異世界開拓日記 〜無双スキルで村づくり〜

異世界転生したそうです…

「あれ……？オフィス……じゃ、ない？」

目の前に広がっていたのは、草がまばらに生える荒野。遠くに見えるのは低い山と深い森、そして頭上には雲ひとつない青空が広がっている。

「……おかしいな。俺、たしか会社で……」

最後の記憶は…終電を逃してオフィスに泊まって、明日の会議の資料を作り続け、、
「まさか……死んだ？」

そうつぶやいた瞬間、どこからともなく声が響いた。

「その通り。君は過労で死んだのだよ、木村正樹。」

驚いて振り返ると、銀髪の老人が目の前に立っていた。この老人、穏やかな笑みを浮かべ、「ザ・神様」て感じで立っている。
うーん、何となく分かったぞ、、
こうなると次は、

「ここは異世界だ。」

やっぱりだ…

「…もうちょっと驚いても良いんだよ？」

漫画とかアニメとかでよく見る展開だからな。
自分に起こったことには驚いているが、、
いや、人って驚きすぎたらこんな反応にもなるよな。

「一つ質問いいですか。なんで俺は異世界に転生したんでしょうか？」

他にも色々気にはなるが、まさか日本で死んだ人間の多くが異世界にきている、なんてことはないだろうからな。

「…それはだね、君があまりにも可哀想だったからな。勤勉な君が若くして死んでしまうのが不憫でな……異世界で少しでも幸せな人生を送って欲しいという…」

…純度100%の憐れみだった。

「まあその、ありがとうございます。それで、俺はどうしたらいいんでしょうか。魔王討伐とかですか？」

「いやいやそんなことはしなくてもいい。君には何もないこの地で、君の理想の社会を築いて欲しいのだよ。」

はぁ……
「…村！？ 俺にそんなこと……」

神様（？）が不意に手を振ると、正樹の頭に不思議な感覚が流れ込んできた。

《創造スキルを授与します》

「これは……？」

「そのスキルを使えば、建物や道具を短時間で作り出せる。だが、資源は自分で集める必要があるぞ。さあ、ここから新しい人生を始めなさい。」

次の瞬間、神様（？）は光とともに消えた。もう少し説明が欲しかった…

「……マジかよ。何もないどころか、ここはただの荒地じゃないか。」

見渡しても本当に何もない。どうせなら貴族とか、チート持ちの勇者とかに転生したかったな…
まあけど仕方ない。何とかするしかないよな…

「あれ？ 人がいる？」

荒野を見渡していると、少し離れた場所に人影がある。駆け寄ると、そこで倒れていたのは薄汚れた獣人の少女だった。金髪に獣耳のついた少女が、疲れ果てた様子で地面に横たわっている。

「おい、大丈夫か？」

声をかけると、少女はうっすらと目を開けた。

「……おなか、すいた……」

彼女の顔には飢えが色濃く刻まれている。どうやら数日間、何も食べていないようだ。

「何か食料を手に入れなきゃ……！」

辺りを見渡すと少し遠いが森が見える。
スキルの使い方もよくわからないが、今はこの子のために食べられるものを探さないといけない。
彼女を背負い森の方歩き出した。



森に入ると、木の実や小さな野菜を見つけたが、流石にこのままは違うよな…？
周囲の木を見て、スキルのことを思い出した。

「たしか、《創造スキル》が使えるんだったな……よし！」

木に手をかざし、心の中で念じた。

《焚き火台を建設します》

すると、彼の目の前に思った通りの焚き火台の設計図のような光が現れ、それが瞬く間に木材が組み上がっていった。

「おお……これが俺のスキルか！」
…ただ木が重なっているだけに見えるな……スキル要らなかったか？
しかし戦闘には使えなさそうだが、十分チートじゃないか？

「これで食事の準備もできるな。」

さっきとった木の実や野菜を焼き、獣人の少女に差し出すと、彼女は目を輝かせながらむさぼり食った。

「ありがとう……」

全部食べ終わったところで彼女はようやく元気を取り戻し、自己紹介を始めた。

「……わたし、エリー。この辺りをさまよってたんだ。でも、もうどこにも行くところがなくて……」

エリーの話はだいたいこんな感じだ。
もともと小さな集落で暮らしていたが、盗賊団の襲撃があり、家族や仲間は殺されてしまった。
彼女は逃げ延びたはいいが行くあてもなくさまよっていた、と。
この世界では友人族は差別されているらしく、人間の集落にはいけないそうだ。

行く当てがないのは俺と一緒か。
「だったらさ、一緒にここで村を作らないか…？」

エリーは目を見開き、驚いたように見つめてくる。
分かるぞ。俺もさっきそんな感じだったからな。

「村……？」

「ああ！俺は、みんなが安心して楽しく暮らせる村を作りたいんだ。手伝ってくれないか？」

エリーは少し考えた後、こくりとうなずいた。

「……うん、私も一緒にやりたい！」

「よし！ そうなれば、まずは小さな家と畑を作って、食料を安定させるところからだな。」



こうして、俺とエリーの村づくりの第一歩が始まった。