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囚われの聖女は村の為に頑張りたい!
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檻の中にいる小鳥と言えば、当然、私の事だろう。事情があって、冒険者ギルドから出られない私は。
田舎の冒険者ギルド唯一の聖女として、私は今日も冒険者達に回復魔法を掛けている。
別に好きで掛けてる訳じゃない。私の故郷である村の為、仕方なく回復役を請け負ってるだけ。
その理由は回復役を引き受けるなら、村の魔物退治をギルドが受けてくれるから。
だから村にある教会での回復師を辞めてまで、この田舎の冒険者ギルドで回復魔法を掛けている。
勿論、その事を私は納得しているわけではない。だけどそれが村の為になるし、何より村の人は私の事情を理解してる。
村で唯一、回復魔法が使える聖女の私が居なくなる。そんな事を気にせず、見知らぬ所に行く私を心配してくれた。
だからこそ、今日も私は頑張れる。例えこれから先ずっと、ギルドの回復役として生きるとしても。
~~~~~
何時もの様に、怪我した冒険者が私の元へやって来る。腹に大穴を開け、毒液を全身に浴びた姿で。
『、、、頼む』その表情は悲壮感で溢れているが、このぐらい大した傷じゃない。
私がいつも作ってる回復と毒消しのポーションがあれば、すぐに治る程度の傷。
きっと、ポーションの代金さえケチって持ち運ぶのを辞めたのだろう。全く、これだから冒険者は。
「はいはい。回復魔法を掛けますので、装備を脱いで下さいね」そう言ったけど、この傷なら一人で脱ぐのは無理そうね。
仕方ないから私も手伝ってあげるわね。それに彼、今まで見た事ないぐらいイケメンだし。
一生懸命に装備を外しながら見える引き締まった筋肉に、絹の様に滑らかな白い肌。
そして短く揺れる金髪に、全てを纏める整った顔。まぁ、性格は残念そうだけど。
そんな事を考えながら脱がせた後、体力の限界が来たのか彼はベットに倒れこんだ。
仕方ないわね。これ以上は流石に可哀想だし、回復させてあげますか。
「それじゃあ、治療を開始しますわ」彼の身体に触れて魔力を流し、毒を消して肉体を回復される。
そうしたら身体についてる毒液を念入りに拭き取り終わり。後はしばらくベットで休ませてあげれば大丈夫よね。
さて、休んでいる暇は無さそうね。『サフィル、次も頼むよ』とギルドの人が言っているし。
~~~~~
その日、私は死を覚悟した。
帝国からの依頼で、魔物が増えたと噂のスナフィランという地域を調査していた私は、予想もしない魔物に出会った。
緑色の人型で、凶暴な魔物。人間の大人一人半はある巨体。そう、オーガだ。
それも二、三匹の群れじゃない。二十匹のハイオーガを含めた群れだ。そんな魔物があの時、目の前にいた。
普通ならなんとか倒せる相手だ。きちんと回復等のポーションを用意しておけば、苦戦はするが負ける事は無い。
だが、私はここまでの長旅で魔物と戦う羽目になり、そのせいで手持ちのポーションはかなり少なくなっている。
一旦、退却しようとも考えたが、相手がそれを許すはずもない。その結果、大怪我と引き換えでオーガの群れに辛勝した。
それから私は僅かに残ったポーションで回復させながらギルドに辿り着き、息も絶え絶えに回復を頼んだ。
驚いたのは、回復料金が無料と言われた事だ。ギルドのサービスで割引される事はあるが、無料はあり得ない。
それなら回復師の質が悪いと考えたが、気が付けば私は傷一つなく回復した状態でベットにいた。
並の回復師には出来ない芸当だ。きっと彼女は聖女に違いない。毎日を人々の治療に捧げると誓った聖女に。
きっと、いや、確実に彼女がいなければ私は死んでいただろう。何かお礼をしなければな。
それにしても、彼女に対するこのギルドの扱いは酷すぎる。一朝一夕では身につかない回復魔法の能力に一銭も払わないとは。
骨まで折れた私の身体を治すほどの回復魔法は、壮絶な修行をしないと身につかない筈。
その技術をタダでこき使うなんて、彼女が可哀想すぎる。それに本来、ギルドがそういう仕事をタダでさせるのは犯罪だ。
恐らく、本家の監視が届かない田舎のギルドだからバレないと思っているのだろう。
だが、そうはさせない。彼女がしてきたであろう長年の努力は、絶対に報わせるべきだ。
その為にもまずは、彼女にギルドの事情を聞かなければな。
~~~~~
さっき治療したイケメンが、冒険者には珍しくお礼をしたいと言ってきた。
何時もなら回復してもらって終わりなのに。もしかして彼、意外といい人なのかも。
まぁ、ポーションをケチって大怪我する人だから、絶対にとは言えないけど。
『助けて下さってありがとうございます!貴方は命の恩人です!』、、、怪我を治しただけなのに大げさすぎるわね。
「いいのよ。それより今度からはちゃんとポーションをケチらない事ね。そうじゃないと冒険中に死んでしまうわよ」
『えぇ、誠にその通りで。それより貴方、どうして無料で治療をしているのですか?』
「事情があるのよ。ギルドでタダ働きしないと、村の救助を断られるという事情がね」
