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賑やかな杉野家
三十二、
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「え!そこ通り抜けできるの!うわぁ!抜かされた!」
「なんで今そのアイテム使うの!わー!ちっちゃくなった!」
「待って!当たってこないで!落ちたー!ビリだー!」
騒ぎながらゲームする大翔の隣で俺は黙々とコントローラーを操作していた。六戦して結果は俺の五勝一敗。始めた時は操作確認でゆっくりとプレイしていた為、最初の一回は負けたのだがその後は俺の一人勝ちだった。大翔は真っ直ぐな性格の為小細工等使わずにひたすら走り続けるため攻略はしやすい。大人気ないとは思うが手を抜くと嫌がられるから仕方ないのだ。
「なんで清飛くん久々なはずなのにそんなに上手いんだよ!」
「大翔もっとアイテムとか使えばいいのに」
「走るのに夢中でつい存在忘れちゃうの!」
「それでよく勝てると思ったな」
ゲームなんてここで暮らしていた時に大翔に付き合ってやるくらいだったので別にそこまで上手くはない。勝ち負けだけでいえば大翔はあまりゲームには向いていないのかもしれないが、俺との勝敗は気にせず自由に楽しんでほしい。
「結局負けちゃったかー。でも楽しかった!」
大翔がコントローラーを置いてソファに凭れる。残念そうではあるが晴れ晴れとしていて機嫌がなおって安心していたのだが、今度は顔色を窺うように話を切り出してきた。
「清飛くん今度いつ来るの?毎月でも来てよ」
「さあな。今回がイレギュラーだし正月だと思うけど」
「そんなに先!やだ!」
正直に答えるが、俺の言葉に大翔は駄々をこねる。
「忙しいんだよ。バイトもあるし」
「……お墓参りには来るのに?」
その言葉に一瞬カチンときて大翔の顔を睨む。お墓参りでしか母に会えないのだ。そんな風に言ってほしくない。だが、すぐにその怒りはおさまった。
「大翔……」
つい手を伸ばして大翔の頭を撫でる。
泣きそうな表情だった。
「お盆、お彼岸、命日、お正月、それ以外の日でも来てるんでしょ。ちょっと家に寄るくらいしてもいいじゃん。毎回長居してゲームしてなんて言わないし、ちょっと会うくらいしたい。年に一回しか会えないなんて悲しい」
大翔は最初こそ人見知りで他人が家にいるのに慣れず清飛のことを避けていたが、元々好奇心旺盛な性格なのと一度気を許したらその真っ直ぐな性格故とても懐いてくれた。身長が高くなって野球をはじめて少し体格がしっかりしても俺にとっては小さな弟のままだ。
「清飛くん、またうちで暮らそうよ。清飛くんがいてくれた方がママも嬉しそうだし。おじいちゃんとおばあちゃんも顔見せた方が安心すると思う」
「ごめん」
「うちにいた方がすぐにお墓参りに行けるよ。わざわが電車乗ってここまで来なくてもいいんだよ」
「うん、それでもここでは暮らせない」
悲しい表情をさせてしまうのは申し訳ないが、俺にも意地がある。
「なんで!何がそんなに嫌なの?パパのこと怖い?ママの構いたがりが嫌?それとも僕のこと嫌い?」
「違う、ごめん。誰かが嫌な訳じゃない。俺が悪いだけだから気にしないでいい」
「そんなの納得できない!誰かが嫌じゃないんだったら戻ってきてよ!僕、清飛くんのこと守るよ!」
手をギュッと握られ真っ直ぐに見つめられる。大翔にここまで寂しい思いをさせていたのかと情けなくなってくる。だが、それなら尚更来るべきではない。無理に何度も来て期待させてしまったら、また俺が耐えられなくなって傷つけてしまうかもしれない。家を出ると決めた時も家族に気を遣わせてしまった。もうあんな思いをするのは嫌だ。
「大翔に守ってもらわなくても自分の身は守れる。だから大丈夫」
「でも戻ってこないんでしょ」
「うん。ごめん」
「……わかってる。そんなこと。好きでいてくれていても清飛くんにとっては苦しいことがあるんだってこと一応理解はしてるつもり」
握られた手の力はふっと緩んだ。同時に肩の力も抜けたように一息つき、険しい顔は幾分か和らいだように見えた。
「僕まだ小学生だけど、清飛くんの苦しみいつか半分でも背負いたい。だから一緒に住んでなくても弟でいさせて。清飛くんはずっと僕の兄でいて」
「……約束しなくても大翔は俺の弟で、俺は大翔の兄だよ。寂しい思いをさせてるけど、それは変わらないから安心して」
「うん!清飛くんのそういうところ好き!」
「どういうとこだよ」
言っている意味はよく分からなかったが、大翔の顔に笑顔が戻って安心した。また飛びついてきたので重いと思いながら受け止めたが、まあいいかとソファに凭れながら頭を撫でた。
「なんで今そのアイテム使うの!わー!ちっちゃくなった!」
「待って!当たってこないで!落ちたー!ビリだー!」
騒ぎながらゲームする大翔の隣で俺は黙々とコントローラーを操作していた。六戦して結果は俺の五勝一敗。始めた時は操作確認でゆっくりとプレイしていた為、最初の一回は負けたのだがその後は俺の一人勝ちだった。大翔は真っ直ぐな性格の為小細工等使わずにひたすら走り続けるため攻略はしやすい。大人気ないとは思うが手を抜くと嫌がられるから仕方ないのだ。
「なんで清飛くん久々なはずなのにそんなに上手いんだよ!」
「大翔もっとアイテムとか使えばいいのに」
「走るのに夢中でつい存在忘れちゃうの!」
「それでよく勝てると思ったな」
ゲームなんてここで暮らしていた時に大翔に付き合ってやるくらいだったので別にそこまで上手くはない。勝ち負けだけでいえば大翔はあまりゲームには向いていないのかもしれないが、俺との勝敗は気にせず自由に楽しんでほしい。
「結局負けちゃったかー。でも楽しかった!」
大翔がコントローラーを置いてソファに凭れる。残念そうではあるが晴れ晴れとしていて機嫌がなおって安心していたのだが、今度は顔色を窺うように話を切り出してきた。
「清飛くん今度いつ来るの?毎月でも来てよ」
「さあな。今回がイレギュラーだし正月だと思うけど」
「そんなに先!やだ!」
正直に答えるが、俺の言葉に大翔は駄々をこねる。
「忙しいんだよ。バイトもあるし」
「……お墓参りには来るのに?」
その言葉に一瞬カチンときて大翔の顔を睨む。お墓参りでしか母に会えないのだ。そんな風に言ってほしくない。だが、すぐにその怒りはおさまった。
「大翔……」
つい手を伸ばして大翔の頭を撫でる。
泣きそうな表情だった。
「お盆、お彼岸、命日、お正月、それ以外の日でも来てるんでしょ。ちょっと家に寄るくらいしてもいいじゃん。毎回長居してゲームしてなんて言わないし、ちょっと会うくらいしたい。年に一回しか会えないなんて悲しい」
大翔は最初こそ人見知りで他人が家にいるのに慣れず清飛のことを避けていたが、元々好奇心旺盛な性格なのと一度気を許したらその真っ直ぐな性格故とても懐いてくれた。身長が高くなって野球をはじめて少し体格がしっかりしても俺にとっては小さな弟のままだ。
「清飛くん、またうちで暮らそうよ。清飛くんがいてくれた方がママも嬉しそうだし。おじいちゃんとおばあちゃんも顔見せた方が安心すると思う」
「ごめん」
「うちにいた方がすぐにお墓参りに行けるよ。わざわが電車乗ってここまで来なくてもいいんだよ」
「うん、それでもここでは暮らせない」
悲しい表情をさせてしまうのは申し訳ないが、俺にも意地がある。
「なんで!何がそんなに嫌なの?パパのこと怖い?ママの構いたがりが嫌?それとも僕のこと嫌い?」
「違う、ごめん。誰かが嫌な訳じゃない。俺が悪いだけだから気にしないでいい」
「そんなの納得できない!誰かが嫌じゃないんだったら戻ってきてよ!僕、清飛くんのこと守るよ!」
手をギュッと握られ真っ直ぐに見つめられる。大翔にここまで寂しい思いをさせていたのかと情けなくなってくる。だが、それなら尚更来るべきではない。無理に何度も来て期待させてしまったら、また俺が耐えられなくなって傷つけてしまうかもしれない。家を出ると決めた時も家族に気を遣わせてしまった。もうあんな思いをするのは嫌だ。
「大翔に守ってもらわなくても自分の身は守れる。だから大丈夫」
「でも戻ってこないんでしょ」
「うん。ごめん」
「……わかってる。そんなこと。好きでいてくれていても清飛くんにとっては苦しいことがあるんだってこと一応理解はしてるつもり」
握られた手の力はふっと緩んだ。同時に肩の力も抜けたように一息つき、険しい顔は幾分か和らいだように見えた。
「僕まだ小学生だけど、清飛くんの苦しみいつか半分でも背負いたい。だから一緒に住んでなくても弟でいさせて。清飛くんはずっと僕の兄でいて」
「……約束しなくても大翔は俺の弟で、俺は大翔の兄だよ。寂しい思いをさせてるけど、それは変わらないから安心して」
「うん!清飛くんのそういうところ好き!」
「どういうとこだよ」
言っている意味はよく分からなかったが、大翔の顔に笑顔が戻って安心した。また飛びついてきたので重いと思いながら受け止めたが、まあいいかとソファに凭れながら頭を撫でた。
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