。次は、私から見えないところに配置替えでもしてもらおう。
「あらあら陛下。お疲れになったのですね」
シャリムの声に、私ははっと顔を上げた。ぼんやり考えていたら、つい居眠りしていたらしい。
「少しお休みになりますか? それとも、さっき中断したお茶の続きになさいます?」
「お茶がいい! まだクッキーあるよね?」
ちょっとくらいの眠気なら、糖分が吹き飛ばしてくれるはず。さっそくチョコチップクッキーを頬張った私を眺めて、フィブリスがぶつぶつ呟いていた。
「いったいこの方は、大人なのか子供なのか……」
大人か子供か……と言えば、どちらかと言えば子供だろう。見た目よりは、ほんの少し年上だけど。
私には人間だった時の記憶がある。こちらの魔物たちとは少し考え方が違うかもしれないけれど、それだけだ。あんまり勉強も得意じゃなかったし、転生者だということが、魔王として何の役に立つのか分からない。
それに魔王になったからって、決して安泰でもなさそうだ。モドンとかイルウィンとか、得体の知れない奴らに囲まれて、王位どころか下手したら命を狙われかねない。でもガランとゴロンもいるし、何とかなるだろう。あんまり難しいことを考えるの、得意じゃないんだよね。
なりたくて魔王になったんじゃないけれど、もともと好きでミミィに転生したわけでもない。でも、魔王なんて滅多になれるもんじゃないし、せっかくだから楽しんでみたい。前代未聞の最弱魔王だけど、いつかはこの国で、煌めく最強の魔王として君臨してやろうじゃないの。
もう二百年ぐらいすれば私だってきっと、色気溢れる美女魔王になってるはずだ。―――ウサギだけれど。
とにかく。本日、私こと白魔道士のミミィは……魔王になりました。
応援ありがとうございます!
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メチャクチャ面白かったです♪ぜひ続きが読みたいです♪(* ´ ▽ ` *)ノ
面白かったです(≧∇≦)これからも応援してます!!
ありがとうございます!
こちら長く止まってしまっていて、申し訳ないです。少し先になりますが必ず完結させますので、その時はよろしくお願いいたしますm(__)m