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第二十五章 『特殊な部隊』の茶番劇
第54話 君が帰ってくると信じて
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これは……嵯峨の茶番だ。
そう確信した瞬間、誠は言葉を失った。
この混沌も、戦場も、展開のタイミングも……すべて、あの『駄目人間』の掌の上。戦力配置に至るまで、緻密に計算されていた。
『……なんだ、その顔。ようやく気づいたか?』
通信越し、かなめの笑いが響く。サイボーグ用ヘルメットの下、口元だけがわずかに動く。
彼女は最初から知っていた。この“茶番劇”の脚本家が誰なのかを。
『叔父貴が『殿上会』に顔出すって言った時点で、何か仕掛ける気だとは思ってたよ。現在軌道上に待機中の甲武第三艦隊を黙らせる作戦でもあったんだろうさ』
その皮肉混じりの声は、彼女なりの信頼の証でもあった。
『これで本当の意味で『近藤事件』に決着がつく。……少なくとも、私たちにとってはな』
その言葉を噛み締めるように、誠は前を見据えた。
『運か、あるいは意図か……私にも分からない。だが、自分で幕を引けるというのは悪くない。普通の人間にはできないことだが、お前には可能だ。信じろ、神前』
カウラの静かな声に、誠は小さく頷いた。
自分が起こした『近藤事件』。それが引き起こした混乱を、今、自分の手で終わらせようとしている……その事実が、誠の中に確かな意味を与えようとしていた。
だが、シリアスな展開を許すほど『特殊な部隊』は甘いところでは無かった。
『……おい神前。なんだその納得した顔は。カウラの言葉は信じて、アタシの言葉は信用できねーってか?まったく、やってらんねーぜ。カウラは『パチンコ依存症』っていう立派な精神病患者だぞ?』
いつもの調子で毒を吐くかなめに、思わず誠は苦笑した。
『……いやいや、西園寺さん。あなたも十分『戦闘依存症』じゃないですか』
だが、その本音を口に出すのは、さすがに命が惜しかった。
「そ、そんなつもりじゃないです!かなめさんの見解も、非常に鋭いと思ってます! 近藤の下で動いた経験のある方ならではの、深い洞察だと……!」
言い訳がましいセリフがつい口を突いて出る。誠の自己防衛本能が、そう言わせていた。
『『も』ってなんだよ、『も』って! やっぱアタシはおまけかよ……』
ふてくされた声が返ってきたその時、誠のモニターに飛び込んできたのは飛翔するかなめ機の姿だった。
『敵機か……ずいぶん早いお出ましじゃねえか。敵にも、多少は頭の回る奴がいるってことか』
瞬間、闇が火に染まる。
誘導ミサイルが、リアクティブパルスの防御圏内で炸裂した。かなめ機の周囲が爆風に包まれた。
『各機、状況を報告しろ』
カウラの落ち着いた声に、誠は我に返った。
「アルファー・スリー、異常なし!」
『アルファー・ツー、オールグリーン!……って、レーダーに機影がないってことは、車両か?それとも自爆狙いの固定陣地か』
先頭に着地し、かなめがロングレンジレールガンを構えて辺りを見回す。モニターには、不整地用のトラック群が映っていた。その荷台には明らかに過剰なサイズのミサイルが積まれている。
『……こいつは時間稼ぎか。しかも自爆覚悟の。殉教者気取りの馬鹿どもが』
カウラが鋭く命じる。
『アルファー・スリー、先行しろ!目的地に到達しなければ、すべてが無駄になる!アルファー・ツーは援護。お前のサイボーグ視力であの目標を叩け!』
『やれやれ、最初からアタシに任せときゃよかったのに』
かなめはパルスエンジンの出力を上げ、トラック群へ突撃していく。
誠も機体を加速させ、かなめの後を追う。
刻々と迫る予定時刻。だが、誠の背中に悪寒が走る。
レーダーに映る新たな反応は……明らかに飛行戦車だった。
「敵影多数!こちらに接近中!」
