* 闇の白虎

慈雨

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07.夜の帳が下りる町 2

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「傷が治ったわけじゃないから、触るなよ」

まさに今傷口に触れようとした千里に、一言添える。
魔術では傷は治らない。白虎がしたのはその場凌ぎの止血だけだ。


「それで、その狐は?」

「こいつはヒカリに魔力を与えられたって言ってた。あんまり非力でトドメを刺しづらくなってな」

未だ動かない狐を、千里は近くのテーブルに置いた。
千里のハンカチで目隠しをされ、力なく人形のように転がった狐に、白虎は近付く。


「与える能力…か」

「どういう事か分かるか?」

「うん、大体は把握した」

千里は眉間の皺を深める一方だったが、白虎には心当たりがあるようだ。

そして、白虎は狐の毛に沿うように、そっと背中を撫でた。


「なあ、お前はヒカリの居場所を知っているのか?」

『…そんなの、わっちが知るわけないの』

気絶していたと思っていたが、実は起きていたらしい。狐は千里と白虎の両方に精神感応を送る。


「タヌキ寝入りかよ」

『タヌキなんて失礼なの!』

千里の小さな呟きが、狐に届いてしまったようだ。
狐はぴょこんっと飛び跳ね、地団駄を踏むような素振りを見せた。

こう見ると、やはり能力を持っただけ、普通の狐とは明らかに違う動作を取っている。


「…他に、リュストルについて知っている事はないか?」

白虎はもの柔らかな言い方で尋ねる。
そっと狐の目を隠していたハンカチを外した。


『わっちは何も知らないの。ヒカリって奴の言いなりになってただけなの』

狐と目を合わせたが、催眠術にかかることはなかった。
ヒカリの力だったからなのか、狐に術を掛ける意思がなくなったからなのかは定かではないが。


「白虎には素直じゃねえか」

ボソッと聞こえた千里の愚痴に、白虎はつい内心笑ってしまった。


「…もとの狐に戻りたいか?」

『もちろんなの! 痛い思いをするくらいなら、こんな能力なんていらないの。
…戻れるの?』

「…白虎、出来るのか?」

狐と千里の反応は同じだった。
魔力の譲渡や貸与など、この世の常識では考えられないし、方法も分からない。

だが、白虎はその手段を知っていた。


「…魔力を呑み込め」

白虎が手をかざすと、狐の身体から光が抜けるように出てきて、その手の中に収まった。
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