1,417 / 1,557
休みのようなもの
斜め上の展開
しおりを挟む
しばらくの沈黙。
腹の中がおはぎで満たされた誠は窓から注ぐ秋の柔らかな日差しを見ながらゆったりと伸びをした。安心できる冬のからりと晴れた青空が窓越しに心地よい日差しをくれた。隣の席ではカウラが頬杖を付いて端末のモニターをいじっている。
「ようやく静かになりましたね」
そう言いながらかえではうどんを啜っていた。
「でも明石中佐はうどんが好きなんですね……しかも冬だというのに冷やしぶっかけうどん……」
話題を振った誠に明石はうどんをかみ締めながらうなづく。
「まあな、甲武軍では麺類は絶対に出えへんからな……縁起が悪いんやて」
明石の語気が強くなる。
麺類と言えば遼帝国と遼州星系では言われている。先の地球との大戦では戦闘中だろうが平気で戦闘をやめてうどんを茹でたと言う都市伝説があるほどうどんとの組み合わせで語られる遼帝国軍。その同盟国として苦戦を強いられた甲武軍にうどん禁止と言うような風潮があってもおかしくないと思いながら、乾いた笑いを浮かべて誠は消えている画面を戻そうとキーボードを叩いた。
まるで反応がなかった。
仕方なくリセットしてみる。それでも反応がない。
「モニターが切り替わらないのか?西園寺の奴が設定まで変更したとか」
焦ってぱちぱちとリセットボタンを押す誠の姿を見てカウラがそう言った。
「そうすると西園寺さんじゃないと直らないってことですか?」
泣きそうな顔で誠はカウラを見つめる。
他に策はなかった。誠に仕事を頼んだのは嵯峨の長女で法術特捜本部の部長、嵯峨茜警視正である。穏やかなお姫様らしい雰囲気とは正反対に厳格な上司である彼女が書類の提出期限を延ばしてくれることなど考えられなかった。
「じゃあ行ってきます」
そう言って誠は詰め所を後にした。
廊下に出ると相変わらずあの撮影をしている第四会議室の前では運行部の女性士官達が雑談をしていた。
「ああ、アメリア来たよ。誠ちゃん、来たから!」
その中で明らかに一回り小さい小夏が誠に手招きをしている。
「小夏ちゃん、一体……」
誠はそのまま急に歓迎ムードになった女性士官達の前を小夏に引っ張られて部屋に入った。
「おう、来たか」
そう言って首の周りにいくつもの配線をまわした首輪のようなものをつけた新藤がキーボードを叩く手を止めて誠を見つめる。
「あれ?昼休みじゃないんですか?」
「なに間抜けなこといってるんだよ。こう言う人様にあまり顔向けできない仕事はさっさと片付けるに限るだろ」
そう言いながら新藤がキーボードを叩くと再び目の前のカプセルのふたが開いた。先ほど誠が入ったカプセル。それを指差しながら新藤はニヤニヤ笑う。
「またやるんですか?」
誠は恨みがましい目を新藤に向けた。
「どうせあっちで見てたんだろ?この中に入って見てても同じじゃないか」
新藤と目配せをした小夏が誠にヘルメットをかぶせる。仕方なく誠は顔まで覆うヘルメットを再びかぶるとカプセルの中に寝転がった。
誠の被ったバイザーの中に先ほどかなめが鞭打たれていた洞窟が見える。
『かなめちゃん!準備できた?』
アメリアの声が響く。誠はサブモニターで自分の姿が黒いマントに変な仮面をした魔法使いになっていることに気づいた。
「アメリアさん!いきなりですか?台本ではここは西園寺さんが一人で脱出するんじゃなかったでしたっけ?」
『良いのよ、新藤さんがこっちの方が盛り上がるからって言ってたし』
『なんだよ俺のせいかよ』
いかにも新藤が不服そうにつぶやく。モニターの下には変更された台本がある。自然と誠の目はそれを見ていた。そこには手枷で拘束されているかなめを誠の役『マジックプリンス』が助けると言う筋書きが書いてあった。
『なんだよ名前の変更無しかよ!マジックプリンス。まんまじゃん。もっとひねれよ!』
頭の中でそう思うものの、のらりくらりかわして自分の意見を通すと言う術を嵯峨から一番良く学び取っているアメリアに言うのは無茶だと思って誠は口をつぐむ。
『じゃあ、行くわよ!ハイ!』
さすがに飽きたというような調子でアメリアがシーンの始まりを告げる。
誠は黒の全身タイツに重心が高くて落ちそうなシルクハット、さらに引きずりそうになるほど長い黒いマントと言う奇妙奇天烈な格好で堂々と洞窟を歩いていく。その先には痛めつけられて弱ったかなめが手枷で吊るされていた。
