冥き竜王と春乙女

氷室龍

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序章

神話の始まり

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遥か昔―――――――――
世界は混沌カオスと呼ばれ、天も地もなく、昼も夜もない一つだった。
カオスはまず奈落タルタロスを生み、後に大地ガイアを生む。
そして、ガイアはウラヌスを生み出す。これにより世界は天と地に分かれることになる。

ガイアはウラヌスを夫とし、後に『ティターン12神』と呼ばれる巨神を生んだ。
だが、ウラヌスは自ら産んだ子供たちの内、キュクロプスやヘカトンケイルの醜い姿を嫌いタルタロスへと閉じ込めてしまう。
それに腹を立てたガイアは息子の一人で時の神・クロノスに命じてウラヌスに報復に出る。こうしてクロノスはウラヌスを退け、神の王となったのであった。

「クロノスよ。やがてそなたも儂のように自分の息子に王位を退けられることになるだろう」

ウラヌスはその一言を残し、世界から去った。そして、この言葉はクロノスの心に暗い影を落とすことになる。

クロノスはウラヌスの言葉から己を守る為に生まれて来た子供たちを次々と飲み込んだ。

(これで私を追い落とすものなど一人もいない!)

そうほくそ笑んでいたのだが、その裏で妻のレアは一人の少年を育てていた。
その少年こそ後に神々の王となるゼウスである。
レアは末の息子であるゼウスをクロノスに差し出す際に一計を案じた。赤子であるゼウスとよく似た大きさの岩を産着に包んで身代わりとして差し出したのだ。

やがてゼウスは成長し、遂に行動に出る。父・クロノスに飲み込まれた兄弟姉妹を救いだしたのだ。それに激怒したクロノスはゼウスとそれに従うものたちを一人残らず葬り去る為に戦いを仕掛ける。
これに対してゼウスも応戦し、兄弟姉妹たちと力を合わせ立ち向かうのであった。

戦いは熾烈を極めた。ティターン神族に押されるゼウスたち。それを見かねたのはガイアだった。
ガイアは神の王となったクロノスの変貌に失望していたのだ。それがウラヌスの予言のせいであったにしても許しがたいと思い、ゼウスたちにキュクロプスやヘカトンケイルといったタルタロスに幽閉されたものたちの存在を教える。
キュクロプスは優れた鍛冶師であった。彼はゼウスに『神の雷』を、ポセイドンに『三叉の戟』を、そしてハデスには『姿を消せる兜』をそれぞれ授ける。
ヘカトンケイルは千の腕を持つ異形の巨神である。これを生かし、無数の岩石を投げつけ一人で多くの敵を倒した。
彼らの加勢により、ゼウスたちは徐々に盛り返し、ついに勝利したのであった。
ゼウスはクロノスを討ち取り、残ったティターン神族をタルタロスに幽閉する。
自らはオリンポス山の頂上にパルテノン神殿を築き、そこを世界の中心と定める。そして、新たな時代の始まりを宣言したのであった。
これにより、世界は多くの神により治められることになったのである。

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