ホラー短編集

Kuroha

文字の大きさ
上 下
2 / 4

誘拐

しおりを挟む
 ある日、俺の家に一件の電話がかかってきました。


「お宅の息子は預かった。身代金3000万を明日までに用意しろ。明日の午後11時再び電話する。できなければ命は保障しない」


「ちょっ…待っ……」

ーーーーー
電話主は俺の言葉を聞く前にあっさりと電話を切ってしまった。



 うちに息子などいない。


 俺の家は、俺の両親とそれから俺と嫁。そして俺の祖父母という今では珍しい家族構成だ。気の毒な犯人だと思った。


 翌日の午後5時全く予告とは関係のない時間にそいつから電話がかかってきた。
「おい、用意したのか」

「いや……そもそも内に息子はいないんだが。ついでに言うと娘もいない」

「は?てめぇそうやって混乱させる魂胆だろ。子供が住所から電話番号まで全部吐いたぞ。言ってやろうか?相川宗介。広島県福山市……」

「あぁ…待て。もういい。だが、こっちとしても混乱してるんだ。それに俺はもう金を払う人じゃないだろう」

「まあいい明日まで時間をやる。明日の11時に再び電話する」
どうせ予告通りの電話なんてしないのにな。と思った。



 翌日、朝のテレビニュースで一人の男性が自宅で変死しているというニュースが流れた。どうやらその人物は魂だけが抜けたように死んでいたらしく、特に悪いところもないらしい。


 とうとうその日は11時にすら電話はかかってこなかった。


 まさかと思って祖母に聞くと、祖母曰く、あの人はうちの座敷童子のようなものを連れて行ったらしく、そのままあの世へと連れて行かれたらしい。




 この祖母の話が本当かどうかは今も結局わかりません。


 ただ、1ついえることは、本当に誘拐されたのは男の方だったのかもしれないということです。

 
しおりを挟む

処理中です...