肉のちぎれたひじの関節の内部の機械が露出し、切り裂かれた頬には血と金属で出来ているような骨格が見えている。明らかにやりすぎと言うか本当に子供にこれを見せるのかと突っ込みたくなる衝動を抑えて誠は手にした杖の一振りでかなめを吊っていた鎖を切った。
「な……なんだ……貴様は?」
かなめは力なく頭をもたげながら搾り出すようにして言葉を発する。いつも見慣れた強気一辺倒のかなめから想像も付かないような弱々しい姿に誠は台本通りに自分ではイケテルと思う流し目をかなめに向けた。明らかに噴出しそうな顔が一瞬浮かぶが、かなめは何とか我慢して痛めつけられた女性幹部の演技を続けた。
「動くんじゃない。今、修復魔法をかけてやる」
そう言って誠は傷ついているかなめの体に手を伸ばす。ぼんやりと淡い桃色の光を放つ手に撫でられると、わずかに発光しながら内部の機械が露出していたかなめの体が修復されていく。
「私を助けるだと?無用な機械。もはや用済みの機械の私を助けたところで……」
そう言って笑うかなめの頬を誠は平手で打つ。
「機械だろうが生物だろうが存在するものに無用なものなどないんだ!君には償わなければならないことがある。それを償ってもらうために私はここに来たんだ!」
そう言うと誠は再び修復魔法をかなめにかける。その言葉に笑顔を浮かべかなめは素直に誠の手に傷口を晒す。
『ありえないよ!こんなの!西園寺さんがこんなに素直なわけないじゃないか!』
そう叫びたくなる欲求を抑えながら胸を切り裂いていた鞭の跡に手を伸ばす。
突然かなめが体を倒してきた。すると修復魔法をかけていた誠の手がかなめの豊かな右の乳房にかぶさった。
「あっ……」
おもわずかなめが声を漏らす。誠はそのまま手をのけようとするが、その手はかなめの右腕につかまれてさらに胸を揉むような格好になった。
『あー!西園寺さんやばいよこれ。アメリアさんが見てるんでしょ?しかも僕の机のモニターつけっぱなしだからカウラさんが……いや!かえでさんに殺されるよ俺!』
一瞬で何重もの恐怖が誠の頭を駆け巡る。かなめはうれしそうな顔をしながらその手を放し、静かに立ち上がった。
「貴様……私をまだ必要とする者とは貴様のことか?」
そう言ってかなめは誠をにらみつける。明らかに悪役の女怪人と言う姿だが、妙に似合っているので誠はつい彼女に見とれてぼーっとしていた。
「気に入った。どうせ捨てられた命だ。力を貸すのも悪くはないか」
「ああ、君にはするべきことがあるんだ。力を貸してくれ」
そう言って誠はあまりにも直球な感じでつけられているマントを翻した。次第に自分の体が消えていくという奇妙な感覚に興奮している自分を押さえ込む。
「貴様!名は!」
「私はマジックプリンス!正義と真実の男!」
『おい!どこの多良尾判内ですか!俺は!』
呆れながら今度はカメラ目線になってかなめを見つめる。かなめはじっと手を握り誠が消えたあたりを眺める。
「マジックプリンス……ああ、覚えておこう。その名を」
そう言うとかなめも小走りで素早く洞窟を脱出した。その様を見ながら誠は突っ込みたかった。
『おい!戦闘員は?下っ端は?監視はどうした!』
目の前が暗くなり一幕が終わったことを告げる。
「あのー、アメリアさん?」
恐る恐る誠はしゃべり始める。一応、アメリアは上官である。しかも自分が面白いと感じたら絶対に譲らない彼女である。
『はい、なんでしょう?』
サブモニターに映るアメリアの満面の笑み。
「僕の格好ってこんなに間抜けでしたっけ?」
その言葉にアメリアの笑みが大きく見える感覚に誠は囚われた。
『ああ、それねデザインしたのは小夏ちゃんだから』
あっさりとアメリアは答える。小夏が後ろでガッツポーズをしている。周りでは運行部の女性隊員が拍手をしていた。
『良いんだよ、どうせやるのはお前さんなんだから。まあ一部。ぶーたれてる奴もいることだしさ』
「新藤さんまで……」
誠はこのまま部屋に帰りたくなったが、帰ればカウラとかえでによる血の制裁が待っていると気づいて踏みとどまった。
『じゃあ次は女将さん……いえ、春子さんの場面ね』
アメリアの声に誠は興味を引かれた。
春子の役、魔獣ローズクイーンのデザインは誠がしたものだった。はっきり言って悪ふざけに過ぎたと自分でも思える。頭に薔薇の花のような冠を被り、両手から蔓のような鞭が生え、全身が緑色の素肌のような格好にところどころに棘が映えた姿。正直、エロゲ系RPGの敵モンスターみたいだなあと思いながら書いた落書きをどうアメリアが使うのか予想が付かなかった。
