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仮面の男とロザーラは、以前から図書館で本を探し歩く仲間だ。
仕事の為に面白い本が読みたいと言う彼に、彼女が適切な物を探していたのだ。
仕事が何なのが気になっていたのだけど、まさか宮廷道化師なんて。
道理で自分がしてる仕事の内容を明かさなかった訳だわ。
宮廷道化師は本来、仕事以外で王族や貴族と話してはいけないし。
「……そうですか、優しいんですね。貴方みたいな人が婚約相手だったら良かったのに」
「でも、本当にそれだけかい? 婚約破棄なんてありふれた話だけど、結婚式が間近なのに断られるのは聞いた事がないし」
「……えぇ、その通りです。あの人は私が相応しくないと理由付けする為に、図書館で本ばかり読んでると言ってきましたの」
結婚式を間近にして、ロザーラに対する学勉の量も減っていった。
自由に使える時間も増え、暇を持て余した彼女は次第に王立図書館へ通う回数が多くなっていく。
……けど、まさかステリックがまともに勉強もせず、本ばかり読んでると嘘を吐いてくるとは思わなかったわ。
図書館の職員も彼に同意し、私が昔から本ばかり読んでると嘘を吐くなんて……。
「学勉を疎かにして、遊んでばかりの令嬢だと。図書館の職員にまで嘘を吐かれまして。彼は、その事を周りにバラされたくなければ、婚約なんて元からなかった事にしろと言ってきたのです」
「……酷いな。ロザーラ、その話は僕が何とかするよ。王子様にも話を通してみるから安心して」
「もう、いいのです。……疲れました。この年で第三令嬢の相手を探すのも大変ですし」
「そんな事はないと思うけどな……」
それから暫くロザーラと仮面の男との間に沈黙が訪れた後、男は急に声を上げる。
「ねぇ、そのステリックって奴の事、チョイと教えてくれないかな? どうにも話を聞いてるだけでムカついてね。僕が何とかするよ」
「いえ、もう終わった話ですから」
「君が良くても僕が駄目でさ。大丈夫、君に迷惑はかけないよ。僕はこう見ても色々な人に手が回るからね」
「……宮廷道化師ですのに?」
「あー……今の王子様は優しいから、何とか見逃して貰えてるんだよ。コレ、秘密ね」
「そうですか……でしたら、なるべく事を荒げない様にお願いしますね」
「……なるべく、ね」
ステリックの事を話し、最終的には彼に対する愚痴になりながらも、仮面の男はジッと静かに聞いていた。
貿易商を営む公爵家の第一子息、傲慢で遊び惚けてばかりのドラ息子、家柄だけで生きているロクデナシ。
……何だか、話してる間にスッキリとしたわ。
婚約破棄は悲しいけど、あんな人とこれからの人生を過ごさなくてもいいと思えばアリなのかもしれないわね。
仕事の為に面白い本が読みたいと言う彼に、彼女が適切な物を探していたのだ。
仕事が何なのが気になっていたのだけど、まさか宮廷道化師なんて。
道理で自分がしてる仕事の内容を明かさなかった訳だわ。
宮廷道化師は本来、仕事以外で王族や貴族と話してはいけないし。
「……そうですか、優しいんですね。貴方みたいな人が婚約相手だったら良かったのに」
「でも、本当にそれだけかい? 婚約破棄なんてありふれた話だけど、結婚式が間近なのに断られるのは聞いた事がないし」
「……えぇ、その通りです。あの人は私が相応しくないと理由付けする為に、図書館で本ばかり読んでると言ってきましたの」
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「……酷いな。ロザーラ、その話は僕が何とかするよ。王子様にも話を通してみるから安心して」
「もう、いいのです。……疲れました。この年で第三令嬢の相手を探すのも大変ですし」
「そんな事はないと思うけどな……」
それから暫くロザーラと仮面の男との間に沈黙が訪れた後、男は急に声を上げる。
「ねぇ、そのステリックって奴の事、チョイと教えてくれないかな? どうにも話を聞いてるだけでムカついてね。僕が何とかするよ」
「いえ、もう終わった話ですから」
「君が良くても僕が駄目でさ。大丈夫、君に迷惑はかけないよ。僕はこう見ても色々な人に手が回るからね」
「……宮廷道化師ですのに?」
「あー……今の王子様は優しいから、何とか見逃して貰えてるんだよ。コレ、秘密ね」
「そうですか……でしたら、なるべく事を荒げない様にお願いしますね」
「……なるべく、ね」
ステリックの事を話し、最終的には彼に対する愚痴になりながらも、仮面の男はジッと静かに聞いていた。
貿易商を営む公爵家の第一子息、傲慢で遊び惚けてばかりのドラ息子、家柄だけで生きているロクデナシ。
……何だか、話してる間にスッキリとしたわ。
婚約破棄は悲しいけど、あんな人とこれからの人生を過ごさなくてもいいと思えばアリなのかもしれないわね。
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