『多数って何機だ!数えろ、数を!』
かなめが怒鳴る。そのまま機体を急加速させ、レールガンの照準を合わせていく。
『誠ちゃん!かなめちゃんたちに任せて、誠ちゃんは目標地点に向かって!』
アメリアの声が鋭く響く。
「でも!西園寺さんが戦ってるのに、僕だけ……!」
『命令よ!』
その声に、誠は嵯峨の言葉を思い出す。
……『戦場で大事なのは、逃げることだ。生き延びなきゃ、誰も守れねぇ』
震える手で操縦桿を握る。地図上の発動ポイントが赤く点滅している。
「……了解しました」
歯を食いしばり、誠は転送された地図を確認する。
『大丈夫だ、神前。私もいる。今回は支援じゃない、主力だ。私が全力でお前を守る。安心して進め』
カウラの言葉に後押しされ、誠は再び前を見据えた。
かなめ機が敵部隊と接触したことを示すレーダーの反応に、誠は静かに祈る。
『……かなめさん、死なないでくださいね。帰ってくるって、信じてますから』
「カウラさん……かなめさんなら、あの程度の敵……大丈夫ですよね?」
誠の声には、どこか懇願めいた響きが混じっていた。
だが、カウラは静かに首を振る。
『飛行戦車の主砲は230ミリ級。直撃すれば、05式でもただでは済まない。いくら西園寺でも、あれだけの数を相手にするのは……』
現実を突きつけるその言葉に、誠の不安はさらに強くなった。
『まずいわね。回り込んだのがいるわよ。5両。動きが早いから西モスレムからの義勇兵でも乗ってるかもしれないわ。西モスレムの元正規兵上がり。ちゃんと正規軍で訓練済みだからマニュアル操縦限定でも腕は保証付きよ。それに、ここで敵が出て来るってことは敵の指揮官も正規軍崩れのプロね。当然予備戦力の用意ぐらいしてあって当然ってわけよ。誠ちゃん、気を付けてね』
画面の中で珍しく神妙な顔をしたアメリアが親指の爪を噛んでいるのが目に入った。ここまで追い詰められた表情を浮かべるアメリアを誠は初めて見た。
『仕方ないわ。クバルカ中佐!こちらより神前機の護衛を優先してください!作戦の重要度はそちらが上です!お願いします!』
上空で誠達を運んできた輸送機の護衛任務にあたっていたランにアメリアは援護を頼んだ。
『わあってるよ!そんなことは!まあアタシは東和陸軍籍でこの作戦に参加しているからな。それが原因で起きる国際法上のごたごたは嵯峨の隊長に任せることにしてこっちはアタシが引き付ける!カウラと誠はそのまま進撃しろ!』
誠の機体のレーダーで輸送機の護衛に回っていたランがすさまじいスピードで降下していた。
「凄い……05式ってあんな速度出ましたっけ……」
ランの降下速度はシュツルム・パンツァーとしては重い部類に入る05式としても常軌を逸した速度だった。それが法術増幅装置によるものだとしてもその速度は常軌を逸していた。
『あれがクバルカ中佐の『力』だ。それより感心している場合じゃないぞ!貴様の持ってる05式広域鎮圧砲に敵の飛行戦車の主砲が被弾させられればすべてが終わる!油断するな!』
カウラの声とともに、目の前が爆炎に包まれる。そして誠の頭にズキンと突き刺さるような痛みを感じる。
「法術兵器?炎熱系です!」
カウラの機体も炎に包まれていた。誠はすぐさま干渉空間を展開しようとする。
『敵にも法術師がいるな!神前、力は使うな!たかだか自爆狙いのテロリスト風情に私が遅れをとるわけがないだろ!』
対法術装備を搭載しているもののカウラの機体は発火能力者、『パイロキネシスト』の炎で包まれていた。
「でも!」
誠はそれ以上話すことができなかった。モニターの中のカウラのエメラルドグリーンの瞳が揺れている。
『行け!神前!今はオメーだけが頼りなんだ!』
ランが敵の遊撃部隊と接触しながら叫んでいる。そう言いながらランは五機の飛行戦車を次々とダンビラで叩き斬っていた。
「じゃあ!行きますから!クバルカ中佐もお気をつけて!」
誠はそう叫ぶと警備部の派遣部隊から出されている信号に向けて機体を加速させた。
「やっぱり付いてくる……二両」
誠は自分の機体の武装を確認する。両腕が法術兵器でふさがっている以上、本体の固有武装に頼るしかなかった。旧式の飛行戦車M5の200ミリ主砲相手ならどうにか05式の重装甲で対抗できるが、05式と1つ世代の違うだけの開発時期の飛行戦車M7に出くわせばかなめの05式狙撃型の誇る230ミリロングレンジレールガンと同クラスの主砲の雨を食らうことになる。そしてその装甲は誠機が今装備している空対空ミサイルなど目くらまし程度の効果しか期待できなかった。
「要は逃げおおせればいいんだ!逃げるぞ!いつも隊長が言ってるじゃないか、逃げるってのが一番大切なことなんだって!逃げ切って見せる!」
自分に言い聞かせる誠だが、明らかに恐怖のあまり全身の筋肉が硬直していくのを感じていた。そして視線はレーダーの中で接近を続ける二両の敵飛行戦車の信号に吸いつけられた。絶え間なく襲い来る容赦の無い恐怖。心はその言葉で満たされて振り回された。
二両の敵飛行戦車は機動性に劣る05式に確実に近づいてきていた。逃げ切ることは不可能だった。戦闘経験がこれで二度目の誠にもその残酷な事実は分かった。
「やっぱり無理ですよ……僕には……」
その言葉は自然に漏れた。もはや誰に向けたものでもない。
二両の飛行戦車が距離を詰めてくる。誠の05式は重く、遅い。
『……行け!神前!今はお前だけが頼りなんだ!』
ランの声が通信を切り裂いた。次の瞬間、モニターに映ったのは……空を裂いて突っ込んでくる一機の05式。『紅兎弱×54』。真紅の真っ赤な光の筋が真っすぐに誠に向って降下してきている。
その速度は、誠の常識を超えていた。
「中佐……!?」
ランは巨大な刀で敵機を斬り伏せながら叫んでいた。
『気張れよ!逃げ切ってみせろ!そうすりゃ、あの『駄目人間』も鼻で笑うだけで許してくれるさ!それにアタシがここに居る!『人類最強』のパイロットのアタシがな!』
そう言って笑うランだが、誠の機体に対する攻撃の手は緩む様子が無かった。
そう確信した瞬間、誠は言葉を失った。
この混沌も、戦場も、展開のタイミングも……すべて、あの『駄目人間』の掌の上。戦力配置に至るまで、緻密に計算されていた。
『……なんだ、その顔。ようやく気づいたか?』
通信越し、かなめの笑いが響く。サイボーグ用ヘルメットの下、口元だけがわずかに動く。
彼女は最初から知っていた。この“茶番劇”の脚本家が誰なのかを。
『叔父貴が『殿上会』に顔出すって言った時点で、何か仕掛ける気だとは思ってたよ。現在軌道上に待機中の甲武第三艦隊を黙らせる作戦でもあったんだろうさ』
その皮肉混じりの声は、彼女なりの信頼の証でもあった。
『これで本当の意味で『近藤事件』に決着がつく。……少なくとも、私たちにとってはな』
その言葉を噛み締めるように、誠は前を見据えた。
『運か、あるいは意図か……私にも分からない。だが、自分で幕を引けるというのは悪くない。普通の人間にはできないことだが、お前には可能だ。信じろ、神前』
カウラの静かな声に、誠は小さく頷いた。
自分が起こした『近藤事件』。それが引き起こした混乱を、今、自分の手で終わらせようとしている……その事実が、誠の中に確かな意味を与えようとしていた。
だが、シリアスな展開を許すほど『特殊な部隊』は甘いところでは無かった。
『……おい神前。なんだその納得した顔は。カウラの言葉は信じて、アタシの言葉は信用できねーってか?まったく、やってらんねーぜ。カウラは『パチンコ依存症』っていう立派な精神病患者だぞ?』
いつもの調子で毒を吐くかなめに、思わず誠は苦笑した。
『……いやいや、西園寺さん。あなたも十分『戦闘依存症』じゃないですか』
だが、その本音を口に出すのは、さすがに命が惜しかった。