田舎の冒険者ギルド唯一の聖女として、私は今日も冒険者達に回復魔法を掛けている。
別に好きで掛けてる訳じゃない。私の故郷である村の為、仕方なく回復役を請け負ってるだけ。
その理由は回復役を引き受けるなら、村の魔物退治をギルドが受けてくれるから。
だから村にある教会での回復師を辞めてまで、この田舎の冒険者ギルドで回復魔法を掛けている。
勿論、その事を私は納得しているわけではない。だけどそれが村の為になるし、何より村の人は私の事情を理解してる。
村で唯一、回復魔法が使える聖女の私が居なくなる。そんな事を気にせず、見知らぬ所に行く私を心配してくれた。
だからこそ、今日も私は頑張れる。例えこれから先ずっと、ギルドの回復役として生きるとしても。
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何時もの様に、怪我した冒険者が私の元へやって来る。腹に大穴を開け、毒液を全身に浴びた姿で。
『、、、頼む』その表情は悲壮感で溢れているが、このぐらい大した傷じゃない。
私がいつも作ってる回復と毒消しのポーションがあれば、すぐに治る程度の傷。
きっと、ポーションの代金さえケチって持ち運ぶのを辞めたのだろう。全く、これだから冒険者は。
「はいはい。回復魔法を掛けますので、装備を脱いで下さいね」そう言ったけど、この傷なら一人で脱ぐのは無理そうね。
仕方ないから私も手伝ってあげるわね。それに彼、今まで見た事ないぐらいイケメンだし。
一生懸命に装備を外しながら見える引き締まった筋肉に、絹の様に滑らかな白い肌。
そして短く揺れる金髪に、全てを纏める整った顔。まぁ、性格は残念そうだけど。
そんな事を考えながら脱がせた後、体力の限界が来たのか彼はベットに倒れこんだ。
仕方ないわね。これ以上は流石に可哀想だし、回復させてあげますか。
「それじゃあ、治療を開始しますわ」彼の身体に触れて魔力を流し、毒を消して肉体を回復される。
そうしたら身体についてる毒液を念入りに拭き取り終わり。後はしばらくベットで休ませてあげれば大丈夫よね。
さて、休んでいる暇は無さそうね。『サフィル、次も頼むよ』とギルドの人が言っているし。
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その日、私は死を覚悟した。
帝国からの依頼で、魔物が増えたと噂のスナフィランという地域を調査していた私は、予想もしない魔物に出会った。
緑色の人型で、凶暴な魔物。人間の大人一人半はある巨体。そう、オーガだ。
それも二、三匹の群れじゃない。二十匹のハイオーガを含めた群れだ。そんな魔物があの時、目の前にいた。
普通ならなんとか倒せる相手だ。きちんと回復等のポーションを用意しておけば、苦戦はするが負ける事は無い。
だが、私はここまでの長旅で魔物と戦う羽目になり、そのせいで手持ちのポーションはかなり少なくなっている。
一旦、退却しようとも考えたが、相手がそれを許すはずもない。その結果、大怪我と引き換えでオーガの群れに辛勝した。
それから私は僅かに残ったポーションで回復させながらギルドに辿り着き、息も絶え絶えに回復を頼んだ。
驚いたのは、回復料金が無料と言われた事だ。ギルドのサービスで割引される事はあるが、無料はあり得ない。
それなら回復師の質が悪いと考えたが、気が付けば私は傷一つなく回復した状態でベットにいた。
並の回復師には出来ない芸当だ。きっと彼女は聖女に違いない。毎日を人々の治療に捧げると誓った聖女に。
きっと、いや、確実に彼女がいなければ私は死んでいただろう。何かお礼をしなければな。
それにしても、彼女に対するこのギルドの扱いは酷すぎる。一朝一夕では身につかない回復魔法の能力に一銭も払わないとは。
骨まで折れた私の身体を治すほどの回復魔法は、壮絶な修行をしないと身につかない筈。
その技術をタダでこき使うなんて、彼女が可哀想すぎる。それに本来、ギルドがそういう仕事をタダでさせるのは犯罪だ。
恐らく、本家の監視が届かない田舎のギルドだからバレないと思っているのだろう。
だが、そうはさせない。彼女がしてきたであろう長年の努力は、絶対に報わせるべきだ。
その為にもまずは、彼女にギルドの事情を聞かなければな。
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さっき治療したイケメンが、冒険者には珍しくお礼をしたいと言ってきた。
何時もなら回復してもらって終わりなのに。もしかして彼、意外といい人なのかも。
まぁ、ポーションをケチって大怪我する人だから、絶対にとは言えないけど。
『助けて下さってありがとうございます!貴方は命の恩人です!』、、、怪我を治しただけなのに大げさすぎるわね。
「いいのよ。それより今度からはちゃんとポーションをケチらない事ね。そうじゃないと冒険中に死んでしまうわよ」
『えぇ、誠にその通りで。それより貴方、どうして無料で治療をしているのですか?』
「事情があるのよ。ギルドでタダ働きしないと、村の救助を断られるという事情がね」
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