そして画面が開く。中央でリンは腕組みをして、人が入るほどの大きさの透明なカプセルを見上げる。顔のアップでの怪しげな笑みに誠は背筋が寒くなるのを感じた。
『うちの女性陣は何でこういう悪役やらせると映えるのかな』
これは絶対に口にはできないと思いながら誠は目の前の光景を眺めていた。
『ふっ。やはり所詮は出来損ないの試作品か。まあいい時間稼ぎになっただけましというところか……』
メイリーン将軍ことリンはそのまま目の前のカプセルを見上げた。そこには全裸の女性のようなものが入っていた。
『え?』
誠は目を疑った。それは彼がデザインしたまんまの魔獣ローズクイーンの姿だった。ローズクイーン役の春子は眼を開き、これもまた悪そうな笑みを浮かべてリンを見つめる。
『やっぱ怖いよ、うちがらみの女の人!』
冷や汗を流しながら誠は画面を見つめる。
『さて、あとはあのはねっかえりの王女様がどれだけの成果を上げるか、楽しみだねえ。貴様もそう思うだろ?』
再び安城はとてつもなく悪そうな笑みを浮かべる。それに答えるようにして春子が舌なめずりをしている。そして再び画面が暗くなった。
『アメリアちゃん、こんな感じで良いの?』
うれしそうに春子はアメリアに演技の感想を尋ねる。モニターにその姿は映ってはいないが彼女が非常に楽しんでいることだけは誠にもよく分かった。
『お母さん凄い!私達もがんばりましょう!』
『当然よ!』
小夏とサラが割り込んでくる。誠はただカウラとかえでの制裁が怖くてじっとして周りの人々から忘れられようと気配を消していた。
腹の中がおはぎで満たされた誠は窓から注ぐ秋の柔らかな日差しを見ながらゆったりと伸びをした。安心できる冬のからりと晴れた青空が窓越しに心地よい日差しをくれた。隣の席ではカウラが頬杖を付いて端末のモニターをいじっている。
「ようやく静かになりましたね」
そう言いながらかえではうどんを啜っていた。
「でも明石中佐はうどんが好きなんですね……しかも冬だというのに冷やしぶっかけうどん……」
話題を振った誠に明石はうどんをかみ締めながらうなづく。
「まあな、甲武軍では麺類は絶対に出えへんからな……縁起が悪いんやて」
明石の語気が強くなる。
麺類と言えば遼帝国と遼州星系では言われている。先の地球との大戦では戦闘中だろうが平気で戦闘をやめてうどんを茹でたと言う都市伝説があるほどうどんとの組み合わせで語られる遼帝国軍。その同盟国として苦戦を強いられた甲武軍にうどん禁止と言うような風潮があってもおかしくないと思いながら、乾いた笑いを浮かべて誠は消えている画面を戻そうとキーボードを叩いた。
まるで反応がなかった。
仕方なくリセットしてみる。それでも反応がない。
「モニターが切り替わらないのか?西園寺の奴が設定まで変更したとか」
焦ってぱちぱちとリセットボタンを押す誠の姿を見てカウラがそう言った。
「そうすると西園寺さんじゃないと直らないってことですか?」
泣きそうな顔で誠はカウラを見つめる。
他に策はなかった。誠に仕事を頼んだのは嵯峨の長女で法術特捜本部の部長、嵯峨茜警視正である。穏やかなお姫様らしい雰囲気とは正反対に厳格な上司である彼女が書類の提出期限を延ばしてくれることなど考えられなかった。
「じゃあ行ってきます」
そう言って誠は詰め所を後にした。
廊下に出ると相変わらずあの撮影をしている第四会議室の前では運行部の女性士官達が雑談をしていた。
「ああ、アメリア来たよ。誠ちゃん、来たから!」
その中で明らかに一回り小さい小夏が誠に手招きをしている。
「小夏ちゃん、一体……」
誠はそのまま急に歓迎ムードになった女性士官達の前を小夏に引っ張られて部屋に入った。
「おう、来たか」
そう言って首の周りにいくつもの配線をまわした首輪のようなものをつけた新藤がキーボードを叩く手を止めて誠を見つめる。
「あれ?昼休みじゃないんですか?」
「なに間抜けなこといってるんだよ。こう言う人様にあまり顔向けできない仕事はさっさと片付けるに限るだろ」
そう言いながら新藤がキーボードを叩くと再び目の前のカプセルのふたが開いた。先ほど誠が入ったカプセル。それを指差しながら新藤はニヤニヤ笑う。
