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「大丈夫か?おにーちゃん」

 撮影後、メイクルームに戻ろうとしてケイに声をかけられたおれは、「大丈夫だよ」と反射的に答えた。「ならいいけど。なんかあったら言えよ」ケイはおれの髪をくしゃりと乱して(撮影終わったからべつにいいけど)事務所の若い子とスタジオを出て行った。あれから、二週間。鏡の前に座って【終わったよ】とごうにメッセージを送ると、すぐさま【おつかれさま。もう地下駐に着いてるよ】と返事が来た。

 ごうは、ケイと逃げたおれをゆるしてくれた。と、思う。かわりに、ほんの少し束縛が強くなった。仕事が重ならないときは、こんなふうにできる限り迎えにきてくれたり、特にケイと仕事あるときはどこで、どういう撮影をして、何時に終わるのか、とかをいっぱい訊いてくる。
 それはおれのやったことを考えたら当然だと思う。それに、ごうに縛られるのはイヤじゃない。間髪入れずに大丈夫、と答えたのはちょっと嘘くさかったかもしれないけど、ごうに想われてる限り、やっぱりおれは大丈夫なんだと思う。

「おかえり」
 助手席のドアを開けると、ごうが優しく微笑む。「ただいま」うれしくて、おれは尻尾を振るみたいにして助手席に身を滑らせる。

「今日は?どんな撮影だったの?」
「えーとねぇ、こないだショーで着たルックあったでしょ?あのシリーズのね……」

 穏やかに相槌を打ちながら、ごうが車を発進させる。手慣れたハンドルさばきと夜の街の光に照らされたその彫刻みたいな横顔がかっこよくて、おれは飽きずにほれぼれしてしまう。


 

 一週間。正確には六日プラス半日。イオと連絡がとれない間、生きた心地がしなかった。きっとケイさんと一緒なんだろう、つまりイオが俺とのことを思い詰めてたとえば自分を傷つけたり、どこか遠くに行って永遠に帰ってこなかったり。そういう可能性はないとわかっていても、あの独特の雰囲気と色気が共存した男とイオがどこかで一晩中一緒にいると思うだけで気が狂いそうだった。
 イオは、ケイさんと関係を持とうとしたことを隠さなかった。「でもできなかった」と言った。それが嘘じゃないことはイオの目と性格を考えたらすぐに分かった。とはいえ例え未遂でも、イオがやったことは普通のカップルだったら浮気とか裏切りといってもいい行いなんだろうけど、俺たちはどうしたって特殊な関係だし(俺はそう思ってないけど、イオがそう感じているのは伝わる)、華奢な見た目に反して芯の強いイオを追い詰めたのは完全に俺の至らなさだし、イオが自分のことよりも俺のことを考えて俺から離れたというのは痛いくらいに想像ができたから、俺はそのことを呑み込もうと思っていた。考えない、忘れる。でもそれが不可能なことは、イオを帰した日の夜すぐに分かった。目を瞑ると止める間もなく湧き出るイメージ。イオが俺じゃない他の人の腕の中で喘ぎ、鳴き、身を震わせる。そのイメージはどんどんリアルになって、俺に焦燥感を植え付ける。閉じ込めなきゃ。誰にも会わせず、どこにも行かないように。頭の中で乾いた自分の声が囁く。
 でも、あの日から間を置かずにショーに出演したイオを見て思った。この子を閉じ込めたい、自分だけのものにしたい、なんてエゴはイオにとって枷でしかない。悔しいけど、ケイさんの作った服に全身包まれたイオの背中に羽根が見えた。とてもきれいな、透き通った羽根だった。泣きそうになった。実際ちょっと泣いた。ドヤ顔の黒づくめの男と目が合って、慌てて顔を背けたけど。

 落としどころを見つけよう、と思う。これからもイオとコイビトでいたい。でも、イオの仕事や生き方も尊重したい。ケイさんのブランドの服は、イオによく似合っている。多分あの人イオに着せるために作ってるみたいなところがあるから当然だけど。公私混同甚だしいな、ショーで配られたパンフレットを舌打ちしながら見つめて、ほろよいを飲んだ。桃の香りは、イオの体臭にちょっと似ている。





「今度のオフ、家で一日中イオとエッチしたいんだけど」

 整い過ぎて迫力すら感じる険しい顔で、ごうが照れも躊躇いもなく言い切る。ごうの部屋でごうが淹れてくれたアイスティーが気管に入って一瞬死にかけながら、「大丈夫?」と背中を撫でてくれるごうに涙目でその意図を問う。

「この間、あんまりできなかったし」
「結構したと思うけど……や、別にいいけどさ。……なんかイラついてる?」

 不安になって訊くと、「イラついてるというか……」ごうが眉を寄せておれを抱き寄せた。

「夜寝るとき、ケイさんとイオが寝てるとこどうしても思い浮かべちゃう」
「……それ、は」
 何も言い訳できない。実際寝かけたワケだし。それで今も仕事してる。そりゃあイヤだろうと思う。おれなら発狂するかもしんない。「ごめんなさい……」卑怯なくらい小さな弱々しい声で言ってしまって、唇を噛む。ごうは「違う、責めたい訳じゃなくて……」とおれの背を優しく撫でた。

「中途半端に見て見ぬフリするからダメなんだなって思って」
「ん……?どういうこと?」
「ケイさんとしたこと、全部訊いて上書きしたい」
「……えっと」
「それでもう、イオも俺も枯れてへなへなになって立てないくらい一日中エッチして」
「それは体力勝負だね……」
「それですっきり、全部忘れる」
「できる……?」
「やるの」
 力強く言ってごうが抱き締める腕の力を強くする。こういうところ、スポーツマンだよなぁ……と思う。頭で考えるより行動。メンタルの問題もフィジカルによって解決。おれにはない発想だ。

「どうしてもモヤモヤして、一緒に暮らす話もなあなあにしちゃってごめんね。でも俺がこういう状態だと多分一緒に暮らしてもあんま良くないと思うから」
「うん……それはおれも後から性急だったなって思ったから」
 耳元に熱い息がかかる。ビク、と震える背をごうの手が、さっきと違う感触で撫でた。

「イオの身体も心もぜんぶ、俺のだって思わせて?その日だけでいいから」
「ごうのだよ……今だって」

 言い終わる前に、ごうの柔らかい唇が触れた。すぐに唇を開いて向かい入れようとしたけど、それは触れるだけで離れていった。

「明日も撮影でしょ?次のオフまで我慢する……!いこ、家まで送るよ」
「えー……泊まっちゃだめ……?」
「ぐ……上目遣いやめて。裾ひっぱらない!ほら行くよ」

 急に鬼コーチみたいなノリになったごうに手を引かれて、おれは家に送り届けられたのだった。




「それで、いつそういうことになったの?」
「さいごの……夜……」
「五日目の夜ってこと?それまでは何もされなかったの?」
「うん……ねぇごう」
「なに?」
 ふたり一緒のオフの日。昨日は遅かったら大人しく家に帰り、身体を清めて午前中にごうの家に行くと、待っていたのはベッドの上の取り調べだった。当然ながら窓の外は明るくて、ごうんちの遮光じゃないカーテンを引いても部屋は明るい。家に着くなり「準備は?」「……してきた」「そう、俺がしたかったのに」と低い声で呟きながらまぁいいや、はいバンザイって素っ裸にされて、ベッドに連れて来られた。するなら早くしてほしいのに、裸のまま座って取り調べを受けている。ごうとするのって大体夜だし、勢いとかもあるから何とかなってるけど、こうやって明るい部屋のベッドに座らされて据わった目で観察されるみたいに見られると本当に居た堪れない。

「えっと……しないの?」
「するよ。ケイさんのしたこと全部」
「さいごまではしてないよ……」
「当然最後まで、ケイさんのしてないこともする」
「当然なんだ」
「イヤ?」
「イヤじゃない」
「本当にイヤだったら言って。やめるように努力するから」

 低い声で言って、ごうがおれの顔に影を作る。額に額をくっつけて。本当なら甘い空気なのに、ごうの目は試合の勝負所のときのそれにちょっと似てて、皮膚の表面がチリチリするような緊張感がある。

「キスした?ケイさんと」
「……」
「全部言わないと終わんないよ?」
「……し、た」
「……どんな?」
「どんなって……」
「触れるだけ?舌は?」
「……はいった、んぅ……っ」
 
 歯列を割って、ごうの舌がぐにゅん、と這入ってくる。身震いして思わず引いた舌を絡め取られて、はふ、と息が洩れる。思わず分厚い肩に縋る。舌を絡めるたびに下半身に血液が集まって、触られてもない乳首がツンと硬くなっていくのを感じる。思わず内腿を擦り合わせると、唇を離して「そんな反応したんだ?」とごうが呟いた。

「ちが……っ、ん……ぅ!」

 キスをしながら押し倒されて、身体に圧がかかる。ごうの重みだ、と思うと不埒に腰が揺れた。ごうの大きな手が頬から首筋に触れて、肩が跳ねる。「イオは口の中まで敏感だからキスだけでこんな物欲しそうな顔しちゃうもんね……ケイさんもびっくりしたんじゃない?」冷たい声で言われて、視界がぼやける。だけどそれはごうの言葉に傷つくというよりも、いつもと全然違う、捕食者の顔をするごうに痛いくらいに興奮しているからだと、たぶんバレている。

「ごぉ……だからだもん……」
「そうなの?次は?どこから触られた?」
「……っ、」
「庵」
 上書きしないと先に進めないよ、とごうの目が言っている。正直あの夜のことはいっぱいいっぱいであんまり覚えてなくて、ただケイのカサついた手の感触とか、薄い舌の味とか、触れた髪の硬さとか、そういう断片だけが身体に残って――。

「ちゃんと言いな、どこ触られたの?」
「むね……さわられた……きがする」
「ココ?」
「いっぁ……!」

 触られる前からツンと勃っていた乳首を、ごうがぎゅうう、と抓る。さっきのキスも、押し倒し方も。ごうの動作がいつもより荒くて、少しの恐怖と大きな期待に肌が粟立つ。

「舐められた?」
「されて、ない」

 触られて、おれが反応するからここでイく?ってケイはちょっとびっくりしてた。めちゃくちゃ恥ずかしくて、混乱して、胸だけでイくわけないだろ、ってそのときは思ったけど。「……ふうん」ごうがあまり感情の読めない声で言って、カリ、と歯を立てた。

「あぁっ!ん……っご……、それ、されてな……っ」
「されてないこともするよって言ったじゃん」
「ひゃっあっ、んぁっ……だめ……っ」
「痕は残さないから、安心して」

 咥えたまま喋るから、声が振動して歯が当たるのも強烈な性感に繋がる。吸って、嬲って、もう片方は指の腹や短い爪で押し潰されて。別々の刺激が交互に、同時にもたらされて、息を吐く暇もない。

「今日……やけに反応いいね、こっちもトロトロ……もしかしイきそう?」
「んぁっ、むり……っ、やっ、あぁっ……」
「ケイさんに触られたときもこんな声出したの?」

 舌での愛撫を続けながら口の中にごうの長い指が入ってきて、思わずそれに舌を絡めるとごうが眉を寄せた。「……えっち」二本の指で舌を挟んで、弄るようにされて、甘いような唾液がどんどん溜まって。容赦なく奥まで這入り込まれて粘膜を弄ばれて苦しい。なのにじきにその苦しさもごうのを挿れられてるような錯覚に変わって、咥内から指を抜かれたとき、さみしい、って思ってしまった。

「物欲しそうな顔……そんな顔しなくても後でそこにも挿れてあげるから。今はこっち」

 濡れた手で、ずっと舐めたり噛んだりしてて紅く腫れた胸の飾りをぎゅうう、と痛いくらいに捻り上げる。下腹部に滞留した熱が一気に出口に向かってせり上がってくるのがわかって、おれはのたうちながら悲鳴を上げた。まさか、こんな、ところで。

「やっぁ……!!んぁああっ……ッッ!!」
「あ……すご……」

 たぶん全部じゃない。でもぴゅくっ、ぴゅくっ、と精液が陰毛を濡らす感触に、腰が震える。出る最中も両方の手で乳首を強めに弾かれて、そのたびにせり上がってくる欲望に涙が零れた。

「いや……っぁ……あぅ……」
「乳首でイくなんて……たった一晩でケイさんに仕込まれたワケじゃないよね?」
 光が消えて、細まった目に見下ろされて、カッと頭に血が昇る。
「ばか……っ!!んなわけあるかよ……っ、ごぉのせいだろ……っごうが、いつも何回も何回もしつこく……っ」
 その顔に思い切り枕を投げると、「だよね、俺のせいだ」って枕をキャッチして現れた顔は憎々しいくらいの笑顔だった。



 正直、最初は殺してやりたいくらいの憎しみしかなかったけど、今はほんのちょっと敬意を感じている。誰に。あの黒い男、ケイさんに。だってこんな子を前に、こんなことして最後までは奪わなかった、その精神力は相当なもんじゃないだろうか。

 乳首で中途半端にイってしまったイオはひくひくしゃくりあげながら、それでも次は?と俺が訊くと「ゆ、びで……ナカ……と、まえ……」とバカ正直に答えた。もちろんされたことは全部上書きしたいし、そのために呼んだわけだけど、ここまで正直に答えるなんて。この子をあんな欲望のひしめく業界で働かせて大丈夫なんだろうか。今更ながら別の不安が込み上げて、低い声が出る。
「いきなり?」「ココでしてんだろ、ってゆわれて……」前言撤回。やっぱりぶん殴りたい。
「ごう……顔こわい」
「怖くもなるでしょ。こう?」

 先端が濡れて、まだ芯の残った性器に触れると、イったばかりで刺激が強いのかイオの腰が上に逃げる。それを手で押さえて、暴れる脚を肘で開かせて手早くローションを垂らした手で奥に触れる。自分でも引くくらいの無駄のない動きにイオの目が怯えたように見開くけど、こっちも必死なんだよね。さっきからイオの痴態に下半身は痛いくらいに張り詰めていて、正直もうそのナカに入りたい。でも他の男にやられたこと全部、俺の記憶で塗り潰したいから。荒い息を吐いて蕾を開くように指を這わせてはたと気付く。ラブホテルに泊まったりしなければ、こういうグッズなんてないはずだ。見たところ傷はなさそうだけど……。

「ケガしなかった?」
「んあっ、……へ?」
「ローション、ホテルにはなかったでしょ?」

 まさか相手が持ってきたのか。こめかみに血管が浮くのを感じながらくぷ、と指を含ませて訊くと、イオは信じられない言葉を吐いた。

「あ……や……持ってったから」
「……何?」
「ローション……家から」
「へえ……持ってったの……イオが……」

 沈黙。息を吐いて、吸う。落ち着け、六秒数えろ、と念じるけど、そんなの土台無理だった。
 硬さを増し始めたイオ自身をぎゅ、と握って、一気に指を突き挿れる。

「やあぁ……っ!!!?」

 悲鳴と、濡れそぼった襞がぎゅうぎゅうと纏わりつく感触。この感触をあの人も味わったのか。あー指切り落としたい……危険思考を浮かべながら、ずりゅ、ずちゅ、とキツく絡み付いてくる肉壁を拡げるように、無言で、一心に、指を動かす。同時に鈴口に指の腹をめり込ませるみたいに強く刺激する。あまりの刺激にイオの身体が上に逃げようとシーツをのたうつ。それを片手で引きずり降ろすように引き寄せると、イオのナカは俺の指の付け根まで一気に咥え込んだ。

