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13・魔王の服従 上
しおりを挟む「―――何すんのよ!」
謙斗の唇がふれた瞬間、私は我に返った。思わず両手で魔法を放ってしまい、謙斗は後ろへ弾き飛ばされる。
「おっと」
ところが謙斗は階を転がり落ちるどころか、宙できれいに一回転してすとんと着地した。
「油断してた。気が強いとこは相変わらずなんだな。まあ、そっちはそんなに歳とってないからしょうがないか」
そしてにやにや笑いながら、また階を上がってくる。
―――何を言ってるの……?
そこで、初めて気がついた。
私の顔は、人間だった時とは完全に変わっている。せいぜい「よく見れば似ていないとは言い切れない」程度。扁平な日本人特有の顔だった昔とは、瞳の色も違うし、鼻筋もスッと通って、顎も細い。だいたい頭には角があるし、体型だって魅惑のおっぱいを備えたダイナマイトボディで……。
なのに、何故分かるの? 今の姿なら、たとえ親だって分からないと断言出来る。それが、ほんの半年付き合っただけの男に。
「……何で」
「そんなの、決まってんだろ」
独り言のような私の呟きに、謙斗が当然のように返してきた。
「ここは、俺の世界だ。俺の作った、ゲームの世界」
「は……?」
―――なに? 何を言っているの?
意味が分からずに眺めていると、謙斗が笑いを消した。
こうやって近くで見ると、昔の謙斗との違いが嫌でも見えてくる。目元には皺が刻まれて、こめかみのあたりには白髪もちらほら見える。すっかり陽に灼けた肌と、別人のように筋肉質になった身体。そしてなにより、全身から匂い立つような、危険な男の空気。
元はゲームにのめり込んでいた草食系イケメン(浮気は出来たけど)だとは、とても思えない。いったい何が、謙斗をこんな風に変えたのだろう……?
浮かんだ疑問も、謙斗が話しだしてまた消えてしまった。
「ここはオレの作った世界。だから、ここでは俺が神だ」
「神……?」
「創造主といった方が、通じるか」
「ゲーム……マスター……?」
呆然と繰り返すだけの私を見て、謙斗はまた笑った。
「まあ百聞は一見に如かずってやつだよな。おい、入って来い」
「はっ」
扉の向こうから、聞き覚えのある声がした。
開いた扉から入ってきたのは、アードンと、そしてその後ろに……倒されたはずの6人の将軍たちが続いている。
「お呼びですか、創造主」
「えっ、どういうことなの、アードン!? 将軍たちも!?」
驚く私をよそに、アードンたち7人の視線は、一様に謙斗に向けられている。だれもこちらを見ようとはしない。
―――何、これ? まさか、操られてるの?
「まぁ、見ての通りだ、この世界で、俺の命令に従わない奴なんかいない。……お前は例外だけどな」
そう言って謙斗は、私に手を伸ばした。
「きゃっ!?」
「なに可愛い声出してんだよ、魔王のくせに」
謙斗は軽々と私を玉座から抱き上げた。そして当然のように自分が座ってしまい、私を膝の上に乗せる。もちろん私は逃れようとした。それなのに、何故か力が入らない。
「ちょっと、下ろして!」
せめて振り向いて謙斗を睨みつけてやったけれど、離れるどころか、にやりと笑って後ろから腰を抑え込まれてしまう。もう、どういうことなの、これ?
事態に付いていけずに混乱した私は、魔王の威厳も貫禄も忘れ、思わず叫んでしまった。
「何なの、これ!? 放して!」
「後でゆっくり話してやるさ」
「―――ちょっと、そういう意味じゃ……っ!」
謙斗の手が明らかに違う意思をもって動いた。スリットから入り込んだ手が、腿を撫で回している。スカートの裾が割れ、白い足がのぞいた。
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