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『氷雨社長との再会(2)』
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『氷雨社長との再会(2)』
軽く横を向いただけなのに、上半身が描くボディラインの曲線がすさまじい。
冬原先生と氷雨社長が何度か言葉を交わした後、二人がチラリとこちらを見た。
オレが会釈すると視線の向こうでも氷雨社長が立ち上がり、丁寧に頭を下げる。
オレも慌てて同じように頭を下げた。
その間に冬原先生が戻ってくる。
「宮城、待たせたな。少し早いが面接を始めるとの事だ」
「はい。失礼のないように頑張ります」
「氷雨先輩は自分に厳しく後輩にも厳しい方だが、無体を言う人ではない。学生相応の振る舞いをしていればいい。気負う必要はない」
そう言いながら冬原先生はオレの肩を軽く叩く。
少ないながらも周囲のテーブルに座っていた女性客たちが小さな声を上げた。カウンター内や壁際に待機していたホテルの従業員さんたちの目もこちらに向いている。
「おっと。フォーマルな場所だと、この程度でもセクハラになるか」
「見せつけたいのでは?」
「時と場合による。ここは嘘や言い訳や拳でどうこうなる場所じゃない。従業員の他に警備員もいるからな」
「拳でどうこうしようとするのはやめましょう。教師が傷害なんて即解雇でしょう? 先生が学園からいなくなるなんて、ボクはイヤですよ」
せっかく落とした年上のセフレだ。今では大切な友人とも思っているし、変な事件を起こしてほしくない。
「冗談だ。せっかく人生で最高の時間を過ごしているのに、つまらん事でお縄を頂戴するような真似はせん」
最初は熱血系ながらも真面目な教師だと思っていたが、仲が深まるほど素が見えてくる。
そんな素顔も素敵だが、オレが最初にこの人に求めたのは“大人の魅力”だ。それはすでに欠片もない。
そんなたわいのない事を小声で話しながら、氷雨社長の前までやってきた。
チラリと見れば、冬原先生も教師然といった顔になっている。
オレは背筋を伸ばし、意識的に真面目な顔になって口を開いた。
「初めまして……ではありませんね。その節はありがとうございました。ちゃんとお礼もできず心残りでしたが、御縁というものは不思議なものですね」
立ったまま迎えてくれた氷雨社長に挨拶をし、大げさにならない程度に頭を下げる。
ここまでは社会人としての礼儀。
ここからは――ビッチの時間だ。
オレは頭を上げると同時に、ニッコリと笑いながら口を開く。
「申し遅れました。宮城京(ミヤギ キョウ)です。本日はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございます」
至近距離からイケメンスマイル。
ちょっとだけ眼鏡をズラし、裸眼で氷雨社長を見つめることも忘れない。
完璧だ。我ながら完璧な挨拶だった。
この世界において、女性の胸に好奇心や性的興奮を覚えるのはド変態だと何度も夏木さんに言われている。
こちらの氷雨社長との初対面時は、不可抗力とはいえ胸をわしづかみだ。変態イケメンという第一印象がついてもおかしくない。
少しでも悪いイメージを払拭し、良いイメージに塗り替える必要がある。
至近距離からのイケメンスマイル、隠し味に魔眼。これはもう一目惚れ待ったなしだ。こんなコンボを食らった氷雨社長はどんな反応をする?
と、オレがピンク色の期待をして返答を待っていると。
「こちらこそ。あの時は不愉快な思いをさせてしまい申し訳なかった。君とは身長差があったとは言え、あのような痴女まがいの事をしてしまい……だというのに本日は足を運んでもらって感謝にたえない。冬原先生もご多忙のところ、同席に感謝します」
一切動じていない氷雨社長の落ち着いた声が返ってきた。
むむ。
イケメンや魔眼の要素をのぞいたとしても、今のはけっこうあざといカンジで攻めたつもりだったが、まったく効いていないぞ。
そういえば、夜のお店で男遊びもしていると冬原先生が言っていた。
この男女比の激しい世界で、男慣れした貴重な女性というわけか。
これまでセフレになった皆とは違って、攻略難度は高そうだ。
しかし、諦めるわけにはいかない。
自分でも縁といったが、まさか再会できるとは思っていなかった。
「いえ。あの日はボクの方こそ抱き着くような格好になってしまってすみませんでした」
「いやいや。私の方こそ」
社会人らしい謝罪合戦が始まる。
かつての社会経験により口は勝手に動くが、視線はガッチリ固定されて動かない。
そう。
今、オレの目の前にはデッッッかく突き出た氷雨社長のお胸があるのだ。
薫ちゃんのデッかいおっぱい、より、さらに大きい夏木さんのデッッかいおっぱい、より、さらにデッッッかいおっぱいだ。
あの時、この胸の中に頭ごと包まれたオレは大人の女性の香りと柔らかさに包まれ、至福の時間を過ごした。
正直、ガン見だ。このままでは変態扱いされてしまう。
視線を引きはがさなければと理性が警鐘を鳴らしているものの、前世の本能が視線をそらす事を許さない。
せっかくイケメンイメージで塗り替えた変態イメージが復活してしまう。
「……やはり気になるか? 目障りで申し訳ないが面接の間だけは我慢して欲しい」
しまった。
オレの熱視線を咎めるのではなく、氷雨社長は自分の胸をちらりと見た後、申し訳なさそうにうなだれた。
誤解だ。
だがその誤解を解く手段がない。
氷雨社長から見えないように、冬原先生が背中をつねってくる。
普通に接して欲しいと言われていたのに、やはりオレに普通は無理だった。
オレはオレの生き方を恥じることはないが、女性を悲しませる事は恥だと思う。
だから。
「誤解です。ボクは大きな胸が好きなので、つい見入ってしまいました」
胸を張り、堂々と断言した。
---
ノクターンノベルにて改稿版の転載を始めました。
https://novel18.syosetu.com/n1585jn/
春日井編まで大きくは変わりませんが、よろしければお立ち寄り頂ければと思います。
現在、新タイトルですが、さらに何度か変更するかもしれません。
よろしくお願いいたします。
軽く横を向いただけなのに、上半身が描くボディラインの曲線がすさまじい。
冬原先生と氷雨社長が何度か言葉を交わした後、二人がチラリとこちらを見た。
オレが会釈すると視線の向こうでも氷雨社長が立ち上がり、丁寧に頭を下げる。
オレも慌てて同じように頭を下げた。
その間に冬原先生が戻ってくる。
「宮城、待たせたな。少し早いが面接を始めるとの事だ」
「はい。失礼のないように頑張ります」
「氷雨先輩は自分に厳しく後輩にも厳しい方だが、無体を言う人ではない。学生相応の振る舞いをしていればいい。気負う必要はない」
そう言いながら冬原先生はオレの肩を軽く叩く。
少ないながらも周囲のテーブルに座っていた女性客たちが小さな声を上げた。カウンター内や壁際に待機していたホテルの従業員さんたちの目もこちらに向いている。
「おっと。フォーマルな場所だと、この程度でもセクハラになるか」
「見せつけたいのでは?」
「時と場合による。ここは嘘や言い訳や拳でどうこうなる場所じゃない。従業員の他に警備員もいるからな」
「拳でどうこうしようとするのはやめましょう。教師が傷害なんて即解雇でしょう? 先生が学園からいなくなるなんて、ボクはイヤですよ」
せっかく落とした年上のセフレだ。今では大切な友人とも思っているし、変な事件を起こしてほしくない。
「冗談だ。せっかく人生で最高の時間を過ごしているのに、つまらん事でお縄を頂戴するような真似はせん」
最初は熱血系ながらも真面目な教師だと思っていたが、仲が深まるほど素が見えてくる。
そんな素顔も素敵だが、オレが最初にこの人に求めたのは“大人の魅力”だ。それはすでに欠片もない。