「ーーッ!!やぁっ、あっ、あぁっ、ひっぁ……!ごぉ……っやぁっ」
 イヤだったら言って、なんて言ったけど、イヤ、をちゃんと言わせてあげる余裕もない。指を三本に増やすと締め付けられすぎて痛いくらいだ。手前のしこりも容赦なく擦り上げながら「これで……イくまでされた?」と訊くと、とろとろに溶けたイオの目が明らかに泳いだ。

「そう……イかされたんだ。あの人の指で」

 もはや名前を呼ぶのも忌々しい。「一回だけ?」と訊くとあられもない声を上げながらもコクコクと頷く。ホントに正直だなぁ。憎いほどかわいくて、かわいいけど憎い。撮影時、衣装を直すようにしてイオに触れる男の手が思い出された。男らしい武骨な手だったな、指輪のたくさんついた指は長かった。絵も描くみたいだけど、あの指でイオの身体を弄ったのか――。

「じゃあちゃんと、俺の指でもイこうね。あ、イオは連続でイけるんだから、何回イってもいいんだよ?」
 そう言って唇を上げると、イオの顔が青ざめた。怯えた顔もかわいい。男が、イオが女の子みたいに何回もイけるなんて、あの人は知らないだろうな、と思うとほんの少し、お腹の中のどす黒いモノが晴れるのを感じた。


「いやああッッ……!くッ、っひ……、やっ、ぃぁっ~~ッ!!」
「あ、もう出てない……そりゃそうか、四回目だもんね」

 そう言ってトロトロのナカを掻き混ぜると、イオの腰がびくびくと跳ねた。白くて柔らかな、薄べったいお腹も茶色いふわふわの、赤ちゃんの髪の毛みたいな少量の毛も透明の粘液でベタベタに濡れていて、喘ぎすぎて閉じかたが分からなくなったみたいな口の中にちらちらとうすピンクの舌が見えてたまらない。思わず身を屈めてその舌を吸うと、それだけでびしゃ、と水音がして俺の服を濡らした。

「指、ふやけちゃった。ホラ」
「ひ……ぁ……ぅっ……ぁ」
「ココもトロトロだね……」

 指で唇を開かせて、舌を弄るとイオのキレイな瞳がとろんと溶けて。「ケイさんの……咥えたりはしてないよね?」ぎゅ、と閉じた目から甘そうな涙が落ちて、イオがこくっと頷く。

「おれの……イオの口に挿れていい?」

 イオは返事の代わりに、小さな口を雛みたいに開く。それだけで充たされたような気持ちになって、先走りでベタベタになったモノを取り出し、「起き上がれる?」イオの両手を引く。イオはどうにかベッドに座って、でも腰に力が入らないのかすぐにへにゃんと倒れ込んでしまうので、ベッドに座った俺のを前かがみになって一気に奥まで咥え込む形になった。

「……ッ!や、ば……っ」
「ん……んぅ……っ」
「苦しくない?」
 やさしく髪を漉くと、舌で一生懸命俺のを扱きながらイオが俺を見上げる。泣きながら何度もイったせいか目尻と鼻は赤くなっていて、それが子どもの頃に泣き虫だったイオを連想させて。かわいそうなのにイオの顎が外れるんじゃって不安になるくらい大きくしてしまって、苦しくない?なんて心配するようなことを言っておきながら、キレイな顔が苦しげに歪むのにもまたそそられて。狭くて熱い、誰にも侵されたことのないイオの咥内を自分の欲望が蹂躙しているという事実だけで、腰が浮きそうに気持ちが良い。

「ダメだ……イ、きそ……っ」
「んぅっ、んぉ……っんぐ……ッ」

 イって。おれの口で。
 言葉を封じられたイオの、とろんと赤いのにどこか透き通った目がそう言う。小さな頭を抱えるようにして腰を振って、濡れた音を立てて本能のままに何度も粘膜を擦り上げてしまう。まるでイオの口を使ってセックスしてるみたいに。
(ココは、俺の味しか知らない――。)

 キレイなイオに不埒なことを強いている罪悪感と陶酔が綯い交ぜになって、弾丸のようにせり上がってくる欲望を堪えることができない。

「……ッ!あ、でる……っ!!」
「~~ッ!!ん゛っ、ぅ゛うーー……ッ!!」

 びゅる、と欲望が噴き出る音がイオの咥内に消える。出し切るために何度かピストンすると、塞がれた唇の僅かな隙間からこぽ、白濁が零れた。イオが窒息する、と思って慌てて引き抜くと、まだ尿道に残っていた精液がイオの小さな顔を汚した。長い睫毛、小さな唇、柔らかい、白い肌。かわいくて、大切で、誰よりも護りたい弟の顔が自分のドロドロの欲望で汚されている光景は、本当に背徳的で。

 咳き込みながら、イオが背中を震わせて俺のを健気に嚥下する。吞まなくていいよ、ホラ出して。いつもなら考える前に出てくる言葉が一向に声にならず、悶えるイオを痛いくらいに見つめてしまう。イオはどうにか全部を吞み込んで、俺に見せるみたいに小さな口を開けた。欲望の白に汚された桃色の舌が、ちろりと見えて。

「のめたよ……?ごぉ……」

(あ、ダメだ……)

