法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『悪夢の研究』と『今は無き国』

橋本 直

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第九章 法術師対策と捜査

第54話 誠を託されたカウラ

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「ベルガー。出る前にちょっといいか?」 

 ランの言葉にハンドルから手を離してカウラが振り向く。誠もそれに合わせてランを見つめる。

「租界はアタシと西園寺が担当する。ベルガーと神前は周辺部の担当だ。神前のお守りは頼むぞ」 

「なんだってこんな餓鬼の……」  

 普段は本当に小学校低学年の少女にしか見えないランだが、その元々にらんでいるような目つきが鈍く光を発したときには、中佐と言う肩書きが伊達ではないというような凄みがあるのは誠も知っていた。

「租界じゃ名の知れた山犬がうろちょろするんだ。『東都戦争』で恨みなら山ほど買ったんだろ?そんなところに神前みてーな素人を送り込めるかよ。むざむざ死にに行けって言ってるよーなもんだ」 

 ランの口元の笑みが浮かんだ。かなめはちらりと誠を見てそのままそっぽを向いた。東都警察も匙を投げたシンジケートや利権を持つ国々の非正規部隊の抗争劇『東都戦争』の舞台となった東都租界と言えばすぐに『甲武の山犬』として知られたエージェントのかなめが幅を利かせるのは当然のことだった。

「カウラ、気をつけとけよ。現在も潜伏している工作員もいるだろうからな。それに今回の超能力者製造計画をたくらむ悪の組織……」 

「ふざけるなよ、バーカ」 

 誠の特撮への愛を知っているかなめのリップサービスにランがかなめの頭をはたいた。

「まあトラブルになる可能性はアタシ等の方が大きいんだからな。お前らはとりあえず予定した調査ポイントでアタシの指示通りに動いてくれりゃあそれでいい」 

 まるで期待をしていないようなランの言葉を不快に思ったのかカウラはそのまま正面を向き直り車のエンジンをかけた。

「そう気を悪くするなよ。相手は法術師をようしている可能性が高けーし、正直神前はあてにならねーし……」 

「そうだな、コイツはあてにならねえな」 

 かなめにまでそう言われるとさすがに堪えて誠も椅子に座りなおしてシートベルトをした。

「いじけるなよ。即戦力としては期待はしてねーけど将来は期待してるんだぜ」 

 ランのとってつけたような世辞に誠は照れたように頭を掻く。カウラはそのまま乱暴に車を発進させた。

「姐御、カウラは結構根にもつから注意したほうが良いですよ。後でどうなっても知りませんよ、アタシは」 

 かなめはカウラを指さしてそう言った。運転に集中しているふりをしてカウラは何も言わなかった。

「そうなのか?」 

 囁きあうかなめとランをバックミラー越しに見ながらカウラはそのまま車を正門ゲートへと向かわせた。

 いつものようにゲートには技術部の歩哨はいなかった。カウラはクラクションを派手に鳴らす。それに反応してスキンヘッドの大男が飛び出して来た。

「緊張感が足りないんじゃないのか?」 

 いつもなら淡々と出て行くカウラにそう言われて出てきた大男は面食らう。

「すいません……出来れば班長には内密に」 

 手を合わせるスキンヘッドを見下すような笑みで見つめた後、カウラは開いたゲートから車を急発進させた。

「確かになあ。根に持ってるわ。この運転ですぐに分かるわ」 

 ランは呆れたように車を急発進させるカウラを眺めていた。
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