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第3話
「わぁ、けっこういろんなデザインあるんですね。」
「はい。 最近はオーダーメイドされる方も多いので…。」
「ですって、泰胤さんどうする?」
「明日香の好きにすればいい。」
ここは一之瀬家御用達の銀座の高級宝石店。
泰胤に突き付けられたもう一つの選択肢は明日香との婚約だった。
「避妊しなかったってことはそういうつもりだったってことですよね?」
この一言に泰胤は返す言葉がなかった。
というか、明日香のバックボーンが恐ろしすぎて思考が止まってしまったといった方が正しいかもしれない。
(まさか、一之瀬キャピタルの御令嬢だったなんて…。)
泰胤は冷や汗タラタラである。
一之瀬キャピタルの力がどれほどのモノかよく知っているからだ。
おまけに佳織とは4年間切磋琢磨してきたのでその有能さは身に染みている。
今更ながらに既成事実を作ってなどという馬鹿げた考えを持っていたことを後悔していた。
「や・す・た・ね・さ~~~~ん!!」
「ふへぇ?!」
「明後日の方向に意識飛んでますよ。」
「あ…。 す、すまん…。」
「ある意味仕方ないか。」
「明日香…。」
「言っときますけど、これ、自業自得ですからね。」
釘を刺される泰胤。
結局、その場で婚約指輪を買う羽目に…。
ランチを済ませた後、再びマンションに戻ってきた。
今度は後藤ににこやかに出迎えられる。
「明日香様、お帰りなさいませ。」
「ただいま。」
明日香はそのままエレベーターに向かおうとしたのだが、思いついたことがあり立ち止まる。
「明日香?」
「ちょっと、ここで待ってて。」
明日香は入り口に立つ後藤の元に駆け寄る。
「後藤さん。」
「何でございましょう?」
「明日まで誰も部屋に通さないで。」
「明日までですか?」
「昨日、羽目を外しすぎちゃったからゆっくり過ごしたいの。」
「なるほど…。」
「あ、これ、佳織さんや雫さんもだから。
あと、父さんたちが来ても追い返してね。」
「承知しました。」
明日香は再びエレベーターに向かう。
泰胤は何が何だかわからない。というか、嫌な予感しかしない。
それは、明日香が満面の笑みを浮かべているから…。
着いたのは10階の角部屋。
一之瀬家のお嬢様なら当然なのだろうと納得した。
「どうぞ。」
「あ、ああ…。」
「コーヒー入れますから適当に座っててください。」
部屋に上がり、リビングへと案内された泰胤は足を踏み入れて固まることになる。
「明日香、これ…。」
「趣味です。」
明日香はキッパリ言ってのける。
リビングに置かれていたのは最新型のゲーム機。そして、ゲームソフトの山。
それも、よくある乙女ゲームではなく、本格的なアクションゲームやRPG。
ローテーブルに置きっぱなしになってるタイトルを手に取った泰胤は驚きのあまり声を上げてしまう。
「お前、これ!!」
「うん?」
「オンライン対戦ゲームじゃないか?!」
「そうですよ。
あ、でも、全然弱いですからみんなにくっついていくのがやっとですよ。」
「そうなのか?」
「ここのところ仕事も立て込んでましたし。
もともとは友人に勧められて始めたんですけど、イマイチ操作に慣れなくて…。
泰胤さんもよくやるんですか?」
「俺はしない。 弟が、そういうのが好きなだけだ。」
「へぇ、弟さんがいるんだ。」
「今はルクセンブルグに住んでる。」
泰胤の表情が冴えない。
どこか思い詰めた表情に佳織から聞かされた5年前に中川物産のドラ息子がしでかした事件を思い出した。
(確か、佐竹のお嬢さんの婚約者って相馬って苗字だったよね。 もしかして、弟さんがそうなのかな?)
明日香はそのままスルーしようと思ったのだが、泰胤の方から話し始められた。
「一之瀬から聞いてるんだろ?」
「え?」
「中川物産のドラ息子のレイプ事件。」
「えっと…。」
「相馬貞胤は俺の弟だ。」
「そう、だったんですか…。」
「そう言えば…。」
「?」
「一之瀬の奴、俺たちのことをとやかく言う権利はないからとか言ってたが…。」
「ああ、あれはですねぇ。」
「?」
コーヒーの入ったマグカップをテーブルに置いて、明日香は苦笑しながら佳織の真意を伝えることにした。
「佳織さんも婚約者になった男性にお持ち帰りされちゃったからですよ。」
「は?」
「元上司で常務の梶原さんって方となんですけどね。
課長昇進の祝いに連れて行ってもらったバーで飲み過ぎてそのままお持ち帰りされたって。
そのまま婚約して、今はここの最上階で同棲してます。」
「なんだ、それ。」
「ほぼほぼ、私たちと一緒ですね。」
「笑えん。」
「まぁ、あの二人は幸せいっぱいなのでいいんじゃないですか?」
「一之瀬ってそういう女だったのか?」
「恋人に裏切られて、10年男日照りだったらしいですから、箍外れちゃったんじゃないかな。」
「な、なるほど…。」
泰胤はコーヒーに口をつける。
深煎りのそれはお気に入りのイタリアンブレンドだった。
「気に入りました?」
「え?」
「泰胤さんは深煎りが好きでしょ?」
「はは、単に酸味の強いのが苦手なだけだ」
「そうなんですか?」
「あの後味がなぁ。」
「あ、わかります。 私も苦手。」
「こういうところで気が合うから、お前といると安心できるんだ。」
「えっと、その…。」
「昨夜のことは悪かった。」
「いいですよ。 私も飲みすぎちゃったわけですし。
ちゃんと、責任は取ってもらいましたしね。」
明日香は先ほどかったばかりの指輪を見せつける。
笑顔ではあるが目が全然笑っていない。
泰胤は縮こまるよりほかなかった。
マグカップを両手に持ち俯いていると明日香がそれを取り上げテーブルに置く。
突然のことに顔を上げるとかけていた眼鏡も取り上げられる。
「泰胤さん。」
「な、何だ?」
「昨日は散々楽しみましたよね?。」
「ま、まぁ…。 そのぉ。」
「私、今朝はのんびり過ごしたいから黙って帰ったんです。」
「そ、そうか…。」
「でも、気が変わりました。」
「へ?」
明日香はもう一度笑みを浮かべると、泰胤のネクタイに手をかけそれを外し始める。
ワイシャツのボタンも外し、インナーも取っ払う。
そして、その外したネクタイで泰胤の両手首を縛り始めた。
「お、おい!」
「今から『お仕置き』です。」
「はぁ?」
「あ、動かないでくださいね。 痕、残っちゃいますから…。」
「そういうことじゃなくてだな…。」
あっという間に両手の自由を奪われてしまった泰胤。
そればかりか、スラックスからベルトを引き抜かれそれで足首まで縛り上げられてしまった。
明日香は泰胤の前に座り込むと、スラックスの上から彼の股間を撫で上げる。
まだ柔らかいそこはゆっくり撫で上げると呼応するかのように硬く勃ち上がっていく。
「くっ。」
「気持ちイイですか?」
「や、やめろ…。」
「そう言われてやめれると本気で思ってます?」
「うぐぅ。」
泰胤は必死だった。
兎に角、理性を総動員して与えられる快楽の波に抗う。
だが、それは呆気なく崩された。
明日香はファスナーの引手を歯で噛み、引き下ろす。
それは官能的で上から見下ろす格好になってる泰胤の鼓動を高まらせるには十分だった。
「邪魔だから全部取っちゃいますね。」
「は?」
それまでの色気はどこへやら。
明日香は勢いよくボクサーパンツともどもスラックスを引き下ろした。
プルンと震えて飛び出した泰胤の逸物。
それはもう、準備万端、いつでも発射オーライのガチガチ状態。
それを包み込むように手を添えて、優しく撫で上げる。
「あっ…。」
思わずそんな声が漏れ出てしまう泰胤。
だが、明日香はそれ以上のことはしない。
とはいえ、自分から先を求めるなど泰胤のプライドが許さない。
「フフフ、いつまで我慢できる?」
「くっ。」
明日香は楽しそうにしている。
腹に力を入れても既に先端は先走りで濡れている。
「そろそろ良いっかな。」
「?」
そう言うと明日香はそれを咥え込む。
それまでと違い、生暖かいヌルっとした感触にクラクラした。
もう、あとは流されるまま泰胤は喘ぐしかなかった。
時々、ピンポイントで刺激されその度に腰が跳ねる。
「あ、あぁぁ…。 あ、明日香…。」
「もう降参?」
「こ、降参…。 た、頼むから…。 入れさせて、くれ…。」
「私言いましたよね?」
「な、何が?」
「お仕置きだって…。」
「ど、どうしろと?」
「ちゃんとお願いできたら、ね。」
「あぁぁ、わかった。 俺が悪かった。
頼むから、入れさせてくれ。 お前の中でイきたいんだ。」
「よくできました。」
明日香はクスリと微笑むと着ていたものを脱ぎ捨て、膝立ちになって泰胤の腰を跨ぐ。
逸物を蜜口に宛がい一気に腰を下ろす。
「ぐわっ!」
「あんっ!!」
先程の口淫とはまた違った刺激が与えられ爆発しそうになる泰胤。
激しく突き上げたい衝動に駆られるも手も足も縛られたままではどうしようもない。
おまけに明日香は円を描くように緩く腰を振るだけでそれ以上の快感は与えてこない。
「なぁ。」
「なんですか?」
「これ、解いてくれないか?」
泰胤は手首を持ち上げる。
でも、明日香はニッコリ笑って耳元で『ダ~メ』と囁く。
「ぐはっ。」
「もう、しょうがないなぁ。」
明日香は泰胤の腕を持ち上げ、手首を縛られ輪っか状になったソレの間に自分の体を入れる。
泰胤の縛られた手首が明日香の腰の後ろに来る格好になり体が密着する。
泰胤は手首に力を入れ、明日香の腰を引き寄せると腰に力を入れて奥を穿ち始めた。
「これ以上は耐えられん。」
「きゃんっ!」
「明日香、一気にいくぞ!!」
それから泰胤は一心不乱に腰を突き上げる。
今や二人はお互いを貪り合う獣だった。
先に限界を迎えたの泰胤は本能の赴くままにその熱を吐き出す。
それを受け止める明日香はどこか恍惚とした表情だった。
「「はぁ、はぁ、はぁ。」」
そのまましばらくソファでぐったりと重なり合っていた二人。
勿論、未だ繋がったまま。
恐らくは、少しでも動けば泰胤の逸物は再び力を取り戻すだろう。
「よいしょ。」
「明日香?」
明日香は泰胤の腕を持ち上げその囲いから抜けるとあっさりと体を離した。
それを名残惜しそうに眺める泰胤。
すると、明日香はクスクスと笑い始める。
「何がおかしい?」
「だって…。」
「?」
「そんな恰好で見られても…。」
「お前がやったんだろうが!!」
「そう、ですけど…。」
「いい加減、解け!!」
「解いて欲しいですか?」
「あ・た・り・ま・え・だ。」
「じゃ、私のお願い聞いてくれたら、ね。」
「ぐっ。」
明日香の笑顔に泰胤はたじろぐ。
今日一日で明日香の恐ろしさを嫌というほど知ってしまったから。
だが、明日香は泰胤の頬を両手で引き寄せるとその唇を自分のそれで塞ぐ。
「明日香?」
「明日、泰胤さんのお気に入りの喫茶店に連れて行ってください。」
「え?」
「二人でモーニングコーヒー飲みたいです。」
「それでいいのか?」
「う~~ん。」
「明日香さん?」
「プロポーズ。」
「へ?」
「そこでプロポーズしてくれたら嬉しいな。」
「そ、そんなのでいいのか?」
「うん。 大好きな人と大好きなコーヒー飲みながらプロポーズされるのが夢だったから。」
「そ、そうか。」
「してくれますか?」
「ああ、勿論。」
明日香ははにかむような笑顔を向けると手足の拘束を解いた。
漸く体の自由を取り戻した泰胤は足首に引っかかっていたスラックスとパンツを完全に脱ぎ捨てる。
で、そのまま明日香を横抱きに抱き上げた。
「きゃっ!」
「で、寝室はどっちだ?」
「えっと、あっち…。」
「そうか…。」
「泰胤さん、一つ聞いていい?」
「なんだ。」
「もしかしてやる気満々?」
「当然だろ。」
「あんまり激しくしないでね。」
「むぅ、善処はする。」
「せめて明日の朝起きれるくらいで止めてくれると嬉しんですけど。」
「頑張る。」
何を頑張るんだとツッコみたくなるのを我慢して寝室へと消えていった。
そのあと、絶え間なく明日香の喘ぎ声とベッドがきしむ音が響いたのは言うまでもない。
その様子を静かに見守るのはコーヒーの入った二つのマグカップと黒縁の眼鏡だった。
************************************************
お読みいただきありがとうございました。
これにて完結です。
あれ? 『眼鏡』が目立ってないぞ。
ど、どうしよう…。
【補足 其の弐】
明日香はヘビーユーザーなゲーマーです。
親族には内緒にしてますが、自分で制作会社を立ち上げたいと思っています。
ですが、そのためには経営や営業などのノウハウを自ら身に着けるべきだと思い今の会社に就職をすることを決めました。
当時、既に従姉の雫か兄の潤が一之瀬の後継者になることが決まっていたので明日香は心置きなく自分の夢に邁進できました。
なお、既に従兄の雅紀(佳織の弟)から出資を取り付けていたりします。
『30代半ばで独立』が当面の目標ですが、その前に泰胤との間に子供ができそうです。
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