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「……それでこの前、異国から来た『希望門』という本が面白くて。新しい世界に行けるという門から始まる話なんですけど、その世界というのが著作者が実際に旅行して見てきたものを反映したものなんですよ」
「へぇ、例えば?」
「この国とか! 私達の国を全く知らない人が、どんな国か見てきて書いているのです。私も知らない自国の風習や文化の話が出てきたりするんですよ」
「面白そうだね。僕も王子として色々な事を学んできたけど、未だに知らない事も多いしな。ありがとう、今度読んでみるよ」
「もしよろしければ今度、感想を聞かせて下さいね。仮面の宮廷道化師としてなら私が会う事も許されますから」
「……そうだな。おっと、そろそろ時間だ」
鐘の音が鳴り、もう少しで次のダンスが始まりますよと告げる。
マルカラン王子はロザーラの手を握り、庭園から舞踏館の会場まで戻った。
一瞬、王子様から差し出される手を握る事に躊躇したロザーラだが、すぐに思い返して手を繋いだ。
これで最後だもの、今ぐらいは楽しんでも許される筈だわ。
二人が会場に戻ってすぐ、二人を取り囲むようにざわめきが沸き起こる。
「あの宝石、やはり彼女が婚約者なのか?」
「噂によりば、ドレスに縫い付けられているオッカムは王子から贈られたらしいぞ」
「王子様から侯爵家へ、愛の証を贈られるなんて。羨ましいわ」
貴族達の羨ましがる声の中、一人だけイライラとした目で王子を見つめる男がいた。
ロザーラを陥れてまで婚約破棄したステリックである。
彼はドラ息子であるのを理由にロザーラとの婚約を親から押し付けられ、自ら婚約相手を陥れて漸く婚約破棄が出来たのに、その相手が王子様と仲良く手を繋いでいるのを見てしまった。
自分より上の相手と出会えている事を妬み睨むステリックだが、ロザーラはそんな彼を見てスッキリしていた。
これまで彼の為に今までの人生を捧げてきたのに、嘘を吐いてまで婚約破棄してきた事を後悔するといいわ。
「さっ、踊りましょうか。王子様、ステリックも見ているわ」
「どれどれ? ……あぁ、そこか。なら、見せつけてやらないとな」
王子様と繋いだ手でリードされ、音楽に合わせて自然と足が踊る。
会場にいる人が見てる事しか出来ない、二人だけの世界。
ステリックにダンスを見せつけるという当初の目的も忘れ、ロザーラは心の底から王子様と踊れる事を楽しんでいた。
……不思議ね、もう王子様しか見えないわ。本当なら私の目にすら入らない人の筈なのに。
「へぇ、例えば?」
「この国とか! 私達の国を全く知らない人が、どんな国か見てきて書いているのです。私も知らない自国の風習や文化の話が出てきたりするんですよ」
「面白そうだね。僕も王子として色々な事を学んできたけど、未だに知らない事も多いしな。ありがとう、今度読んでみるよ」
「もしよろしければ今度、感想を聞かせて下さいね。仮面の宮廷道化師としてなら私が会う事も許されますから」
「……そうだな。おっと、そろそろ時間だ」
鐘の音が鳴り、もう少しで次のダンスが始まりますよと告げる。
マルカラン王子はロザーラの手を握り、庭園から舞踏館の会場まで戻った。
一瞬、王子様から差し出される手を握る事に躊躇したロザーラだが、すぐに思い返して手を繋いだ。
これで最後だもの、今ぐらいは楽しんでも許される筈だわ。
二人が会場に戻ってすぐ、二人を取り囲むようにざわめきが沸き起こる。
「あの宝石、やはり彼女が婚約者なのか?」
「噂によりば、ドレスに縫い付けられているオッカムは王子から贈られたらしいぞ」
「王子様から侯爵家へ、愛の証を贈られるなんて。羨ましいわ」
貴族達の羨ましがる声の中、一人だけイライラとした目で王子を見つめる男がいた。
ロザーラを陥れてまで婚約破棄したステリックである。
彼はドラ息子であるのを理由にロザーラとの婚約を親から押し付けられ、自ら婚約相手を陥れて漸く婚約破棄が出来たのに、その相手が王子様と仲良く手を繋いでいるのを見てしまった。
自分より上の相手と出会えている事を妬み睨むステリックだが、ロザーラはそんな彼を見てスッキリしていた。
これまで彼の為に今までの人生を捧げてきたのに、嘘を吐いてまで婚約破棄してきた事を後悔するといいわ。
「さっ、踊りましょうか。王子様、ステリックも見ているわ」
「どれどれ? ……あぁ、そこか。なら、見せつけてやらないとな」
王子様と繋いだ手でリードされ、音楽に合わせて自然と足が踊る。
会場にいる人が見てる事しか出来ない、二人だけの世界。
ステリックにダンスを見せつけるという当初の目的も忘れ、ロザーラは心の底から王子様と踊れる事を楽しんでいた。
……不思議ね、もう王子様しか見えないわ。本当なら私の目にすら入らない人の筈なのに。
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