そんなたわいのない事を小声で話しながら、氷雨社長の前までやってきた。
チラリと見れば、冬原先生も教師然といった顔になっている。
オレは背筋を伸ばし、意識的に真面目な顔になって口を開いた。
「初めまして……ではありませんね。その節はありがとうございました。ちゃんとお礼もできず心残りでしたが、御縁というものは不思議なものですね」
立ったまま迎えてくれた氷雨社長に挨拶をし、大げさにならない程度に頭を下げる。
ここまでは社会人としての礼儀。
ここからは――ビッチの時間だ。
オレは頭を上げると同時に、ニッコリと笑いながら口を開く。
「申し遅れました。宮城京(ミヤギ キョウ)です。本日はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございます」
至近距離からイケメンスマイル。
ちょっとだけ眼鏡をズラし、裸眼で氷雨社長を見つめることも忘れない。
完璧だ。我ながら完璧な挨拶だった。
この世界において、女性の胸に好奇心や性的興奮を覚えるのはド変態だと何度も夏木さんに言われている。
こちらの氷雨社長との初対面時は、不可抗力とはいえ胸をわしづかみだ。変態イケメンという第一印象がついてもおかしくない。
少しでも悪いイメージを払拭し、良いイメージに塗り替える必要がある。
至近距離からのイケメンスマイル、隠し味に魔眼。これはもう一目惚れ待ったなしだ。こんなコンボを食らった氷雨社長はどんな反応をする?
と、オレがピンク色の期待をして返答を待っていると。
「こちらこそ。あの時は不愉快な思いをさせてしまい申し訳なかった。君とは身長差があったとは言え、あのような痴女まがいの事をしてしまい……だというのに本日は足を運んでもらって感謝にたえない。冬原先生もご多忙のところ、同席に感謝します」
一切動じていない氷雨社長の落ち着いた声が返ってきた。
むむ。
イケメンや魔眼の要素をのぞいたとしても、今のはけっこうあざといカンジで攻めたつもりだったが、まったく効いていないぞ。
そういえば、夜のお店で男遊びもしていると冬原先生が言っていた。
この男女比の激しい世界で、男慣れした貴重な女性というわけか。
これまでセフレになった皆とは違って、攻略難度は高そうだ。
しかし、諦めるわけにはいかない。
自分でも縁といったが、まさか再会できるとは思っていなかった。
「いえ。あの日はボクの方こそ抱き着くような格好になってしまってすみませんでした」
「いやいや。私の方こそ」
社会人らしい謝罪合戦が始まる。
かつての社会経験により口は勝手に動くが、視線はガッチリ固定されて動かない。
そう。
今、オレの目の前にはデッッッかく突き出た氷雨社長のお胸があるのだ。
薫ちゃんのデッかいおっぱい、より、さらに大きい夏木さんのデッッかいおっぱい、より、さらにデッッッかいおっぱいだ。
あの時、この胸の中に頭ごと包まれたオレは大人の女性の香りと柔らかさに包まれ、至福の時間を過ごした。
正直、ガン見だ。このままでは変態扱いされてしまう。
視線を引きはがさなければと理性が警鐘を鳴らしているものの、前世の本能が視線をそらす事を許さない。
せっかくイケメンイメージで塗り替えた変態イメージが復活してしまう。
「……やはり気になるか? 目障りで申し訳ないが面接の間だけは我慢して欲しい」
しまった。
オレの熱視線を咎めるのではなく、氷雨社長は自分の胸をちらりと見た後、申し訳なさそうにうなだれた。
誤解だ。
だがその誤解を解く手段がない。
氷雨社長から見えないように、冬原先生が背中をつねってくる。
普通に接して欲しいと言われていたのに、やはりオレに普通は無理だった。
オレはオレの生き方を恥じることはないが、女性を悲しませる事は恥だと思う。
だから。
「誤解です。ボクは大きな胸が好きなので、つい見入ってしまいました」
胸を張り、堂々と断言した。
---
ノクターンノベルにて改稿版の転載を始めました。
https://novel18.syosetu.com/n1585jn/
春日井編まで大きくは変わりませんが、よろしければお立ち寄り頂ければと思います。
現在、新タイトルですが、さらに何度か変更するかもしれません。
よろしくお願いいたします。
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