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廊下ですれ違っただけなのに
1-3 ヨウキ
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2年2組になった5月。
ヨウキは、いつもつるんでいる明菜とその彼氏の久志とあかりと4人で、放課後のカラオケに来ていた。
「ヨウキまじ歌うますぎるわぁ」
派手なネイルをして、それを見つめながらさっき採点ゲームでヨウキに負けたばかりの明菜が面白くなさそうな顔でつぶやく。
その表情に少しだけドキリとして、決して慌てているのを悟られないようにヨウキは言葉を選ぶ。
「そんなことないっしょ。明菜はさっき今日1番の高得点とったじゃん」
「そうだよー!今の対戦はヨウキの得意なやつだったじゃん!明菜のさっきのyoasobiとかまじ本物みたいだったし」
「ね、まじ歌手になれるよね」
あかりもヨウキをフォローしてくれたので助かった。おかげで明菜の表情が明るくなる。
「そうかな?まじさ、あたし高校受験終わったらオーディション受けようと思ってるんだよね」
「いけるよ、やってみなよ!てか歌手もいいけど、明菜可愛いし事務所入れば演技の勉強とかもしてさ、女優とかそっちもいけそうだと思うよ!」
ヨウキの言葉に満足そうな明菜は、彼氏の久志がデンモクから曲を選んでいるのでその肩に甘えるようにもたれかかり、「次なに歌うー?」と聞いた。
自然とあかりとヨウキは目を合わせあい、明菜には気がつかれないように小さくため息をもらした。
カラオケから解散して、あかりとヨウキは2人でDVDショップへ入る。
このあとは2人でヨウキの母がやっているスナックでお菓子パーティをする予定だった。
「さっきまじ焦ったよね」
「なんつーかもう、カラオケとか毎回しんどいって」
小学校のころから、ヨウキもあかりも明菜には気を遣ってきた。運動もできて、勉強もできる上に、明菜のお姉ちゃんは2つ上でちょっと目立つ怖い先輩でもある。
明菜は顔が可愛いと小学校のころから男子に人気があり、そんな自分に絶対的な自信をもっている節がある。本人にその自覚がなくても、こちらはそれをひしひしと感じるだけの態度をとられてきている。
「つか、2年になってクラス替わるとおもったのに今年も一緒じゃん。まじ最悪」
「まぁ仲良くしていくしかないよ。適当に合わせてれば大丈夫だって」
「てかさ、彼氏の久志の前だと超声ちがくない?あいつ」
「ぷっ。この間さ、私のこと久志と間違えてきて『ねぇひぃくん?』って呼ばれたんだけど!」
「ひぃくんって呼んでんの?きっも!」
適当な会話をしながらDVDを借りて、2人でヨウキの母が営むスナックに到着する。店内を開けると、今日も韓国人の客がやたらと多い。つまみは本格的な韓国料理が食べれるのでわりと韓国人の常連が多いのだ。
「おかえり!待ってね、今テーブル片付けるね」
韓国人のヨウキの母は今日も美人で、ハツラツとしている。
チヂミが到着して、出してもらったコーラを飲みながらスマホをいじる2人は、ふとLINEを見せ合った。
「ねぇ、これ、どうすんの?」
明菜と久志からグループラインに送られて来た写メは、同じクラスメイトの佐藤紀子が公衆トイレの便器の上で下半身だけを脱いだ状態でお尻をだしている状態だった。
ご丁寧に紀子のお尻にはどちらかが書いたであろう「豚のケツ」とまで書かれている。
「まじ犯罪じゃない?うちらは関係ないよね」
「あ、でもうちもこのあいだデメキンから金パクってさ」
「しっ。声でかいよ、ママに聞かれたらやばいから」
「ごめん。でもデメキンの親も悪いんだよ。正直なんつーか親も冴えないっていうか?自分の娘がなにされても気がつかないからまじ馬鹿すぎる」
ヨウキとあかりは、中1のときの授業参観で見た紀子の母親を思い返して笑う。
子供の授業参観といえど、クラスメイトの親の年齢や服装にはつい目がいってしまうのは自分たちのクラスでのスクールカーストに何らかの影響を与える可能性があるからかもしれない。
ヨウキの母親はもちろんスナックを明け方閉めてそのまま派手なスーツに着替え、前髪は後ろにかきあげ自慢の巻き髪を1つに束ねて、とても若くてかっこいいお母さんだねとみんなから言われた。
反対に、紀子の母親はみんなから「この親にしてこの子あり」と影でくすくすと笑われていた。
豚のように大きい鼻に、ファンデーションをしていても隠れることのないニキビ顔、短くまとめているのにクルクルとだらしない天パは完全に母親ゆずり、母親は小さな一重のタレ目をしていたから、あだ名の由来にもなった気色悪いガサガサのまぶたにギョロッとした目は父親似なのだろうと思うほど、本当に冴えない両親から生まれた女なのだと少しだけ哀れに思った。
それにヨウキやあかりの母親より、おそらく10歳くらい年上なのかもしれないと感じる古い形の、まるで就活みたいな真っ黒のスーツを着ていたし、あれでは娘のファッションにも無頓着なんだろうし、デメキンがみんなの輪に入れなくなったのは当人だけではなく、親の責任でもあるのではと、いじめている側ではあるが勝手なことを思った。
