2 / 5
離婚
しおりを挟む
しかも、鍵の付いている箱の中にいれ、本棚の奥に隠してあるなんて……。
流れる涙を拭きとって、それでも溢れてくるのを止められず、気付いた時にはハンカチがぐっしょりと濡れています。
そこでようやく、頭の中がすっきりして落ち着き始めました。
考えてみれば、まだ夫のフラミーが浮気したと決まった訳ではありません。
私と夫婦の契りを迎えようと、準備をしていただけという可能性もあります。
取り敢えず、私は箱を本棚に入れて本を戻し、何も見てなかったかの様に振る舞おうと思いました。
「……マッケナ、今日はもう休むわ。夫には風邪気味だと伝えて下さる?」
「分かりました、奥様。……旦那様には本当に困らされますね」
フラミーが帰ってくるより先に寝ようとするのは初めての事で、もしかしたら夫に怒られるかもしれません。
それでも、今日は本当に何もする気がありませんでした。
今日、今日だけは休んで、明日からは良き妻として頑張ろう。
だから今は布団に入り、眠って今日の事を忘れてしまおう、そう思いながら私は自分の部屋に入りました。
けれど……薄暗い朝日が私の顔を照らし、目が覚め起きても頭の中には昨日の事が残ったままです。
それでも妻としての務めを忘れる訳にはいかず、私は朝食を作ろうと身体を奮い立たせます。
「大丈夫……フラミーは何時も教会の教えを話してたのよ。浮気なんかする訳ないじゃない」
そう呟きながら自分の部屋の扉を開け、朝食を作ろうと台所へ行くと、既にマッケナが私の代わりに朝食を作っていました。
「おはようございます、奥様。今日は私が朝食を作りますので、奥様は椅子で待っていて大丈夫ですよ」
「それは有難いけど……手伝わなくていいの? 三人分の朝食を作る事になるわよ」
「構いません。奥様は昨日の事でお疲れでしょうし……旦那様は既に教会の孤児院に出発しましたから」
「……呆れるわね。それで、フラミーは何時に帰って来るのかしら?」
「分かりません。旦那様はとても大事な用事があるから、三日は帰って来れないと言っていました」
……呆れて、夫のフラミーに対する怒りすら湧いてきませんでした。
昨日、フラミーには風邪気味だとマッケナを通して伝えたのに、私に対する心配よりも孤児院での用事の方が大事だなんて……。
「それと奥様、もう一つ大事な話があるのですが……いえ、何でもありません。まずは朝食にしましょう」
「……言って、聞くから」
侍女のマッケナは気遣って話を中断しようとしたみたいですが、私は覚悟を決めました。
それに、私にはフラミーが何をしたのか聞く義務があります。
「……実は、旦那様が部屋を出てから気になって、私はあの箱を開けて見たのです。そうしたら、中に何も入ってませんでした」
「……浮気、してたのね。馬鹿みたいだわ、あんな人の為に尽くし頑張っていたなんて」
不思議と、涙は出ませんでした。
きっと昨日の夜のうちに涙を流し終えたせいで、枯れ切ったのかもしれません。
夫のフラミーがバニンスカ家の為に政略結婚を申し出て、私は下の名前を夫の為に変えたのに、その結果が浮気ですか。
結局、これからフラミーが私に振り向く事は無いのでしょう。
「決めたわ。私、フラミーと離婚する。こんな生活はもう耐えられないわ」
「……申し訳ございません、奥様。長い間の結婚生活で支えてあげる事が出来ず、こんな結果に終わらせてしまうなんて……」
「いいのよ。それに、マッケナはよく頑張ってくれたわ」
元々、実家の侍女として働いていたマッケナは、私がフラミーと結婚する時について来てくれた大切な人です。
住み慣れた実家を離れ、新しい場所に行くから無理について来なくていいと言っても、彼女の意志は硬かったです。
「エスリン様は家が貧乏で困っていても、私を首にしたりせずに温かい部屋を下さいました。その恩返しがしたいのです」
そう言ってまで私について来てくれ、今日も私の為に朝ご飯を代わりに作ってくれている彼女です。
感謝すれども、文句なんて一つもありません。
「けど……困ったわね。この国の法律では理由もないのに離婚は出来ないし、浮気の証拠は空になった箱だけ。
これでは、浮気を理由に離婚なんて出来ないわ」
「奥様、それなら私が証言しますわ。奥様は夜遅くまで夫の帰りを待つような人なのに、旦那様は何の説明もせずに家を何日も開ける人だと」
「それは有難いわ。他には……旦那様が何処で、誰と浮気をしているのかも調べないといけないわね」
考えてみれば、夫が教会の孤児院で浮気をしているのか、嘘を吐いて別の場所で浮気をしているのか、それすらも分かりません。
浮気している現場を突き止めてやれば、離婚だってその場で認められる筈です。
「まずは教会に行って、婚姻を担当している神父さんに話をしに行かないと行けないわ」
流れる涙を拭きとって、それでも溢れてくるのを止められず、気付いた時にはハンカチがぐっしょりと濡れています。
そこでようやく、頭の中がすっきりして落ち着き始めました。
考えてみれば、まだ夫のフラミーが浮気したと決まった訳ではありません。
私と夫婦の契りを迎えようと、準備をしていただけという可能性もあります。
取り敢えず、私は箱を本棚に入れて本を戻し、何も見てなかったかの様に振る舞おうと思いました。
「……マッケナ、今日はもう休むわ。夫には風邪気味だと伝えて下さる?」
「分かりました、奥様。……旦那様には本当に困らされますね」
フラミーが帰ってくるより先に寝ようとするのは初めての事で、もしかしたら夫に怒られるかもしれません。
それでも、今日は本当に何もする気がありませんでした。
今日、今日だけは休んで、明日からは良き妻として頑張ろう。
だから今は布団に入り、眠って今日の事を忘れてしまおう、そう思いながら私は自分の部屋に入りました。
けれど……薄暗い朝日が私の顔を照らし、目が覚め起きても頭の中には昨日の事が残ったままです。
それでも妻としての務めを忘れる訳にはいかず、私は朝食を作ろうと身体を奮い立たせます。
「大丈夫……フラミーは何時も教会の教えを話してたのよ。浮気なんかする訳ないじゃない」
そう呟きながら自分の部屋の扉を開け、朝食を作ろうと台所へ行くと、既にマッケナが私の代わりに朝食を作っていました。
「おはようございます、奥様。今日は私が朝食を作りますので、奥様は椅子で待っていて大丈夫ですよ」
「それは有難いけど……手伝わなくていいの? 三人分の朝食を作る事になるわよ」
「構いません。奥様は昨日の事でお疲れでしょうし……旦那様は既に教会の孤児院に出発しましたから」
「……呆れるわね。それで、フラミーは何時に帰って来るのかしら?」
「分かりません。旦那様はとても大事な用事があるから、三日は帰って来れないと言っていました」
……呆れて、夫のフラミーに対する怒りすら湧いてきませんでした。
昨日、フラミーには風邪気味だとマッケナを通して伝えたのに、私に対する心配よりも孤児院での用事の方が大事だなんて……。
「それと奥様、もう一つ大事な話があるのですが……いえ、何でもありません。まずは朝食にしましょう」
「……言って、聞くから」
侍女のマッケナは気遣って話を中断しようとしたみたいですが、私は覚悟を決めました。
それに、私にはフラミーが何をしたのか聞く義務があります。
「……実は、旦那様が部屋を出てから気になって、私はあの箱を開けて見たのです。そうしたら、中に何も入ってませんでした」
「……浮気、してたのね。馬鹿みたいだわ、あんな人の為に尽くし頑張っていたなんて」
不思議と、涙は出ませんでした。
きっと昨日の夜のうちに涙を流し終えたせいで、枯れ切ったのかもしれません。
夫のフラミーがバニンスカ家の為に政略結婚を申し出て、私は下の名前を夫の為に変えたのに、その結果が浮気ですか。
結局、これからフラミーが私に振り向く事は無いのでしょう。
「決めたわ。私、フラミーと離婚する。こんな生活はもう耐えられないわ」
「……申し訳ございません、奥様。長い間の結婚生活で支えてあげる事が出来ず、こんな結果に終わらせてしまうなんて……」
「いいのよ。それに、マッケナはよく頑張ってくれたわ」
元々、実家の侍女として働いていたマッケナは、私がフラミーと結婚する時について来てくれた大切な人です。
住み慣れた実家を離れ、新しい場所に行くから無理について来なくていいと言っても、彼女の意志は硬かったです。
「エスリン様は家が貧乏で困っていても、私を首にしたりせずに温かい部屋を下さいました。その恩返しがしたいのです」
そう言ってまで私について来てくれ、今日も私の為に朝ご飯を代わりに作ってくれている彼女です。
感謝すれども、文句なんて一つもありません。
「けど……困ったわね。この国の法律では理由もないのに離婚は出来ないし、浮気の証拠は空になった箱だけ。
これでは、浮気を理由に離婚なんて出来ないわ」
「奥様、それなら私が証言しますわ。奥様は夜遅くまで夫の帰りを待つような人なのに、旦那様は何の説明もせずに家を何日も開ける人だと」
「それは有難いわ。他には……旦那様が何処で、誰と浮気をしているのかも調べないといけないわね」
考えてみれば、夫が教会の孤児院で浮気をしているのか、嘘を吐いて別の場所で浮気をしているのか、それすらも分かりません。
浮気している現場を突き止めてやれば、離婚だってその場で認められる筈です。
「まずは教会に行って、婚姻を担当している神父さんに話をしに行かないと行けないわ」
13
あなたにおすすめの小説
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
いざ離婚!と思ったらそもそも結婚していなかったですって!
ゆるぽ
恋愛
3年間夫婦としての実態が無ければ離婚できる国でようやく離婚できることになったフランシア。離婚手続きのために教会を訪れたところ、婚姻届けが提出されていなかったことを知る。そもそも結婚していなかったことで最低だった夫に復讐できることがわかって…/短めでさくっと読めるざまぁ物を目指してみました。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。
だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。
失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。
どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。
「悪女に、遠慮はいらない」
そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。
「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。
王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」
愛も、誇りも奪われたなら──
今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。
裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス!
⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。
わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。
愛人のいる夫を捨てました。せいぜい性悪女と破滅してください。私は王太子妃になります。
Hibah
恋愛
カリーナは夫フィリップを支え、名ばかり貴族から大貴族へ押し上げた。苦難を乗り越えてきた夫婦だったが、フィリップはある日愛人リーゼを連れてくる。リーゼは平民出身の性悪女で、カリーナのことを”おばさん”と呼んだ。一緒に住むのは無理だと感じたカリーナは、家を出ていく。フィリップはカリーナの支えを失い、再び没落への道を歩む。一方でカリーナには、王太子妃になる話が舞い降りるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる