1,139 / 1,557
第4章 出発
借りてきたバスに乗って
しおりを挟む
「良い天気!」
ハンガーの前で両手を横に広げて神前ひよこ軍曹が青い空を見上げた。彼女と言うとおり出発の日は晴天だった。
「ひよこ!そこにバス停めるからどいてね!」
紺色の髪にどこで買ったかわからない仏像がプリントされたTシャツを着ているアメリアがそう叫んだ。
「そのまま!ハンドル切らずにまっすぐで!」
そう叫んでいるのは青いTシャツを着た整備班の最年少の西高志だった。いつもこう言うときに気を利かせる彼の機転に誠は感心しながらその後姿を眺めていた。
「もっとでかい声出せよ!真っ直ぐで良いんだな!」
サングラスをかけてバスの運転席から顔を出しているのは島田だった。電気式の大型車らしく静かに西の誘導でバックを続けている。
「随分本格的ですねえ……レンタルしたんですか?」
エメラルドグリーンの髪に合わせたような緑色のキャミソール姿のカウラに誠は声をかけた。
「備品には出来る値段じゃないだろ?去年は二台バスを借り切ったが、今年は一台で済んだな」
あっさりとそう言うカウラの横顔を見つめて目を見開いて誠は驚いた。
「それってほとんど隊が空っぽになるんじゃないですか?まだ準備段階で今より人数も少なかったって話ですし……」
誠は驚いて見せるがかなめもカウラも当然と言うような顔をしている。
「去年は機体も無い、機材も無い。することも無いって有様だったからな。それに今回の整備班の参加者が少ないのは第二小隊の噂が本当みたいだからな。その準備とか色々あんだろ?」
かなめがポツリとつぶやいた。
「第二小隊?」
「うちの運用艦『ふさ』はアサルト・モジュールを最大二十機積めるからな。余裕はある。第二小隊は選抜は終わったが、同盟会議の決済がまだ下りないそうだ」
カウラは穏やかに答える。目の前ではバスの止める位置をめぐり西がもう少し寄せろと言い出して島田と揉め始めていた。
「そうなんですか?……でもなんで第二小隊の増設が出来ないんですか?『近藤事件』の時に間に合えば……僕は楽ができたのに」
そんな誠の疑問だが、かなめもカウラも逆に不思議そうに誠を見つめてきた。
「あんまり叔父貴に力が集まるのが面白くねえんだろうな、上の連中は。それに第二小隊の隊長は……予定ではあのかえでだからな。それに法術捜査局が来月立ち上げだ。その主席捜査官が……」
そこまで言うとかなめはにんまりと笑って西と一緒に島田をとっちめはじめたサラを見ながら笑顔を浮かべる。
「隊長の娘の嵯峨茜弁護士ですか……でもかえでさんて?」
「アタシの妹だ……苗字は日野。日野かえで。西園寺家の家風は合わねえから家を興した訳。爵位は伯爵、官位は弾正尹。気取って『斬弾正』とか名乗ってんだよ」
かなめは吐き捨てるようにそう言った。誠は一人っ子だからわからないが、なぜかかなめの表情が急に曇ったことを不思議に思いながら島田達の騒動をただ眺めていた。
「西園寺さんの妹?」
誠はサイボーグで女王様気質のかなめの妹の姿を想像しようとした。
かなめの頭の先からつま先までじっと眺めるが、どうにも彼女の妹の姿は想像がつかない。
「確かもうすでにこの豊川市に来ているはずだぞ……私も会ったことがあるが……本当に妹なのか?」
いぶかしげにかなめの顔を眺めるカウラを見て、誠は意味も分からず呆然と立ち尽くしていた。
「アタシが前見たときは妹だった。今のところ弟になったという報告は無いから妹だな」
「弟になった?」
再び誠の疑問形に火が付く形となった。
「かえでちゃんの話?」
三人で話しているところに、ちょうどアメリアが通りかかる
「ええ、西園寺さんの妹の話なんですけど……アメリアさん知ってます?」
誠の問いにアメリアは少し戸惑ったような顔をした。
「一応……私は部長級だから、会ったことはあるけど……あれよ、男装が好きだから変な風に言われるだけで、それほど変わった人じゃないわよ……まあ大正ロマン風に『少女歌劇』の男役って感じよね……」
「男装!?」
アメリアがあっさり言ってのけるが、『大正ロマンあふれる国』の甲武国で『男装』をしていることの意味を察して誠は叫んでいた。
「いいじゃないの。『男装の麗人』なんて、絵になるわよ。かなめちゃんと違ってたれ目じゃないし」
「うるせえ!」
けなされて怒ったかなめがアメリアに膝カックンを仕掛ける。長身のアメリアはあっさり引っかかってそのままずっこけた。
「まあ……うちは『特殊な部隊』だからな。第二小隊も当然メンバーは特殊になるだろう」
カウラはそう言って苦笑いを浮かべた。
第一小隊の小隊長として誠達『特殊な』部隊員を預かっている彼女の苦労を察して誠は愛想笑いを浮かべるしかなかった。
「じゃあ荷物を積み込むぞ!」
かなめはそう言って手にした重そうなバッグをバスのトランクを開けて放り込んだ。
ハンガーの前で両手を横に広げて神前ひよこ軍曹が青い空を見上げた。彼女と言うとおり出発の日は晴天だった。
「ひよこ!そこにバス停めるからどいてね!」
紺色の髪にどこで買ったかわからない仏像がプリントされたTシャツを着ているアメリアがそう叫んだ。
「そのまま!ハンドル切らずにまっすぐで!」
そう叫んでいるのは青いTシャツを着た整備班の最年少の西高志だった。いつもこう言うときに気を利かせる彼の機転に誠は感心しながらその後姿を眺めていた。
「もっとでかい声出せよ!真っ直ぐで良いんだな!」
サングラスをかけてバスの運転席から顔を出しているのは島田だった。電気式の大型車らしく静かに西の誘導でバックを続けている。
「随分本格的ですねえ……レンタルしたんですか?」
エメラルドグリーンの髪に合わせたような緑色のキャミソール姿のカウラに誠は声をかけた。
「備品には出来る値段じゃないだろ?去年は二台バスを借り切ったが、今年は一台で済んだな」
あっさりとそう言うカウラの横顔を見つめて目を見開いて誠は驚いた。
「それってほとんど隊が空っぽになるんじゃないですか?まだ準備段階で今より人数も少なかったって話ですし……」
誠は驚いて見せるがかなめもカウラも当然と言うような顔をしている。
「去年は機体も無い、機材も無い。することも無いって有様だったからな。それに今回の整備班の参加者が少ないのは第二小隊の噂が本当みたいだからな。その準備とか色々あんだろ?」
かなめがポツリとつぶやいた。
「第二小隊?」
「うちの運用艦『ふさ』はアサルト・モジュールを最大二十機積めるからな。余裕はある。第二小隊は選抜は終わったが、同盟会議の決済がまだ下りないそうだ」
カウラは穏やかに答える。目の前ではバスの止める位置をめぐり西がもう少し寄せろと言い出して島田と揉め始めていた。
「そうなんですか?……でもなんで第二小隊の増設が出来ないんですか?『近藤事件』の時に間に合えば……僕は楽ができたのに」
そんな誠の疑問だが、かなめもカウラも逆に不思議そうに誠を見つめてきた。
「あんまり叔父貴に力が集まるのが面白くねえんだろうな、上の連中は。それに第二小隊の隊長は……予定ではあのかえでだからな。それに法術捜査局が来月立ち上げだ。その主席捜査官が……」
そこまで言うとかなめはにんまりと笑って西と一緒に島田をとっちめはじめたサラを見ながら笑顔を浮かべる。
「隊長の娘の嵯峨茜弁護士ですか……でもかえでさんて?」
「アタシの妹だ……苗字は日野。日野かえで。西園寺家の家風は合わねえから家を興した訳。爵位は伯爵、官位は弾正尹。気取って『斬弾正』とか名乗ってんだよ」
かなめは吐き捨てるようにそう言った。誠は一人っ子だからわからないが、なぜかかなめの表情が急に曇ったことを不思議に思いながら島田達の騒動をただ眺めていた。
「西園寺さんの妹?」
誠はサイボーグで女王様気質のかなめの妹の姿を想像しようとした。
かなめの頭の先からつま先までじっと眺めるが、どうにも彼女の妹の姿は想像がつかない。
「確かもうすでにこの豊川市に来ているはずだぞ……私も会ったことがあるが……本当に妹なのか?」
いぶかしげにかなめの顔を眺めるカウラを見て、誠は意味も分からず呆然と立ち尽くしていた。
「アタシが前見たときは妹だった。今のところ弟になったという報告は無いから妹だな」
「弟になった?」
再び誠の疑問形に火が付く形となった。
「かえでちゃんの話?」
三人で話しているところに、ちょうどアメリアが通りかかる
「ええ、西園寺さんの妹の話なんですけど……アメリアさん知ってます?」
誠の問いにアメリアは少し戸惑ったような顔をした。
「一応……私は部長級だから、会ったことはあるけど……あれよ、男装が好きだから変な風に言われるだけで、それほど変わった人じゃないわよ……まあ大正ロマン風に『少女歌劇』の男役って感じよね……」
「男装!?」
アメリアがあっさり言ってのけるが、『大正ロマンあふれる国』の甲武国で『男装』をしていることの意味を察して誠は叫んでいた。
「いいじゃないの。『男装の麗人』なんて、絵になるわよ。かなめちゃんと違ってたれ目じゃないし」
「うるせえ!」
けなされて怒ったかなめがアメリアに膝カックンを仕掛ける。長身のアメリアはあっさり引っかかってそのままずっこけた。
「まあ……うちは『特殊な部隊』だからな。第二小隊も当然メンバーは特殊になるだろう」
カウラはそう言って苦笑いを浮かべた。
第一小隊の小隊長として誠達『特殊な』部隊員を預かっている彼女の苦労を察して誠は愛想笑いを浮かべるしかなかった。
「じゃあ荷物を積み込むぞ!」
かなめはそう言って手にした重そうなバッグをバスのトランクを開けて放り込んだ。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
時き継幻想フララジカ
日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。
なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。
銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。
時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。
【概要】
主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。
現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる