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『春日井、記憶の定まるところは?』
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『春日井、記憶の定まるところは?』
結局、あの騒動の後。
春日井さんとも先生とも顔を合わせる事なく、こうして翌日の朝を迎えたわけだが。
「すー……はー……」
教室の前で深呼吸。
この時間であれば春日井さんはすでに登校しているだろう。
顔を合わせた時、どういう反応をするのか。
その時の反応で先生の誤魔化し具合がわかると思うが……昨日の春日井さんのやらかしって、そんな簡単に誤魔化せるレベルじゃないと思うんだがなぁ。
「よし」
どのみち、ずっとここにいるわけにもいかない。オレは覚悟を決めて教室のドアを横にスライドさせる。
いつものように後ろのドアから入り、さっと教室内を見渡す。
「おはよう、宮城君」
「宮城君っ、おはよ!」
近くにいたクラスメートからの挨拶に笑顔で応えつつ、春日井さんの姿を探す。
はたして彼女はいた。
最前列の自分の席についたまま、何か書き物をしているようだったがクラスメートに一斉に挨拶されたオレに気付くとこちらを見てすぐに立ち上がる。
その表情は特にいつもと変わりない。真面目で面倒見の良さそうな、ただし少しおせっかいも過ぎる、そんな誠実で明るい笑顔。
オレは自分の席を見る。
こみいった話になるようなら夏木さんが近くにいるのはよろしくないと思う。
二人は表立って仲たがいをしているわけではないが仲良しというわけでもない。
と思いきや。
「……あれ、夏木さん、休みかな?」
いつもであれば机につっぷして居眠りしている夏木さんの丸まった背中がなかった。
不良少女のくせに登校時間の早い夏木さんだが、今日は遅れているのだろうか?
立ったままのオレの横にやってきた春日井さんは、主のいない夏木さんの席を見て肩をすくめる。
「夏木さん、今日はお休みよ。風邪ですって。昔からそう。体は丈夫なのによく風邪をひいていたから」
「ふうん?」
やはり付き合いは長いらしい。
「それより……昨日はありがとう、その、色々と……ね」
小声でオレに礼を言う春日井さん。
「あ、うん。あれくらい」
オレは平静を装いながら春日井さんの顔色をさぐる。
どうだ?
どうなんだ?
先生はうまく誤魔化せたのか?
どこまで誤魔化されているのか把握していない以上、春日井さんの態度や言葉の節々から情報を得るしかない。
春日井さんの中のオレは何を知っていて何を知らないのか。それがわかるまでヘタな事は口にできない。
「冬原先生にもご迷惑をかけてしまって。本当に恥ずかしい」
「はは。誰だってそういう時はあるよね」
「ありがとう、そう言ってもらえると気が楽になるわ」
やばい。
何も情報が拾えない。
昨日の先生との打ち合わせでは、先生が保健室に入ってきたあたりがもっとも記憶があやしいだろうから、そのあたりのタイミングで誤魔化すと言っていた。
つまりオレは、春日井さんがオレの机と仲良くなったあげく、教室でおしっこを漏らした事を黙っている、というポジションでいいのだろうか?
……それにしては、春日井さんの落ち着きようも不自然だ。
もし前世でオレが好きな女の子の机にすりつけたりしていた挙句、教室で漏らしたとして、その相手にこうも爽やかに挨拶できるだろうか?
わからん。
やはり情報が足りない。
「宮城君。それでね。お礼もしたいし、今日の放課後……お茶とかどうかな?」
「あ。うん、もちろん。お礼なんていらないけど、お茶に誘ってもらえるのは嬉しいよ」
他のクラスメートの手前もあるので、小声のまま誘ってきた春日井さんにオレは即答する。
教室ではできないような話が山ほどあるのだから。
結局、あの騒動の後。
春日井さんとも先生とも顔を合わせる事なく、こうして翌日の朝を迎えたわけだが。
「すー……はー……」
教室の前で深呼吸。
この時間であれば春日井さんはすでに登校しているだろう。
顔を合わせた時、どういう反応をするのか。
その時の反応で先生の誤魔化し具合がわかると思うが……昨日の春日井さんのやらかしって、そんな簡単に誤魔化せるレベルじゃないと思うんだがなぁ。
「よし」
どのみち、ずっとここにいるわけにもいかない。オレは覚悟を決めて教室のドアを横にスライドさせる。
いつものように後ろのドアから入り、さっと教室内を見渡す。
「おはよう、宮城君」
「宮城君っ、おはよ!」
近くにいたクラスメートからの挨拶に笑顔で応えつつ、春日井さんの姿を探す。
はたして彼女はいた。
最前列の自分の席についたまま、何か書き物をしているようだったがクラスメートに一斉に挨拶されたオレに気付くとこちらを見てすぐに立ち上がる。
その表情は特にいつもと変わりない。真面目で面倒見の良さそうな、ただし少しおせっかいも過ぎる、そんな誠実で明るい笑顔。
オレは自分の席を見る。
こみいった話になるようなら夏木さんが近くにいるのはよろしくないと思う。
二人は表立って仲たがいをしているわけではないが仲良しというわけでもない。
と思いきや。
「……あれ、夏木さん、休みかな?」
いつもであれば机につっぷして居眠りしている夏木さんの丸まった背中がなかった。
不良少女のくせに登校時間の早い夏木さんだが、今日は遅れているのだろうか?
立ったままのオレの横にやってきた春日井さんは、主のいない夏木さんの席を見て肩をすくめる。
「夏木さん、今日はお休みよ。風邪ですって。昔からそう。体は丈夫なのによく風邪をひいていたから」
「ふうん?」
やはり付き合いは長いらしい。
「それより……昨日はありがとう、その、色々と……ね」
小声でオレに礼を言う春日井さん。
「あ、うん。あれくらい」
オレは平静を装いながら春日井さんの顔色をさぐる。
どうだ?
どうなんだ?
先生はうまく誤魔化せたのか?
どこまで誤魔化されているのか把握していない以上、春日井さんの態度や言葉の節々から情報を得るしかない。
春日井さんの中のオレは何を知っていて何を知らないのか。それがわかるまでヘタな事は口にできない。
「冬原先生にもご迷惑をかけてしまって。本当に恥ずかしい」
「はは。誰だってそういう時はあるよね」
「ありがとう、そう言ってもらえると気が楽になるわ」
やばい。
何も情報が拾えない。
昨日の先生との打ち合わせでは、先生が保健室に入ってきたあたりがもっとも記憶があやしいだろうから、そのあたりのタイミングで誤魔化すと言っていた。
つまりオレは、春日井さんがオレの机と仲良くなったあげく、教室でおしっこを漏らした事を黙っている、というポジションでいいのだろうか?
……それにしては、春日井さんの落ち着きようも不自然だ。
もし前世でオレが好きな女の子の机にすりつけたりしていた挙句、教室で漏らしたとして、その相手にこうも爽やかに挨拶できるだろうか?
わからん。
やはり情報が足りない。
「宮城君。それでね。お礼もしたいし、今日の放課後……お茶とかどうかな?」
「あ。うん、もちろん。お礼なんていらないけど、お茶に誘ってもらえるのは嬉しいよ」
他のクラスメートの手前もあるので、小声のまま誘ってきた春日井さんにオレは即答する。
教室ではできないような話が山ほどあるのだから。
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