「またやるんですか?」
誠は恨みがましい目を新藤に向けた。
「どうせあっちで見てたんだろ?この中に入って見てても同じじゃないか」
新藤と目配せをした小夏が誠にヘルメットをかぶせる。仕方なく誠は顔まで覆うヘルメットを再びかぶるとカプセルの中に寝転がった。
誠の被ったバイザーの中に先ほどかなめが鞭打たれていた洞窟が見える。
『かなめちゃん!準備できた?』
アメリアの声が響く。誠はサブモニターで自分の姿が黒いマントに変な仮面をした魔法使いになっていることに気づいた。
「アメリアさん!いきなりですか?台本ではここは西園寺さんが一人で脱出するんじゃなかったでしたっけ?」
『良いのよ、新藤さんがこっちの方が盛り上がるからって言ってたし』
『なんだよ俺のせいかよ』
いかにも新藤が不服そうにつぶやく。モニターの下には変更された台本がある。自然と誠の目はそれを見ていた。そこには手枷で拘束されているかなめを誠の役『マジックプリンス』が助けると言う筋書きが書いてあった。
『なんだよ名前の変更無しかよ!マジックプリンス。まんまじゃん。もっとひねれよ!』
頭の中でそう思うものの、のらりくらりかわして自分の意見を通すと言う術を嵯峨から一番良く学び取っているアメリアに言うのは無茶だと思って誠は口をつぐむ。
『じゃあ、行くわよ!ハイ!』
さすがに飽きたというような調子でアメリアがシーンの始まりを告げる。
誠は黒の全身タイツに重心が高くて落ちそうなシルクハット、さらに引きずりそうになるほど長い黒いマントと言う奇妙奇天烈な格好で堂々と洞窟を歩いていく。その先には痛めつけられて弱ったかなめが手枷で吊るされていた。
肉のちぎれたひじの関節の内部の機械が露出し、切り裂かれた頬には血と金属で出来ているような骨格が見えている。明らかにやりすぎと言うか本当に子供にこれを見せるのかと突っ込みたくなる衝動を抑えて誠は手にした杖の一振りでかなめを吊っていた鎖を切った。
「な……なんだ……貴様は?」
かなめは力なく頭をもたげながら搾り出すようにして言葉を発する。いつも見慣れた強気一辺倒のかなめから想像も付かないような弱々しい姿に誠は台本通りに自分ではイケテルと思う流し目をかなめに向けた。明らかに噴出しそうな顔が一瞬浮かぶが、かなめは何とか我慢して痛めつけられた女性幹部の演技を続けた。
「動くんじゃない。今、修復魔法をかけてやる」
そう言って誠は傷ついているかなめの体に手を伸ばす。ぼんやりと淡い桃色の光を放つ手に撫でられると、わずかに発光しながら内部の機械が露出していたかなめの体が修復されていく。
「私を助けるだと?無用な機械。もはや用済みの機械の私を助けたところで……」
そう言って笑うかなめの頬を誠は平手で打つ。
「機械だろうが生物だろうが存在するものに無用なものなどないんだ!君には償わなければならないことがある。それを償ってもらうために私はここに来たんだ!」
そう言うと誠は再び修復魔法をかなめにかける。その言葉に笑顔を浮かべかなめは素直に誠の手に傷口を晒す。
『ありえないよ!こんなの!西園寺さんがこんなに素直なわけないじゃないか!』
そう叫びたくなる欲求を抑えながら胸を切り裂いていた鞭の跡に手を伸ばす。
突然かなめが体を倒してきた。すると修復魔法をかけていた誠の手がかなめの豊かな右の乳房にかぶさった。
「あっ……」
おもわずかなめが声を漏らす。誠はそのまま手をのけようとするが、その手はかなめの右腕につかまれてさらに胸を揉むような格好になった。
『あー!西園寺さんやばいよこれ。アメリアさんが見てるんでしょ?しかも僕の机のモニターつけっぱなしだからカウラさんが……いや!かえでさんに殺されるよ俺!』
一瞬で何重もの恐怖が誠の頭を駆け巡る。かなめはうれしそうな顔をしながらその手を放し、静かに立ち上がった。
「貴様……私をまだ必要とする者とは貴様のことか?」
そう言ってかなめは誠をにらみつける。明らかに悪役の女怪人と言う姿だが、妙に似合っているので誠はつい彼女に見とれてぼーっとしていた。
「気に入った。どうせ捨てられた命だ。力を貸すのも悪くはないか」
「ああ、君にはするべきことがあるんだ。力を貸してくれ」
そう言って誠はあまりにも直球な感じでつけられているマントを翻した。次第に自分の体が消えていくという奇妙な感覚に興奮している自分を押さえ込む。
「貴様!名は!」