「そ、そんなつもりじゃないです!かなめさんの見解も、非常に鋭いと思ってます! 近藤の下で動いた経験のある方ならではの、深い洞察だと……!」
言い訳がましいセリフがつい口を突いて出る。誠の自己防衛本能が、そう言わせていた。
『『も』ってなんだよ、『も』って! やっぱアタシはおまけかよ……』
ふてくされた声が返ってきたその時、誠のモニターに飛び込んできたのは飛翔するかなめ機の姿だった。
『敵機か……ずいぶん早いお出ましじゃねえか。敵にも、多少は頭の回る奴がいるってことか』
瞬間、闇が火に染まる。
誘導ミサイルが、リアクティブパルスの防御圏内で炸裂した。かなめ機の周囲が爆風に包まれた。
『各機、状況を報告しろ』
カウラの落ち着いた声に、誠は我に返った。
「アルファー・スリー、異常なし!」
『アルファー・ツー、オールグリーン!……って、レーダーに機影がないってことは、車両か?それとも自爆狙いの固定陣地か』
先頭に着地し、かなめがロングレンジレールガンを構えて辺りを見回す。モニターには、不整地用のトラック群が映っていた。その荷台には明らかに過剰なサイズのミサイルが積まれている。
『……こいつは時間稼ぎか。しかも自爆覚悟の。殉教者気取りの馬鹿どもが』
カウラが鋭く命じる。
『アルファー・スリー、先行しろ!目的地に到達しなければ、すべてが無駄になる!アルファー・ツーは援護。お前のサイボーグ視力であの目標を叩け!』
『やれやれ、最初からアタシに任せときゃよかったのに』
かなめはパルスエンジンの出力を上げ、トラック群へ突撃していく。
誠も機体を加速させ、かなめの後を追う。
刻々と迫る予定時刻。だが、誠の背中に悪寒が走る。
レーダーに映る新たな反応は……明らかに飛行戦車だった。
「敵影多数!こちらに接近中!」
『多数って何機だ!数えろ、数を!』
かなめが怒鳴る。そのまま機体を急加速させ、レールガンの照準を合わせていく。
『誠ちゃん!かなめちゃんたちに任せて、誠ちゃんは目標地点に向かって!』
アメリアの声が鋭く響く。
「でも!西園寺さんが戦ってるのに、僕だけ……!」
『命令よ!』
その声に、誠は嵯峨の言葉を思い出す。
……『戦場で大事なのは、逃げることだ。生き延びなきゃ、誰も守れねぇ』
震える手で操縦桿を握る。地図上の発動ポイントが赤く点滅している。
「……了解しました」
歯を食いしばり、誠は転送された地図を確認する。
『大丈夫だ、神前。私もいる。今回は支援じゃない、主力だ。私が全力でお前を守る。安心して進め』
カウラの言葉に後押しされ、誠は再び前を見据えた。
かなめ機が敵部隊と接触したことを示すレーダーの反応に、誠は静かに祈る。
『……かなめさん、死なないでくださいね。帰ってくるって、信じてますから』
「カウラさん……かなめさんなら、あの程度の敵……大丈夫ですよね?」
誠の声には、どこか懇願めいた響きが混じっていた。
だが、カウラは静かに首を振る。
『飛行戦車の主砲は230ミリ級。直撃すれば、05式でもただでは済まない。いくら西園寺でも、あれだけの数を相手にするのは……』
現実を突きつけるその言葉に、誠の不安はさらに強くなった。
『まずいわね。回り込んだのがいるわよ。5両。動きが早いから西モスレムからの義勇兵でも乗ってるかもしれないわ。西モスレムの元正規兵上がり。ちゃんと正規軍で訓練済みだからマニュアル操縦限定でも腕は保証付きよ。それに、ここで敵が出て来るってことは敵の指揮官も正規軍崩れのプロね。当然予備戦力の用意ぐらいしてあって当然ってわけよ。誠ちゃん、気を付けてね』
画面の中で珍しく神妙な顔をしたアメリアが親指の爪を噛んでいるのが目に入った。ここまで追い詰められた表情を浮かべるアメリアを誠は初めて見た。
『仕方ないわ。クバルカ中佐!こちらより神前機の護衛を優先してください!作戦の重要度はそちらが上です!お願いします!』
上空で誠達を運んできた輸送機の護衛任務にあたっていたランにアメリアは援護を頼んだ。
