レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞

橋本 直

文字の大きさ
948 / 1,557
第13章 外交交渉

仇を狙う少女

しおりを挟む
「当然、あの二人は今回の民兵掃討戦のことを…… 」 

「シンの旦那は間抜けじゃないっすよ。おそらくライラは額から湯気でも出してるかも…… 」 

 嵯峨はそう言いながら開いたエレベータから降りようとしたが、パイロットスーツを着たライラは拳銃を突きつけながら嵯峨を押し倒した。

「おい! この卑怯者! 恥って言葉の意味! お前は知らないんじゃないのか! 」 

 怒鳴り込んできたライラを周りにいたゲリラ達が押しとどめる。

「ライラ! 止めろ! 」 

 ジェナンに羽交い絞めにされてようやくライラは静かになった。ゲリラ達は銃の安全装置を外している。静かにライラと嵯峨はにらみ合っていた。

「おい、ライラ。お前さんは勘違いしてるんじゃないのか? 」 

 嵯峨はライラの体当たりで落ちた帽子を拾いながら切り出した。

「なにがだ! 卑怯者! 」 

「卑怯? いいじゃねえの、それでも 」 

 嵯峨を取り巻いていたゲリラ達がそんな言葉に力の抜けたような表情をした。

「戦争はスポーツじゃねえ。人が殺しあうんだ 」 

 一言一言、嵯峨はいつもの冗談とはまるで違った真剣な表情でライラに語りかける。

「確かに戦争にもルールがある。各種の戦争法規については俺は一応博士号の論文書くときに勉強したからな。だがその法規には今回の俺の行動は全く抵触していない 」 

「そう言う問題か! 」 

「そう言う問題なのさ 」 

 嵯峨はそう言うとタバコを口にくわえる。

「俺は共和軍の基地司令には、難民の安全のために双方が全力を尽くすということを約束したわけだ。当然その障害になるものを俺が叩き潰すつもりだったわけだが……まああちらさんがどう言うつもりだったかなんてことは俺の知ったことじゃないよ 」 

「詭弁だ! 」 

 叫ぶライラを上目使いに見据えて、嵯峨は一言つぶやいた。

「そうだよ。詭弁だよ 」 

 その言葉にライラを抑えていたジェナンの腕が緩んだ。ライラはそのまま嵯峨の襟首をつかみあげる。

「だが、詭弁で何が悪い。戦争は殺し合いだ。詭弁の一つで命が救われるというなら俺はいくらだって詭弁を労するぜ 」 

 ライラの腕が緩んだ。だが、嵯峨はそれを振りほどこうとしない。

「お前の親父を殺したのも同じ論理だ。あいつは自分が利用されていることに気付かなかった。王族に生まれちまった人間は、いつだってそう言う状況に置かれることを考えなけりゃあならねえ。だがあいつにはそれが出来なかった 」 

「父上を愚弄するのか? 」 

 ライラの瞳に涙が浮かぶ。

「死人に鞭打つ趣味はねえよ。だが、お前も遼南王家に生まれたのならこれだけは覚えておけ。利用されるだけの王族ならいっそいないほうがいいんだってことをな 」 

 その言葉にライラはそのまま床に崩れ落ちた。嵯峨は振り向くことも無く、別所を連れて担架で次々と旧村役場の建物である病院に運ばれていく難民達へと足を向けた。

「なあ、落ち着いてくれ 」 

「どう落ち着けって言うのよ! 」 

 そうライラは宥めようとするジェナンの腕を振りほどき地面に泣き伏せた。周りで見ていたゲリラ達は彼らの英雄である嵯峨がいなくなると同時にこの少女への関心を失って散っていった。

「ライラさん。あなたは…… 」 

「つまらない慰めなら要らないわよ。あなたも父上の敵である地球人なんだから 」 

 そう言うとゆっくりと立ち上がるライラ。彼女は流れた涙を拭うとそのまま本部の外へと向かった。『地球人 』と言う言葉が憎しみとともにこの遼州星系では使われることが多いのはクリスも痛感していた。かつて鉄器を発明したばかりの動乱の遼州大陸に入植を開始してから、地球の大国の思惑に翻弄されてきた遼州の人々にとって最大限の敵意をあらわす言葉として使われてきた。

 肩を落としてジェナンに支えられて歩く少女もこの地に戦いを持ち込んだ憎むべき地球人として自分を見ている。その現実にクリスは打ちのめされていた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。 なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。 銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。 時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。 【概要】 主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。 現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

処理中です...