「私はマジックプリンス!正義と真実の男!」
『おい!どこの多良尾判内ですか!俺は!』
呆れながら今度はカメラ目線になってかなめを見つめる。かなめはじっと手を握り誠が消えたあたりを眺める。
「マジックプリンス……ああ、覚えておこう。その名を」
そう言うとかなめも小走りで素早く洞窟を脱出した。その様を見ながら誠は突っ込みたかった。
『おい!戦闘員は?下っ端は?監視はどうした!』
目の前が暗くなり一幕が終わったことを告げる。
「あのー、アメリアさん?」
恐る恐る誠はしゃべり始める。一応、アメリアは上官である。しかも自分が面白いと感じたら絶対に譲らない彼女である。
『はい、なんでしょう?』
サブモニターに映るアメリアの満面の笑み。
「僕の格好ってこんなに間抜けでしたっけ?」
その言葉にアメリアの笑みが大きく見える感覚に誠は囚われた。
『ああ、それねデザインしたのは小夏ちゃんだから』
あっさりとアメリアは答える。小夏が後ろでガッツポーズをしている。周りでは運行部の女性隊員が拍手をしていた。
『良いんだよ、どうせやるのはお前さんなんだから。まあ一部。ぶーたれてる奴もいることだしさ』
「新藤さんまで……」
誠はこのまま部屋に帰りたくなったが、帰ればカウラとかえでによる血の制裁が待っていると気づいて踏みとどまった。
『じゃあ次は女将さん……いえ、春子さんの場面ね』
アメリアの声に誠は興味を引かれた。
春子の役、魔獣ローズクイーンのデザインは誠がしたものだった。はっきり言って悪ふざけに過ぎたと自分でも思える。頭に薔薇の花のような冠を被り、両手から蔓のような鞭が生え、全身が緑色の素肌のような格好にところどころに棘が映えた姿。正直、エロゲ系RPGの敵モンスターみたいだなあと思いながら書いた落書きをどうアメリアが使うのか予想が付かなかった。
そして画面が開く。中央でリンは腕組みをして、人が入るほどの大きさの透明なカプセルを見上げる。顔のアップでの怪しげな笑みに誠は背筋が寒くなるのを感じた。
『うちの女性陣は何でこういう悪役やらせると映えるのかな』
これは絶対に口にはできないと思いながら誠は目の前の光景を眺めていた。
『ふっ。やはり所詮は出来損ないの試作品か。まあいい時間稼ぎになっただけましというところか……』
メイリーン将軍ことリンはそのまま目の前のカプセルを見上げた。そこには全裸の女性のようなものが入っていた。
『え?』
誠は目を疑った。それは彼がデザインしたまんまの魔獣ローズクイーンの姿だった。ローズクイーン役の春子は眼を開き、これもまた悪そうな笑みを浮かべてリンを見つめる。
『やっぱ怖いよ、うちがらみの女の人!』
冷や汗を流しながら誠は画面を見つめる。
『さて、あとはあのはねっかえりの王女様がどれだけの成果を上げるか、楽しみだねえ。貴様もそう思うだろ?』
再び安城はとてつもなく悪そうな笑みを浮かべる。それに答えるようにして春子が舌なめずりをしている。そして再び画面が暗くなった。
『アメリアちゃん、こんな感じで良いの?』
うれしそうに春子はアメリアに演技の感想を尋ねる。モニターにその姿は映ってはいないが彼女が非常に楽しんでいることだけは誠にもよく分かった。
『お母さん凄い!私達もがんばりましょう!』
『当然よ!』
小夏とサラが割り込んでくる。誠はただカウラとかえでの制裁が怖くてじっとして周りの人々から忘れられようと気配を消していた。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
時き継幻想フララジカ
日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。
なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。
銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。
時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。
【概要】
主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。
現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる