912 / 1,557
第6章 兼南の戦い
有利になる戦況
しおりを挟む
「さてと、腹も膨れたしちょっと仕事をしようかねえ 」
そう言うと嵯峨は脇に置いてあった通信端末を開いた。正面に展開される画像。まずそこには地図が映し出された。クリスも自然とそれを覗き込んでいた。
「合衆国陸軍が移動していますが……この方向は? 」
「三日前に共和軍から香麗さんが奪い取った湖南川沿岸地域ですね。まあ順当な作戦ですね。この地域を押さえれば東モスレムへの街道が開ける。当然アメちゃんとしても面白くは無いことでしょうからこの地域の確保は最優先事項というわけですか 」
嵯峨はそう言うと後方の補給部隊の動きをあらあわすグラフを展開させた。
「この情報も大須賀さんの絡みですか? 」
「まあ、大須賀は元々楠木の部下ですからね。大須賀経由の話もありますが、それ以外に楠木が築いたネットワークだとかいろんな情報をまとめてあるんですわ。まあ俺にも一応は遼南帝国の末裔としてのコネもあるもんで 」
そう言うと嵯峨は携帯端末をいじりながらタバコを取り出し火をつけた。
「なるほどねえ。東和の支援物資の共和国軍への移送が停止されたか。足元がお留守になってるんじゃないですかエスコバル大佐は 」
「バルガス・エスコバルですか? 確か共和国軍西部方面軍参謀長か方面軍司令か…… 」
クリスは携帯端末上の画面に映された画像を見つめていた。遼南共和国ゴンザレス大統領の腹心中の腹心であり、その残忍な作戦行動から王党派や人民軍を恐れさせた非情の指揮官。
「そして非正規戦闘部隊の通称バレンシア機関のトップでもある男ですな 」
嵯峨の言葉は衝撃的だった。バレンシア機関。実在さえ疑われているゴンザレス大統領の私兵。不穏分子の抹殺や外国人ジャーナリストの拉致などを行っているとされる特殊部隊である。その過激な活動に、資源輸出条約の締結のために訪問したヨーロッパ代表使節団が各方面からの圧力に負けてその存在の確認を求めた時、彼等の面前でゴンザレス大統領は
『そのような機関はわが国には存在しない 』と明言した暗殺組織。
「あちらも本気。こちらも本気。まああれですな、根競べですよ 」
そう言うと嵯峨は味噌汁を飲み干した。
「やはりこちらの行動はある程度予測してますか 」
嵯峨は画面の共和軍の陣形を見てそう言うと皮肉めいた笑みを浮かべる。現在を表す地図には、彼の部隊の侵攻している廃村を示す星に向かい、エスコバル貴下の部隊が進撃を開始していた。
「やばいなあ 」
そう言ってタバコをもみ消す嵯峨。クリスはその規模が中隊規模であることを確認しながら不思議に思った。クリスが言葉を挟む前にすでに嵯峨はクリスの言葉を読んだように口を開いた。
「勝てないことは無いですよ。まあ、間違いなくうちの馬鹿共が勝つでしょう。でもそこから先が問題なんだよね 」
またタバコに手を伸ばし火をつける。
「がら空きの拠点を取るのに消耗は避けたいという訳ですか 」
「まあね。それに部下が死ぬのは散々経験しましたが、どうにも慣れなくてね 」
嵯峨はそう言うと携帯端末を閉じた。クリスも立ち上がる。風が止み、高地独特の突く様な強い日差しが気になる。
「まあ、こっちはこれくらいにして援護に回りますか 」
そのままタバコをくわえて伸びをする嵯峨。彼は四式の陰に向かって歩き始めた。
「さすがに日差しは堪えるねえ、帽垂でもつけるかな 」
そんな言葉を言いながら準備が出来たクリスと共に四式のコックピットに乗り込んだ嵯峨。
「しかし、ここからだとかなり距離がありますよ。低空飛行で行くんですか? 」
「さすがにあれだけ派手にやったんだ、東和の戦闘機が警戒飛行しているでしょう。まあ少し時間は食いますが、ホバリングでもなんとか間に合うはずですから 」
そう言うとアイドリング状態だった四式のエンジンを本格始動させる。パルス推進機関の立てる甲高い振動音がクリスの耳を襲った。嵯峨はてきぱきとサバイバルキットを片付ける、コンロも風除けのアルミのついたても彼の手にかかれば瞬時に解体されてバックパックの中にきちんと入る大きさにまとまった。その几帳面に見える一連の作業にあの混沌と言う言葉を絵に書いたような嵯峨の執務室の有様は想像がつかない。
「こう言うのは軽いのが一番ですよ 」
サバイバルキットを手に嵯峨はかがみこむようなスタイルの四式の手のひらに登る。クリスもそれに続いてそのままコックピットに転がり込んだ。
「それじゃあ行きますか 」
クリスがシートベルトをしたのを確認すると嵯峨は加速をかけた。森が続く。針葉樹の巨木の森が。嵯峨は器用にその間を抜いて四式を進める。
「まるでこういう土地で戦うことを前提にして造られたみたいですね 」
「そうなんじゃないですか? 少なくとも四式はこういう使い方が向いていますよ 」
嵯峨は軽口を言いながらさらに機体を加速させた。
そう言うと嵯峨は脇に置いてあった通信端末を開いた。正面に展開される画像。まずそこには地図が映し出された。クリスも自然とそれを覗き込んでいた。
「合衆国陸軍が移動していますが……この方向は? 」
「三日前に共和軍から香麗さんが奪い取った湖南川沿岸地域ですね。まあ順当な作戦ですね。この地域を押さえれば東モスレムへの街道が開ける。当然アメちゃんとしても面白くは無いことでしょうからこの地域の確保は最優先事項というわけですか 」
