レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞

橋本 直

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第9章 銃とかなめと模擬戦と

かなめからの模擬戦の誘い

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「そうだ!模擬戦やるか?」

 不意に振り返ったかなめは誠にそう語りかけた。

「模擬戦?」

 誠は突然のかなめの申し出に困惑しながら彼女のたれ目を見下ろした。

「そうだ……そこの!」

 かなめはいいことを思いついたというように倉庫の掃除をしていたつなぎの整備班員に声をかけた。その無精ひげの目立つ整備班員はいかにもめんどくさそうにモップを置いてかなめに歩み寄ってきた。

「島田と中佐を呼んで来い!こいつとタイマン勝負をやる!」

「はっはい!」

 整備班員はかなめの勝手さを分かっているようで、そのまま急ぎ足でアサルト・モジュール倉庫を飛び出していった。

「隣にシミュレーターが置いてあるんだ。そこ行くぞ」

 かなめは足早に整備班員が消えていった扉の方へ向かった。

 誠は突然の出来事にあっけにとられながら、かなめに続いて倉庫の出口へと足を向けた。

「なんすか……西園寺さん。あれは結構電力食いますから……管理部にどやされても知りませんよ」

 先ほどの整備班員に呼ばれたのか、島田が頭を掻きながら近づいてくる。

「こいつが下手っていうがどのくらい下手なのか見てやろうってんだよ。万が一残るって時にアタシがどうフォローすればいいか分かるってもんだろ」

 かなめはいかにもいい考えが浮かんだというように胸を張って廊下を進んだ。

 運航部の部屋からはピンク色と水色の髪の毛の女性士官が部屋の扉から顔をのぞかせて、物珍しそうに誠達を眺めていた。

「おう、珍しいな。初日から模擬戦か?」

 ちっちゃい上司、クバルカ・ラン中佐が悠然と階段を降りてくるところに行き当たった。その後ろには明らかに迷惑そうな表情のカウラが誠とかなめを見つめている。

「まあ、格闘戦『だけ』は人並みってのの実力を見てやろうと思ったんですけどね。なんでも、こいつの実家は剣道場だって話じゃねえですか。だったら……それなりに楽しめるかと思って」

 ランに向かってかなめは自信満々にそう言って笑って見せた。

 少しばかりこれまでの部屋とは趣が違ったセキュリティーの高そうな扉がランとかなめの前に立ちはだかった。

「おー、そうか。ならオメーも飛び道具無しでやったらどうだ?」

 ランはそう言うとポケットからカードを取り出して扉の脇のスロットに差し込んだ。重そうな扉が開き、内部の消えていた電気がついた。

 誠が中に入ると、ゲームセンターのパイロットシミュレーターを想像させる銀色の筐体が並んでいるのが目に入った。

「飛び道具無し?アタシはスナイパーなんだけど……」

 その一番手前のものに手をかけながらかなめが苦笑いを浮かべつつこたえる。

「ド下手相手にスナイパーもへったくれもねーだろーが。勝てるからやるんだろ?」

 ランはそう言って明らかに強気なかなめを挑発した。

「おい!新入り!」

 シミュレーターに手をかけながらかなめは誠を指さして叫んだ。

「姐御の提案通り飛び道具無しでやってやるが、勝っても自慢になんねえからな!」

「多分勝てないですよ……」

 かなめの隣の筐体に体を沈めながら誠はそう返した。

『相手はサイボーグ。反応速度で勝てるわけがないじゃないか……』

 心の中でそんなことを思いながら誠はシミュレーターの筐体に身を沈めた。誠はとりあえずシミュレーターのスイッチを入れた。

 全天周囲モニターが光り始めて、周りが宇宙空間であることが分かってきた。

「宇宙戦は苦手なんだよな……無重力になると吐くし」

『東和宇宙軍出身者が宇宙戦が苦手なの?じゃあどこが得意なのよ』

 モニターの端に紺色の長い髪の女性が映し出された。

 運航部部長、アメリア・クラウゼ少佐の姿に誠は当惑しながら目を向けた。

「あの……いつの間に?」

 誠はそう言いながらアサルト・モジュールの搭乗手順に基づいてベルトを締め、精神感応式オペレーションシステムの主電源を入れた。

『あんだけ大騒ぎしてたら誰でも気づくわよ。まあ、一応私が運用艦『ふさ』の艦長だから、ナビゲーションぐらいしてあげようかなって』

「そうですか……ありがとうございます」

 誠はアメリアの言葉を片耳で聞きながら起動動作を続けていた。
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