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08.タチの悪い悪戯
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「おい、瑞稀ー」
「いつまで寝とる気や~?」
突然身体を揺すられて、現実に引き戻される。思い瞼を持ち上げると、予想通りの二人がいた。
長い夢を見ていた気もするし、短時間しか寝ていない気もする。
瑞稀は、まだ微睡んでいる頭を回転させようと、瞬きを数回してみた。
「んん…澪梨は?」
自然と眉間に皺が寄る。隣を見ると、カーテンは開いていて、ベッドは空になっていた。
「さっき出て行ったで。一応、声掛けたんやけど…」
「あの無視っぷりは見ものだったな」
彰は肩を落とし、慎也は悪そうな笑みを零した。
「椎名とここで何か話さなかったのか?」
「ううん、特に」
「じゃあ、ただ寝てただけかよ」
「まあね」
慎也は呆れた様子で言い、瑞稀は何でもないように大きな欠伸を一つした。
「それより、瑞稀の着替えと鞄持ってきたで。待っとるから着替えたら?」
「ああ、もう放課後か。…ごめん、俺ちょっと用事あるから、先帰ってて欲しい。持って来てくれてありがと」
彰から、バッグと制服を受け取る。
まだ、しっとりとした雨音が止まない。
慎也達が帰ってから、着替えを済ませた瑞稀は、辺りをぐるっと見渡した。
睡眠をとったお陰で、頭が冴えてきたようだった。
バッグを持って、湿った空気の中を進む。職員室を通り過ぎ、ある一室を目指した。
「失礼します」
ドアを叩いたのは、学園長室。
直隆に呼び出されたというのが、今回の用事である。
「直隆さん、瑞稀です…って、え」
「久しぶりじゃない。瑞稀」
部屋に入った瞬間、目が点になってしまった。
来客用の椅子には、カップのコーヒーを啜り、ひどく偉そうに座る女性がいた。
「…何で、絢音さんが」
「何でじゃないわよ。 全く連絡も寄越さないなんて、いい度胸じゃないの」
絢音は立ち上がる。カツカツと瑞稀に近寄り、瑞稀は後退りするも、直ぐに壁に追い込まれる。
「えっ…と、挨拶に向かおうと思ってたところで…」
「“思ってた”ぁ? 本当にそう思ってたのかしら?
あなたの事だから、本を読むので忙しいとか、依頼がどうとかでどうせ後回しにしてたんでしょ?」
早口で捲し立てるが全て事実である。
絢音はこの世界で一番瑞稀の性格を知り尽くしているのだ。
「おい、瑞稀ー」
「いつまで寝とる気や~?」
突然身体を揺すられて、現実に引き戻される。思い瞼を持ち上げると、予想通りの二人がいた。
長い夢を見ていた気もするし、短時間しか寝ていない気もする。
瑞稀は、まだ微睡んでいる頭を回転させようと、瞬きを数回してみた。
「んん…澪梨は?」
自然と眉間に皺が寄る。隣を見ると、カーテンは開いていて、ベッドは空になっていた。
「さっき出て行ったで。一応、声掛けたんやけど…」
「あの無視っぷりは見ものだったな」
彰は肩を落とし、慎也は悪そうな笑みを零した。
「椎名とここで何か話さなかったのか?」
「ううん、特に」
「じゃあ、ただ寝てただけかよ」
「まあね」
慎也は呆れた様子で言い、瑞稀は何でもないように大きな欠伸を一つした。
「それより、瑞稀の着替えと鞄持ってきたで。待っとるから着替えたら?」
「ああ、もう放課後か。…ごめん、俺ちょっと用事あるから、先帰ってて欲しい。持って来てくれてありがと」
彰から、バッグと制服を受け取る。
まだ、しっとりとした雨音が止まない。
慎也達が帰ってから、着替えを済ませた瑞稀は、辺りをぐるっと見渡した。
睡眠をとったお陰で、頭が冴えてきたようだった。
バッグを持って、湿った空気の中を進む。職員室を通り過ぎ、ある一室を目指した。
「失礼します」
ドアを叩いたのは、学園長室。
直隆に呼び出されたというのが、今回の用事である。
「直隆さん、瑞稀です…って、え」
「久しぶりじゃない。瑞稀」
部屋に入った瞬間、目が点になってしまった。
来客用の椅子には、カップのコーヒーを啜り、ひどく偉そうに座る女性がいた。
「…何で、絢音さんが」
「何でじゃないわよ。 全く連絡も寄越さないなんて、いい度胸じゃないの」
絢音は立ち上がる。カツカツと瑞稀に近寄り、瑞稀は後退りするも、直ぐに壁に追い込まれる。
「えっ…と、挨拶に向かおうと思ってたところで…」
「“思ってた”ぁ? 本当にそう思ってたのかしら?
あなたの事だから、本を読むので忙しいとか、依頼がどうとかでどうせ後回しにしてたんでしょ?」
早口で捲し立てるが全て事実である。
絢音はこの世界で一番瑞稀の性格を知り尽くしているのだ。
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