『わあってるよ!そんなことは!まあアタシは東和陸軍籍でこの作戦に参加しているからな。それが原因で起きる国際法上のごたごたは嵯峨の隊長に任せることにしてこっちはアタシが引き付ける!カウラと誠はそのまま進撃しろ!』
誠の機体のレーダーで輸送機の護衛に回っていたランがすさまじいスピードで降下していた。
「凄い……05式ってあんな速度出ましたっけ……」
ランの降下速度はシュツルム・パンツァーとしては重い部類に入る05式としても常軌を逸した速度だった。それが法術増幅装置によるものだとしてもその速度は常軌を逸していた。
『あれがクバルカ中佐の『力』だ。それより感心している場合じゃないぞ!貴様の持ってる05式広域鎮圧砲に敵の飛行戦車の主砲が被弾させられればすべてが終わる!油断するな!』
カウラの声とともに、目の前が爆炎に包まれる。そして誠の頭にズキンと突き刺さるような痛みを感じる。
「法術兵器?炎熱系です!」
カウラの機体も炎に包まれていた。誠はすぐさま干渉空間を展開しようとする。
『敵にも法術師がいるな!神前、力は使うな!たかだか自爆狙いのテロリスト風情に私が遅れをとるわけがないだろ!』
対法術装備を搭載しているもののカウラの機体は発火能力者、『パイロキネシスト』の炎で包まれていた。
「でも!」
誠はそれ以上話すことができなかった。モニターの中のカウラのエメラルドグリーンの瞳が揺れている。
『行け!神前!今はオメーだけが頼りなんだ!』
ランが敵の遊撃部隊と接触しながら叫んでいる。そう言いながらランは五機の飛行戦車を次々とダンビラで叩き斬っていた。
「じゃあ!行きますから!クバルカ中佐もお気をつけて!」
誠はそう叫ぶと警備部の派遣部隊から出されている信号に向けて機体を加速させた。
「やっぱり付いてくる……二両」
誠は自分の機体の武装を確認する。両腕が法術兵器でふさがっている以上、本体の固有武装に頼るしかなかった。旧式の飛行戦車M5の200ミリ主砲相手ならどうにか05式の重装甲で対抗できるが、05式と1つ世代の違うだけの開発時期の飛行戦車M7に出くわせばかなめの05式狙撃型の誇る230ミリロングレンジレールガンと同クラスの主砲の雨を食らうことになる。そしてその装甲は誠機が今装備している空対空ミサイルなど目くらまし程度の効果しか期待できなかった。
「要は逃げおおせればいいんだ!逃げるぞ!いつも隊長が言ってるじゃないか、逃げるってのが一番大切なことなんだって!逃げ切って見せる!」
自分に言い聞かせる誠だが、明らかに恐怖のあまり全身の筋肉が硬直していくのを感じていた。そして視線はレーダーの中で接近を続ける二両の敵飛行戦車の信号に吸いつけられた。絶え間なく襲い来る容赦の無い恐怖。心はその言葉で満たされて振り回された。
二両の敵飛行戦車は機動性に劣る05式に確実に近づいてきていた。逃げ切ることは不可能だった。戦闘経験がこれで二度目の誠にもその残酷な事実は分かった。
「やっぱり無理ですよ……僕には……」
その言葉は自然に漏れた。もはや誰に向けたものでもない。
二両の飛行戦車が距離を詰めてくる。誠の05式は重く、遅い。
『……行け!神前!今はお前だけが頼りなんだ!』
ランの声が通信を切り裂いた。次の瞬間、モニターに映ったのは……空を裂いて突っ込んでくる一機の05式。『紅兎弱×54』。真紅の真っ赤な光の筋が真っすぐに誠に向って降下してきている。
その速度は、誠の常識を超えていた。
「中佐……!?」
ランは巨大な刀で敵機を斬り伏せながら叫んでいた。
『気張れよ!逃げ切ってみせろ!そうすりゃ、あの『駄目人間』も鼻で笑うだけで許してくれるさ!それにアタシがここに居る!『人類最強』のパイロットのアタシがな!』
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