嵯峨はそう言うと後方の補給部隊の動きをあらあわすグラフを展開させた。
「この情報も大須賀さんの絡みですか? 」
「まあ、大須賀は元々楠木の部下ですからね。大須賀経由の話もありますが、それ以外に楠木が築いたネットワークだとかいろんな情報をまとめてあるんですわ。まあ俺にも一応は遼南帝国の末裔としてのコネもあるもんで 」
そう言うと嵯峨は携帯端末をいじりながらタバコを取り出し火をつけた。
「なるほどねえ。東和の支援物資の共和国軍への移送が停止されたか。足元がお留守になってるんじゃないですかエスコバル大佐は 」
「バルガス・エスコバルですか? 確か共和国軍西部方面軍参謀長か方面軍司令か…… 」
クリスは携帯端末上の画面に映された画像を見つめていた。遼南共和国ゴンザレス大統領の腹心中の腹心であり、その残忍な作戦行動から王党派や人民軍を恐れさせた非情の指揮官。
「そして非正規戦闘部隊の通称バレンシア機関のトップでもある男ですな 」
嵯峨の言葉は衝撃的だった。バレンシア機関。実在さえ疑われているゴンザレス大統領の私兵。不穏分子の抹殺や外国人ジャーナリストの拉致などを行っているとされる特殊部隊である。その過激な活動に、資源輸出条約の締結のために訪問したヨーロッパ代表使節団が各方面からの圧力に負けてその存在の確認を求めた時、彼等の面前でゴンザレス大統領は
『そのような機関はわが国には存在しない 』と明言した暗殺組織。
「あちらも本気。こちらも本気。まああれですな、根競べですよ 」
そう言うと嵯峨は味噌汁を飲み干した。
「やはりこちらの行動はある程度予測してますか 」
嵯峨は画面の共和軍の陣形を見てそう言うと皮肉めいた笑みを浮かべる。現在を表す地図には、彼の部隊の侵攻している廃村を示す星に向かい、エスコバル貴下の部隊が進撃を開始していた。
「やばいなあ 」
そう言ってタバコをもみ消す嵯峨。クリスはその規模が中隊規模であることを確認しながら不思議に思った。クリスが言葉を挟む前にすでに嵯峨はクリスの言葉を読んだように口を開いた。
「勝てないことは無いですよ。まあ、間違いなくうちの馬鹿共が勝つでしょう。でもそこから先が問題なんだよね 」
またタバコに手を伸ばし火をつける。
「がら空きの拠点を取るのに消耗は避けたいという訳ですか 」
「まあね。それに部下が死ぬのは散々経験しましたが、どうにも慣れなくてね 」
嵯峨はそう言うと携帯端末を閉じた。クリスも立ち上がる。風が止み、高地独特の突く様な強い日差しが気になる。
「まあ、こっちはこれくらいにして援護に回りますか 」
そのままタバコをくわえて伸びをする嵯峨。彼は四式の陰に向かって歩き始めた。
「さすがに日差しは堪えるねえ、帽垂でもつけるかな 」
そんな言葉を言いながら準備が出来たクリスと共に四式のコックピットに乗り込んだ嵯峨。
「しかし、ここからだとかなり距離がありますよ。低空飛行で行くんですか? 」
「さすがにあれだけ派手にやったんだ、東和の戦闘機が警戒飛行しているでしょう。まあ少し時間は食いますが、ホバリングでもなんとか間に合うはずですから 」
そう言うとアイドリング状態だった四式のエンジンを本格始動させる。パルス推進機関の立てる甲高い振動音がクリスの耳を襲った。嵯峨はてきぱきとサバイバルキットを片付ける、コンロも風除けのアルミのついたても彼の手にかかれば瞬時に解体されてバックパックの中にきちんと入る大きさにまとまった。その几帳面に見える一連の作業にあの混沌と言う言葉を絵に書いたような嵯峨の執務室の有様は想像がつかない。
「こう言うのは軽いのが一番ですよ 」
サバイバルキットを手に嵯峨はかがみこむようなスタイルの四式の手のひらに登る。クリスもそれに続いてそのままコックピットに転がり込んだ。
「それじゃあ行きますか 」
クリスがシートベルトをしたのを確認すると嵯峨は加速をかけた。森が続く。針葉樹の巨木の森が。嵯峨は器用にその間を抜いて四式を進める。
「まるでこういう土地で戦うことを前提にして造られたみたいですね 」
「そうなんじゃないですか? 少なくとも四式はこういう使い方が向いていますよ 」
嵯峨は軽口を言いながらさらに機体を加速させた。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
時き継幻想フララジカ
日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。
なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。
銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。
時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。
【概要】
主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。
現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる