通学路の電柱に、幽霊である彼女は潜む

アイララ

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もう電柱は見たくない

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冬になると夜が早くなる。学校で居残りをしていると、その事が身をもって実感できる。

こんな事になるならキチンと英単語の勉強をしてからテストに挑めばよかったが、もう遅い。

兎に角、今は大量にある英単語の書き取りを終わらせないと。

書いて書いて、時々は机の中に隠してあるスマホを見ながら休息して、また再開する。

ようやく終わったと思った時、外は既に夜となっていた。

書き取り終わった紙を職員室にいる先生に提出し、説教してきた先生を無視してサッサと帰る。

既に書き取りで疲れたのに説教してくるなんて、そんなんだからサボる生徒が出てくるんだよ。

まぁいいや。今は早く家に帰ってご飯を食べる事の方が大事。それに帰るのが遅くなりすぎて心配かけるのも良くないしね。

学校の門を出てすぐ、英単語の勉強をサボった事を後悔した。外は先が見えないぐらい真っ暗闇だから。

今の時代、スマホにはライトがある。通学路が暗ければ照らせばいいじゃないかと思う人もいるかもしれない。

その考え自体は正しいだろう。実際、帰り道が暗いのは大した事じゃない。

問題なのは、僕の帰り道である通学路の電柱に幽霊が出ると聞いたから。

学校で聞いた噂話。夜道を一人で歩いていると、電柱に寄りかかっている女の人が『私の事、知ってる?』と聞いてくるそうだ。

知らないと言って通り過ぎれば後ろから刺され、知ってると言っても正確な名前を言わないと同じ結果に終わる。

そんな噂話を聞いた時は笑い飛ばしていた。だって、幽霊なんて科学的じゃないし絶対にいないと思っているから。

今は違う。頭の中でいくら考えても、目の前の暗闇からは恐怖しか生まれない。つくづく、思考と感情は違うんだと思い知らされた。

それでも帰るのがこれ以上、遅くなっては母に迷惑が掛かる。僕はスマホのライトを点けて早歩きで歩き出す。

夜道を照らす僕のライトは思ったよりも頼りなく、時々、小石や段差に転びそうになる。

おまけにライトの光に目が慣れて、逆に夜道は見にくくなる始末。気付けば僕は早歩きをやめ、慎重な足取りで僅かに照らせた道を歩いている。

転んで怪我したくないという気持ちと、暗闇が引き起こす恐怖心。それが僕の視野をライトで照らす範囲に狭めている。

それでも何とか歩き続け、家までの道のりが約半分になった時、照らした先に電柱が見えた。

誰かの足元が一緒に見える状態で。
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