 その瞬間、たぶん俺はめちゃくちゃ怖い顔をしていたと思う。肩を押したらいとも簡単にベッドに倒れたイオを、僅かに残った理性でひっくり返して腰を上げさせた。イオは特に行為の最初はこの格好を嫌がる。俺の身体に触れないし、たぶん顔を見てしたいんだって分かってるけど、きっと飢え切った獣みたいになってる顔を自分を見せたくなかった。傍らに一応用意しておいたゴムを着ける余裕もなく、かろうじてローションを竿とイオのお尻に垂らして、粘液の感触に誘うようにヒクつく蕾に昂りを充てがう。

「挿れるよ」

 返事を待たずに、細い腰を引き寄せて一気に貫く。指で四回もイかされた後で、精液なんて出るワケもなかった。でも、イオが挿入だけで達したことは烈しく痙攣しながら奥に引き込むような肉の動きで分かった。

「う゛ぁ…っ、くぁ゛…っ、やぁっ……ッッ!!」
「ごめんね、今挿れられただけでイっちゃったもんね?動かないでほしい、よね……!」

 分かっていて、俺はぞろりと引き抜いた自身を埋め込む。どちゅん、と奥の留まりまで。あっさりと許容量を超えたところで咥え込んで、ずり下がりそうになる腰を腕で支えて、休みなくガツガツと打ち付ける。もう、上書きとか、ケイさんがどうとか、そういうのは頭から飛んでいた。ただ、目の前のこの上なく美味しそうな獲物の柔い肉を、骨を、全部残さず喰らい尽くしたい。獣のような衝動で、華奢な骨が悲鳴を上げるのを知りながら腰を振ってしまう。

「あ゛……っ、いく……っ!!」
「~~ッ!っ、~~ーーっ!!」

 シーツに顔を押し付けたイオは、声を上げることもできない。ドクドクと奥の留まりの弁に擦り付けるように注いで、精液の滑りで弛んだそこに亀頭を含ませる。ざわざわ、とまるで繊毛が絡み付くみたいに粘膜が痙攣して、あっという間に血が宿る。

「あ゛……っ、ま゛、って……まってぇ……いま、いって……んあぁぁっ!!」
「……入るよ」

 イオが絶頂から降りられていないことを知りながら、ずり下がって行く身体を潰すようにして留まりを抉じ開ける。ぐぽ、という音とともに、シーツと俺に挟まれたイオの性器から多量の水が噴き出る音がした。後で水分を摂らせないとな、と頭の端にほんの僅かに残った理性で思う。だって、まだ一日の半分も終わっていないから。



「あ゛……ひぅっ……うぁっ、あ゛……っ」
「ホラ、飲める?後で桃も切ってあげるから食べようね?」

 膝の上に乗せたイオを、下から緩く突き上げながらペットボトルに口をつけさせる。閉じられていない口からほとんど零れていくのを見て、自分が含んで口移しで飲ませる。

「んっんぅ……」
「ん……っそ、上手……」

 コクコクと喉を鳴らすのに満足して頭を撫でると、イオがくたりとしなだれかかって来る。その猫みたいな仕草がかわいくて、腰を掴んで思わず前後に揺さぶると、繋がったところは濡れた音を立てて白濁を溢しながらまた甘く俺を締め上げた。

「またイってる……?大丈夫?」
「あぅ……あっ……ぅあ……っ」

 イオの目は蕩け切って、あんまり焦点が合わない。薄いお腹も大量に出した精液で心なしか少し膨らんでる気がして、そろそろ掻き出して、ちょっと休ませてあげないとな、と思い脇に手を入れてイオの身体を持ち上げ、引き抜こうとするとほとんど意識も朦朧としているはずのイオはいやいやをするようにして俺に抱き付いてきた。

「や、らぁ……ごぉ……」
「大丈夫、離れないから」
「ごぉ……がいい……や……っなの……いかな、で……」

 子どもみたいになってしまったイオに、きゅう、と甘く胸が疼く。抱き締めて、「じゃあもう一回イオのナカでイっていい?」と囁くと、イオは安心したように腕の力を抜いた。その間も狭くてトロトロの孔はひっきりなしに痙攣して、たぶんもうずっとイきっぱなしなんだろうな、と思う。喘ぎ過ぎてカサついてしまったイオの唇にキスをして、そっとシーツに倒す。桃を切って食べさせたら、リップバームをたっぷり塗ってあげよう――。

 思いながら俺は、そっとイオを押し倒し白い脚を抱えて痙攣しっぱなしのナカに深く、ゴリ、としこりを押し潰すようにして自身を突き挿れた。イオの唇がはく、と魚みたいに戦慄いて、さっき摂ったばかりの水分がまたイオの中から噴き出て俺の身体を濡らす。ペットボトルに口をつけて水を含み、震える身体を折り畳んでその水を少しずつ与える。ちろりと俺の舌をなぞるイオの奥で、何度出してもひっきりなしに湧いてくる怖いくらいの欲望がまた烈しく爆ぜた。




 いつのまにかトんじゃってたんだと思う。は、っと目を覚ますと、ごうがベッドに座っておれを優しい目で見下ろし頭を撫でてくれていた。

「いま……何時?」
 うわ声カッサカサだ。
「お昼前かな。もうすぐ十二時」

 まだそんなに時間が経ってないことにホッとして、ホッとしたら少し空腹を感じた。「桃あるけど、食べる?」「たべる……」あんまりしっかりした食事はしない方がいいと思うし喉通る気もしないから、果物はありがたい。
「水も飲もうか。身体起こせる?」そう言って看病みたいに身体起こされて、ごうが持ってるペットボトルに口をつけて一口飲んだらそれは唐突にやってきた。

「ちょっと……トイレ……」
「……あ、はいはい」

 ごうが当然のようにおれを抱き上げる。焦って「え、なに、大丈夫ひとりでいける……っ」と騒ぐと「足腰立たないでしょ。暴れると危ないよ?」と涼しい顔で言われた。
「歩けるって……お願い、ちょっと下ろしてみて」訴えるとしぶしぶって感じで下ろされて、足をつけた瞬間へなへなと力が抜けてフローリングにぺたりとお尻がつく。

「ほら」
「え……ぁ……」

 また抱えられて数歩でトイレにつくと、当たり前みたいにごうも入ってきて。便座の前で筋肉質な腕で身体を支えた状態で立たされ、後ろから「出せる?」と訊かれた。とうぜんおれは首が取れるかと思うくらい横に振る。

「むり……っ!!それだけはむり!!」
「えー昔は夜中とかついてったよ?こわいって泣くから中まで」
「そっそれは今とはぜんぜん!違うだろ!」
「でもイオ立てないじゃん、ひとりで」
「座らせて!そんで外出て!じゃないと帰る!!」

 カスカスの声で必死で訴えて便座に座らせてもらい、ドアが閉まって何とかひとりになってほお、と息を吐く。ごうの目、何がダメなの?って感じで割とマジでこわかった……。
 おれ今日無事で済むのかな……我慢の限界寸前だった尿意の開放感だけじゃない何かに身震いしながら、用を足し終わってもしばらく呆然としていた。



 そろそろいいかな。剥き終えた桃にラップして一旦冷蔵庫に入れて、トイレのドアをノックする。「イオ?大丈夫?」「……ごぉ」弱々しい声が聞こえて、「開けるよ?」ってドアを開けた。
 イオは裸で便座に座ったまま、泣きそうな顔をしている。

「どうしたの?どっか痛い?」
「ごぉ、のが……」
「え?俺?」
「せーえきが……いっぱい、出てきて……」

 止まらないの。あとおれ立てない。泣きそうな顔に、一瞬落ち着いたはずの欲望がまたムクムクと育っていく。そうださっき掻き出してあげないと、って思ってたんだった。ズンズン近づいて「お腹痛くない?」「そ、れは大丈夫……」怯えた顔で俺を見上げたイオをまた抱えた。

「お風呂行こ。イオ入るかなと思って朝から溜めてあるから」
「え、ちょ、離してごぉ……」
 お姫様抱っこしたイオのお尻から、とろ、と白いものが溢れる。細いとはいえ普通の人よりは身長のあるイオを抱えてズンズン歩ける自分のフィジカルに感謝しながら、俺は浴室に向かった。

 恥ずかしそうに収縮する粘膜から流れ出た白濁がとろ、とろ、とひっきりなしに指を伝う。自分で出したものなのに、イオの中から出てくるとどうしてこんなにえっちに見えるんだろう。
「ごぉ……やだっ、見なぃで……っ」
「ごめん、それは無理」

 浴槽に手を突かせて、お尻を突き出すような格好にして掻き出す。奥に挿れて、指を拡げるようにして掻き、引き抜く。また奥に挿れる。機械的な反復にもイオはビクビクと腰を震わせて、「んや……っぁあ……っ」甘い声を上げる。またそれがお風呂場では艶かしさたっぷりに反響して、さっきから無心を心掛けてたけど俺のはまたピッタリと臍に付くくらい勃ち上がっていた。

「キリがないね……」
 呟いた声に、イオがビクッと後ろを振り返る。「ごぉ……?」柔らかいお尻に直に当たる熱に、気付かないはずはない。

「これで……奥の掻き出そうか」くぷ、と鬼頭を含ませると、「や……っ、まだおれ……」からだ、へんなの、って思わずって感じに腰をくねらせながら切れ切れに訴えるイオがかわいくて、めちゃくちゃえっちで。こんなふうに言われて止まれる男っているのかな、こんな弱々しい、煽るような抵抗で本気でやめてもらえると思ってるんだろうか、って強い危機感と身勝手な苛立ちを覚える。

「ねぇ、ケイさんと泊まった部屋でもお風呂入った?」
 一つの部屋に泊まったことは、帰ってきた日に申し訳なさそうに打ち明けられて知っていた。昔から、イオは俺に嘘はつけない。ふだんは俺なんかよりずっと頭の回転が早いのに、俺がホントに?ってちょっと真顔で訊くとすぐに目が泳いで泣きそうな顔で白状するんだ。

「へ?……ぁ?」
「そりゃ入ったよね……同じ部屋で……裸になって……ねぇ襲われてもおかしくなかったと思わない?こんなふうに」
 含ませた先端で、浅く円を描くように掻き混ぜる。引き抜こうとすると追いかけるみたいにテラテラと濡れ光った粘膜が纏わりつくのが見えて、あまりの卑猥さに舌を打つ。

「んぁっ!ご、や、待って……」
「いや襲われても良かったのか。イオはケイさんとする気でローションまで持ってってたんだもんね」
 しつこいなと思うけど自分で言いながら腹が立って、「うぁあああッ……!!」ぴったり密着するくらいに一気に自身を埋め込む。イオの悲鳴みたいな喘ぎが浴室の壁に反響して、その声だけでもイキそうで歯を食いしばって耐えた。

「触られたとこ、キレイにしなくちゃ、ね」
 軽く揺さぶりながらラックに手を伸ばして、手に泡のボディソープをたっぷりつける。パンパンと濡れた音を立てて少しずつピストンを早くしながら、イオの胸に泡をつけていく。

「ひ……っやぁ……そこだめぇ……っ」
「なんで?キレイにしてるだけだよ?あ、またここでイっちゃう?えっちだなぁ」
 ふわふわの泡越しにも、軽く胸全体を撫で回しただけでも、イオの乳首がまるで触って、って誘うみたいにぷっくり腫れているのが分かる。爪でそれを軽く引っ掻くと、驚くほどナカが締まる。ひとりで立ってられないイオは、縋るように浴槽に捕まってお尻を突き出して鳴く。
「ンァっ、イ……くっぁっ、ちが……っ」
「違わないでしょ、イオの淫乱」
 わざと冷たい声で言って、両方の乳首をぎゅう、と強く抓ると、イオは声にならない声を上げて俺を咥えたままイった。ナカがふるふると埋め込んだモノを扱き上げるみたいに収縮して、肉の塊を奥へ奥へと誘う。

「また乳首でイった?それともナカで?」
「やっ、らぁ……っひゃんっ、わかんな…っあ゛あぁっ!!」
「わかんない?こんなうねって吸い付いて……じゃあ確かめてみようね……!」

 尻たぶを割るように掴んでガツンと奥を突くと、また息が詰まるくらいにナカが締まる。その微妙な轟き具合の違いで、さっきは胸で、今度はナカでイったんだと分かった。健気に俺を咥え込んで捲れ上がった襞をくぱ、と指で拡げると、拡げたところから白濁が流れてきて竿を伝った。そうだ、掻き出してあげるんだった、と本来の目的を思い出しながら、媚びるようなナカの動きに引き抜くことが出来ずに、「イ……っく!!」また大量に欲を吐き出してしまった。仰け反った背中の向こう、天を仰いだイオの喉がひゅっ、と鳴って、少し遅れて湯船にじょぼ、じょぼと水音が響く。



「う……っくぁっ、ぁぅ……っ」
 チャプ、チャプ、とお湯を揺らしながら、後ろから抱き締めるようにして緩慢な動きでグズグスのナカを掻き混ぜる。お湯はところどころ白く濁っていて、たぶん、さっき出したのもだいぶイオの中から掻き出せたはずだ。

 生ぬるいお湯の温度も、イオの肌も中も、全部が心地よくて俺の頭も霞んでくる。試合や練習の疲れを取るために選んだ一人暮らしにしてはゆったりとしたバスタブも、それなりに身長のある二人で入るにはちょっと狭くて、一緒に暮らすことになったらもっとお風呂の広い家に引っ越したいな、と思う。そしたらこうやって昔みたいにお風呂に一緒に入れるし。昔はイオとこんなことするなんて思ってもなかったけど……とぼんやり考えながら紅く艶やかに染まった頸に唇を落とすと、ナカはぎゅううう、と俺にしがみつきながら、上半身がくたりと力をなくして前傾した。「イオ……っ?」慌てて身体を支え顔を覗き込む。イオは小さく唇を開いて、目を閉じている。
 意識を失って精巧な人形のような寝顔を見せるイオの、俺の欲望を受け入れ続けたせいで抱き抱えるだけで軽くイってしまう清らかで淫らな身体をそっとタオルで包んだ。
 



 つぎに目を覚ましたら、身体はキレイになっていて、おなかの中も心なしかスッキリしていた。
「気がついた?ごめんね無茶させて……お水さっきも飲ませたんだけど、もっかいいる?」
「ん……大丈夫…それ、桃?」
「食べられる?」
 こくんと頷くと、ごうが指で挟んだそれを口に入れてくれる。甘くて瑞々しくて柔らかい果実が、喉を潤しながら身体に入っていく。いくらでも食べられそうで、「もっと……」とごうの首に腕を回して口を開けると、微笑んだごうがまた口の中に入れてくれた。
 桃を舌と口蓋で潰しながら、れろ、とごうの指を舐める。桃をこくりと呑み込んで、そのまま残った指をちゅう、と吸う。吸って、舐めて、扱いて。大好きなごうの顔を見上げて、ばかないぬみないにだらだらとよだれを溢しながら、一心に口淫を続けると、「んんっ……!ふっ、ぅンっ…」口からだらしない喘ぎと熱い息が漏れた。

「……そんなことしたらまた襲われちゃうよ?」
 目を細めて俺を見下ろすごうが、息おおめの、ぞわぞわ脊椎を撫でるような声で言う。のぞむところだ。言う代わりにまた入れてもらった桃を、おれの舌の上からごうの舌に移して潰す。濃厚な果汁が顎から首筋に伝う。

「ん……っ、はぁ……っ」

 どっちのかわからない吐息で頭の中がぼおっとして、おれはごうの膝の上に跨る。内腿に力が入らなくて、腰がカクンと落ちた。
 ローションを足さなくても惚けきったそこはくぷぷ、とごうのを呑み込んでいく。

「い……っ、んぁあああ……ッ!!」

 懲りないね、ごうが耳元で苦笑した。それはたぶんおれたちどちらにも言えることだと思う。反論する代わりに「ひ、やぁっ、いちにち……っ、するんだろ」お返しみたいに耳を齧りながら言うと、ごうが蜜の垂れたおれの首に柔く喰らい付いた。

『一日好きにしていいけど、痕はつけないでね』

 ごうに課した唯一のタブー。守ってくれてることがうれしくて、でも首へのどこか優しい愛撫とは裏腹におれを貫いた楔はお腹を突き破りそうに凶暴で。おれはごうの逞しい身体に縋り付いて、高い、娼婦のような悲鳴をどこか遠くに聴いた。





「くぁっ……う……ひっ、ぅっ、ん゛っぁ」
 対面座位は、あまり動きの自由は効かないけど深く繋がることができる。イオが必死にしがみついてくるのもかわいいし、蜜のような喘ぎ声もすぐそばで聴けるから好きな体位だ。もちろんイオとこうなるまでは、誰としてもそのことに気付きもしなかったけど。

「ーー~~っ!、あ゛ぁ~っ!!ぁ…っ、あぁ……」
 奥を抉るたびに天を仰いで硬直と弛緩を繰り返すイオは、たぶんもう一突きごとにイっている。もうピストンしなくても、俺が入ってるところ、ちょっと薄い肌が隆起した部分を掌で押すだけで、歯を食い縛らないと耐えられないほどのうねりを見せながら簡単に駆け上がる。潮も壊れた蛇口から止めどなく流れる水みたいに噴きっぱなしだから流石にちょっと心配になって、また口移しで水を飲ませる。
 窓の外は薄い青混じりの橙色から濃く変わってきている。イオの目はさっきよりもずっと虚ろで、舌も弱々しく震えて、時折俺の名前を呼ぶ声もたどたどしい。そろそろ限界だろうな、明日もイオはオフとはいえ、ちゃんとご飯も食べさせて寝かせてあげないと翌々日の体力がもたない。分かっていて、その身体を離せずにいる。

「愛してるよ、イオ」
「イオを抱いてるのは、ここに挿入ってるのは、誰のか分かる?」

 ガクガクと揺さぶられながら水滴のついた睫毛を振るわせ何度か頷いて、イオがもう力の入らない手で小さな子どもみたいにしがみついてくる。愛おしくて、強く抱き締める。それすら官能に支配された身体には身を捩っても耐え切れないほどの性感を生むようで、俺の形になった空洞をみっちりと塞いでいるだけの楔を締め付けて、イオが声もなく達するのが分かった。
 もう俺が動かなくても、イオの絶頂は終わらない。弛緩した端から硬直と痙攣が始まり、また駆け上っていく。精を強請るような肉のうねりに、息を詰めて。

「ごめんね……?もう一回だけでいいから……っ、名前呼んで?これは誰の?」

 そっとイオを押し倒して、膝を抱える。コツコツと、小刻みに叩きながら度重なる絶頂に半分トんでるイオの覚醒を促す。
 ご……ぉ……
 甘えるような、赦すような、包み込むようなその声に身体の芯が震えて、俺は最後の吐精に向けて本能のままに腰を打ち下ろした。



 いまなんじだろう。へやはくらい。ごうのからだは、あつい。
 ごうは何回も、「いま誰のがはいってる?誰のでイってるか、イオ、わかってる?」ときいた。そんなの、ごうしかいないのに、最初から、生まれたときからおれにはごうだけなのに。へんなごう。思いながらおれはごうの名前をよんだ。よぶたびにしあわせそうに、ちょっと泣きそうに歪むごうのかおを力の入らない手でなでながら。
 お昼すぎに甘いくだものをたべた以外、ほとんど何もたべていないのに、おなかのなかはくるしいほど充たされている。熱くてかたいごうので何度も、何度もきもちよくなって、弱いところをゴリゴリなぶりながら奥をつかれて、いく、も言えなくなって、ごうのからだにしがみつく力も入らなくなって。このまましんじゃうかも、かすみがかった頭の中で何回も思ったけど、いがいと人間はじょうぶにできている、らしい。あ、またくる。こわいくらいの大きな波。でもごうにからだをゆだねていれば、本当は何もこわくないことをおれは知っている。

 だいすき、だいすき、と思いながら、波のもたらすあまりのきもちよさに次第にそのことばのいみもばらばらになっていく。ごう、おれを貫いて、ゆさぶって、抱いているのがごうだってことだけがゆいいつ明白で、それがおれを心から安心させた。

 ごうがだいすき。ごうのでみたされる、強すぎる快楽でバラバラになるんじゃないかと思う、このからだが、おれが、愛おしい。ごうがいなくなったら、おれはしぬだろうな。ごく自然なこととして、そう思う。でもそれも、ごうの命をからだの中で感じるこの瞬間、何もこわくないのだった。

「庵」
 泣きそうな声で、ごうがおれをよんで。
 おなかの奥の奥でごうのが弾けたしゅんかん、おれは今度こそ深くてやさしい海の底――そこはふかふかで、あったかくて、まるでごうそのものみたいな場所だ――におちた。
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