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最終章 砂漠の薔薇

〇二一 聖者ビームด็็็็็้้้้้็็็็้้้้้็็็็็้้้้้็็็็็้้้้้็็็็ ③

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俺は多分、深い霧の中を彷徨うような長い夢を見ていたんだ。
でもやっと目覚めた。
そんな感じだった。

「ちぃたん……」

成長するにつれ、あの体験は俺の空想の産物なんだと思うようになり、やがて忘れてしまったのだ。
忘れないと社会に適応できないから。
でもちぃたんは存在した。
本当にいたんだ。
涙が溢れ、はらはらと零れ落ちるのに任せて、俺は祭壇の上で上半身を起こした。
緊張した面持ちのエリアスが俺の手を握りしめている。

「ナナセ?」
「エリー……俺な、餓鬼の頃、チタン合金の精霊と契約してたんだ。ちぃたんて言うの……思い出したんだ」
「ちぃ、たん……? わ、私のことは……?」
「何か質問してみろよ」

これはお約束の質問だろう。
俺がそう言った時点でエリアスは俺の記憶が戻っていることに気付いているはずだ。
なぜならそれは、エリアスが魔王に呪いを掛けられて失っていた記憶を取り戻したとき、エリアスが俺にした質問だからだ。

「では結婚式で一万回キスをするという約束も思い出したか?」

これは、エリアスのとき俺がした「手長海老の串焼きを一万本買ってくれるって約束も思い出したんだろうな?」という質問の意趣返しだろう。

「そんな約束してないことも思い出したけど、してやるよ!」

あのときエリアスは俺に「そんな約束はしていないことも思い出したが、何万本でも買ってやる!」って答えたんだっけ。
そういえばまだ買って貰ってないけどな。

「まだ終わりじゃないわよ。このままじゃ呪いの魔導書になっちゃうから。それを今度は依代に移すのよ」

呪いの魔導書……。
ヴェイラは冗談だか本気だか分からないことを言ってエリアスに指示を下す。

「なるほど。一度魔導書を経由することで、次に同じ呪詛を掛けられそうになったとき魔導書で防ぐことが出来るという訳か。直接依代へ移すより手間は掛かるが理に適っている」

呪詛を移された依代をエリアスが神殿の篝火に焼べた刹那、火柱が数十メートルも立ち上り、吹き抜けの天井を焦がして祭壇の真上の天井がない部分から空へと垂直に光を放った。
呪詛が燃えているのだ。
夜に関わらず神殿内が真昼のような光に包まれ、誰も言葉を発することが出来ない。

「心から感謝する、ヴェイラ。ナナセを救ってくれてありがとう」

沈黙を破ったのはエリアスだった。
エリアスに続いて俺からもお礼を言う。

「ヴェイラ先輩、助けてくれてありがとう」
「私もこれでやっと帰れるわ……」

ヴェイラは少し疲れた様子で微笑んで、顕現したときと同じく唐突に消えた。
俺がエリアスの手を借りて祭壇から降ろして貰っている横で神官長が呟く。

「たった今、我々は後世に伝えられる新たな神話の一ページに立ち会ってしまったようだ……」

そんな大それたことじゃないと思うんだけどな。
しかし、ヴェイラ今まで帰れていなかったのか。
エリアスの召喚に応えたばかりに可哀想に。

俺の陰毛を核とした依代は七日七晩燃え続け、神殿の塔から漏れる光は「聖者ビーム」と呼ばれた。
ちな、俺にビームด็็็็็้้้้้็็็็้้้้้็็็็็้้้้้็็็็็้้้้้็็็็ は出せない。
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