「うちのクラスってさ、これからどうなるのかな?」
「さぁ?とりあえず、明菜と3人で楽しくやっていけばすぐ3年になるよ。そしたら今後こそクラス離れたいね」
「そうだね、それまでの辛抱だよね」
ヨウキは、いつもつるんでいる明菜とその彼氏の久志とあかりと4人で、放課後のカラオケに来ていた。
「ヨウキまじ歌うますぎるわぁ」
派手なネイルをして、それを見つめながらさっき採点ゲームでヨウキに負けたばかりの明菜が面白くなさそうな顔でつぶやく。
その表情に少しだけドキリとして、決して慌てているのを悟られないようにヨウキは言葉を選ぶ。
「そんなことないっしょ。明菜はさっき今日1番の高得点とったじゃん」
「そうだよー!今の対戦はヨウキの得意なやつだったじゃん!明菜のさっきのyoasobiとかまじ本物みたいだったし」
「ね、まじ歌手になれるよね」
あかりもヨウキをフォローしてくれたので助かった。おかげで明菜の表情が明るくなる。
「そうかな?まじさ、あたし高校受験終わったらオーディション受けようと思ってるんだよね」
「いけるよ、やってみなよ!てか歌手もいいけど、明菜可愛いし事務所入れば演技の勉強とかもしてさ、女優とかそっちもいけそうだと思うよ!」
ヨウキの言葉に満足そうな明菜は、彼氏の久志がデンモクから曲を選んでいるのでその肩に甘えるようにもたれかかり、「次なに歌うー?」と聞いた。
自然とあかりとヨウキは目を合わせあい、明菜には気がつかれないように小さくため息をもらした。
カラオケから解散して、あかりとヨウキは2人でDVDショップへ入る。
このあとは2人でヨウキの母がやっているスナックでお菓子パーティをする予定だった。
「さっきまじ焦ったよね」
「なんつーかもう、カラオケとか毎回しんどいって」
小学校のころから、ヨウキもあかりも明菜には気を遣ってきた。運動もできて、勉強もできる上に、明菜のお姉ちゃんは2つ上でちょっと目立つ怖い先輩でもある。
明菜は顔が可愛いと小学校のころから男子に人気があり、そんな自分に絶対的な自信をもっている節がある。本人にその自覚がなくても、こちらはそれをひしひしと感じるだけの態度をとられてきている。
「つか、2年になってクラス替わるとおもったのに今年も一緒じゃん。まじ最悪」
「まぁ仲良くしていくしかないよ。適当に合わせてれば大丈夫だって」
「てかさ、彼氏の久志の前だと超声ちがくない?あいつ」
「ぷっ。この間さ、私のこと久志と間違えてきて『ねぇひぃくん?』って呼ばれたんだけど!」
「ひぃくんって呼んでんの?きっも!」
適当な会話をしながらDVDを借りて、2人でヨウキの母が営むスナックに到着する。店内を開けると、今日も韓国人の客がやたらと多い。つまみは本格的な韓国料理が食べれるのでわりと韓国人の常連が多いのだ。
「おかえり!待ってね、今テーブル片付けるね」
韓国人のヨウキの母は今日も美人で、ハツラツとしている。
チヂミが到着して、出してもらったコーラを飲みながらスマホをいじる2人は、ふとLINEを見せ合った。
「ねぇ、これ、どうすんの?」
明菜と久志からグループラインに送られて来た写メは、同じクラスメイトの佐藤紀子が公衆トイレの便器の上で下半身だけを脱いだ状態でお尻をだしている状態だった。
ご丁寧に紀子のお尻にはどちらかが書いたであろう「豚のケツ」とまで書かれている。
「まじ犯罪じゃない?うちらは関係ないよね」
「あ、でもうちもこのあいだデメキンから金パクってさ」
「しっ。声でかいよ、ママに聞かれたらやばいから」
「ごめん。でもデメキンの親も悪いんだよ。正直なんつーか親も冴えないっていうか?自分の娘がなにされても気がつかないからまじ馬鹿すぎる」
ヨウキとあかりは、中1のときの授業参観で見た紀子の母親を思い返して笑う。
子供の授業参観といえど、クラスメイトの親の年齢や服装にはつい目がいってしまうのは自分たちのクラスでのスクールカーストに何らかの影響を与える可能性があるからかもしれない。
ヨウキの母親はもちろんスナックを明け方閉めてそのまま派手なスーツに着替え、前髪は後ろにかきあげ自慢の巻き髪を1つに束ねて、とても若くてかっこいいお母さんだねとみんなから言われた。
反対に、紀子の母親はみんなから「この親にしてこの子あり」と影でくすくすと笑われていた。
豚のように大きい鼻に、ファンデーションをしていても隠れることのないニキビ顔、短くまとめているのにクルクルとだらしない天パは完全に母親ゆずり、母親は小さな一重のタレ目をしていたから、あだ名の由来にもなった気色悪いガサガサのまぶたにギョロッとした目は父親似なのだろうと思うほど、本当に冴えない両親から生まれた女なのだと少しだけ哀れに思った。
それにヨウキやあかりの母親より、おそらく10歳くらい年上なのかもしれないと感じる古い形の、まるで就活みたいな真っ黒のスーツを着ていたし、あれでは娘のファッションにも無頓着なんだろうし、デメキンがみんなの輪に入れなくなったのは当人だけではなく、親の責任でもあるのではと、いじめている側ではあるが勝手なことを思った。
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