未定

おもち

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さん

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偶に帰って来る「ハハオヤ」。

此の頃になるともう「チチオヤ」は、略帰って来る事は無かった。

ハハオヤが滞在している間は部屋から出て来ず、大人しくしている姉。

後に待っている行為も恐れたが、自分の命すらも危うく感じ始め、現状を打ち明けた。

「そうなの?そんな事されてるの?」
「可哀相に」
「よし!今度お父さんに話しておくからね!」
「お母さんが守るから、任せとけ!」

何程何程、心強かったか。

「守るから」

此の言葉を、どれ程迄待ち侘びた事か。

あの日、声が枯れる程泣き叫びながら追い駆けた、後ろ姿。

真の意味で、もう自分の所へは戻らないと悟った母の愛。

其れが今刻を超え、再会出来たのだ。

翌日、前日とは違い、少年の心に「勇気」が芽生えた。

今だけ。
今だけを耐え切れば、何とかしてくれるからね。

じーちゃんに其の旨を伝え、二人助け合い、耐え続けた。

「守るから」の言葉只其れだけで、強くなれた。

一日、又一日と過ぎ行く中でも姉の暴力を堪え続け、信じ待った。

次の日も

又、次の日も

待ち続けた。

変わらずの恐怖・暴力の日常で、或る日ふと、気付いた。

嗚呼、そうか。

張り裂ける様な、此の訴え。

其れですらも母親には、何も届いてはいなかったのか。

嗚呼又しても、裏切られてしまったのか。

あの日から十の日付けが過ぎた頃、理解した。

再会出来たと思った母の愛。

身体は悉皆、傷んでしまった。

丑三つの刻、哀しくて悔しくて、淋しくて苦しくて、布団の中で声を殺し、泣いた。

隣で寝ている筈のじーちゃんが、何も言わず只、抱き締めてくれた。

ごめんよじーちゃん。
ごめんよ…。
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