法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』の初陣

橋本 直

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第七章 バックアップメンバーの『濃い』メンツ

第37話 手荒い歓迎

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 隊長室の横の階段を駆け下りると、そこにはまるで学校のそれを思わせる扉があった。扉の上には『運航部』の札が見える。

「ここか……『運航部』……例の運用艦とやらを運行する……ブリッジクルーとかが居るのかな?」

 誠は階段を降り切って廊下をまっすぐに進んで一つの扉にたどり着いた。先ほど嵯峨が言った通り、隊長室の真下にある大きな部屋だった。誠はそのまま扉を開けた。

「失礼しっまっ!うご!」

 頭に衝撃を受けて誠はしゃがみこんだ。金属音が部屋中に響き、うずくまる誠の隣で金ダライが跳ねる音が響いていた。

『司法局実働部隊運航部にようこそ!』

 女性の嬉しそうな声が誠の耳に響いた。

「なにを……タライが落ちてきたような……」

 誠はよろよろと立ち上がった。戸惑う誠に向けてクラッカーが鳴らされ、制服を着た女子隊員達が鳴り物を叩いて誠を歓迎していた。

彼女達の髪の色が自然にはあり得ない色をしているのを見て嵯峨の言った『変な髪の色した姉ちゃん達』が彼女達を指すということが誠にも分かった。

「神前君!司法局実働部隊にようこそ!」

 中のピンクの髪の女性士官が手を差し伸べてきた。

「はぁ……」

 あまりの出来事に混乱気味の誠は彼女に手を取られて部屋に通された。

 普通のオフィスのような部屋の中には見慣れない髪の色の女子隊員が誠を見つめていた。全員が違う色と言うことはどうも染めたものでは無いらしい。誠はそう思うと部屋の奥を覗いた。

「神前君!こっち!」

 奥の大きめの机には紺色の長い髪の女性士官が手を振っているのが見えた。

「ごめんね……私もさすがに今回はやめようって言ったんだけどね。ごめんね」

 誠が振り向くとそこには苦笑いを浮かべた水色のショートカットの女性士官が手を合わせながら誠を見守っていた。

「やっちゃったものは仕方がないじゃない。それにあまりリアクションも面白くなかったしね」

 奥のデスクに座った紺色の長い髪の女性が立ち上がって誠に右手を差し出してきた。その整った面差しの中の目が明らかに『糸目』なことを気にしながら誠は利き手でない右手を差し出して握手をした。

「私の名はアメリア・クラウゼよ。階級は少佐。ここ『運航部』の部長ってことになってるわ。まあ、うちは運用艦『ふさ』のブリッジクルーで構成された組織なわけ」

「運用艦……例のアレですか?」

 誠はアメリアの言葉を理解できずに復唱した。

「ランちゃんから聞いてたんだ……。実働部隊うちの活動範囲は遼州星系全体だから。当然、移動には艦がいる可能性が高いわね。出動の度に一々宇宙軍に空いてる艦を借りるのめんどくさいじゃないの」

 握手をしながらアメリアは細い目をさらに細めて誠を見つめた。

「そうですか……艦長さんですか……」

 誠はそう言いながら握手を続けるアメリアの顔を見つめた。

「そう、艦長さん。……オバサンって言ったら殺すから」

 ここでようやく気が済んだというようにアメリアは手を放した。誠は結構強く握られてうっ血した右手をさすりながらアメリアの席の隣に置かれたパイプ椅子に腰かけた。

「実は補充のパイロットは神前君で六人目なのよね」

「六人目?」

 誠はアメリアの言葉が理解できずに聞き直した。

「そう。これまで五人、機動部隊三番機担当ってことで配属になったんだけど……」

 急にしおらしくなったアメリアの言葉で機動部隊詰め所で受けた仕打ちの理由を少しばかり理解した。

「みんな辞めたんですか?」

 誠は浮かない顔をしてアメリアに聞き返した。

「まあね。うちとは水が合わないってね。まあそんなもんじゃない、仕事なんて」

 あっさりとアメリアはそう言いながら大きな部長の執務机に取り付けられた大型モニターの操作を再開した。

「組織ってのは『生態系』だってのがうちの隊長の持論でね。私もなるほどなあとは思ってるんだけどね」

「生態系?」

 誠はモニターに目をやるアメリアを眺めつつ、嵯峨に持論なんてあるのかと首をひねっていた。

「そう。一人ひとりが関係しあってこそ存在することが許される微妙なバランスの上にある存在。そんな感じかしら?上位者も下位者も一人として欠けたら崩れてしまうようなもろい存在……」

 アメリアはそう言うとキーボードを打つ手を止めて誠を見つめた。

「でも、一人ひとりがばらばらに戦うよりははるかに強い存在になる。それが組織」
 強い口調でそう言うアメリアに誠は静かに頷くことで答えた。

「組織……」

 誠の言葉の繰り返しにアメリアは静かに頷くいた。
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