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第二十三章 今日も続く体力勝負の職場
第109話 ランニング!
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「やってるな!」
『ちっちゃくて偉大なる中佐殿』と呼ばれているクバルカ・ラン中佐は笑顔で部隊の広すぎるグラウンドを眺めていた。
今日も神前誠曹長の一日はランニングから始まる。
他の司法局実働部隊の隊員は一応ジャージに着替えて誠が走る様を眺めているが、彼に付きあってまじめに走るのは、誠と同じようにこの『特殊な部隊』になじめずにいるこの部隊唯一の真人間のパーラ・ラビロフ中尉くらいだった。
他の隊員達はいつものように疾走する二人の後ろをめんどくさそうに歩いている。しかし、『特殊な部隊』ではそれはいつもの光景だった。
「まじめだねえ……」
ジャージに着替えてすらいない誠の上官に当たる西園寺かなめ中尉は、のんびりとその光景を眺めていた。彼女はサイボーグなので体力強化のためのランニングをしたところで生体部品が消耗するだけだからまるで意味がないどころか逆効果だった。その事実に気づけばかなめがトレーニングに参加しないのは当然と言えば当然だが、そんな彼女を誠はなんとも釈然としない目で見つめていた。
「貴様のうちの草野球チームのエースになるんだ。体力は大事だろ?」
こちらは一応ジャージには着替えている、誠所属の第一小隊小隊長カウラ・ベルガー大尉はいつも通りの仏頂面でタフネスを見せつける誠に目をやっていた。
「神前君!まだ走るの?」
戦闘用人造人間、『ラスト・バタリオン』であり、一般の女性とは比べ物にならない体力の持ち主であるパーラにしても平気で二十キロを超えるランニングをこなす誠についていくのがやっとだった。
「僕、体力だけが取り柄なんで。大学の陸上部のハーフマラソンとかにも助っ人で呼ばれたこともあったんで」
「……ああ、そうなの。……すごいわね」
確かに誠はパイロットとしては三流以下だが、かつて高校で硬式野球部に所属していた時には『都立の星』と呼ばれたサウスポーだったので、その運動神経と体力は人並み外れたものがあった。それに一応は剣道場の跡取り息子と言うこともあって護身術ではそれなりの実力もある。逆に考えればどうしてそこまで操縦技術が低いのかが全く説明がつかないのが誠と言う存在だった。
「そうだ!まずは体力!次に気配り!そして根性!それがあればあとはどうにでもなる!操縦技術?そんなもん知るか!経験を積めばそんなもん何とかなる!」
一応、機動部隊の指導教官であるはずのランは高らかにそう言い放った。彼女の『体育会系新人教育』の矛先が誠に向けられているおかげで他の隊員は楽ができているので、誰もランの暴言を止めるものはいなかった。
「じゃあ、走りますんで」
ご機嫌なランの言葉に釈然としないものを抱えながら誠はそう言うしなかった。
走るのがこの『特殊な部隊』での一番の貢献だ。このところ誠はそう思うようになっていた。
「じゃあパーラ。アタシは隊長に呼ばれてっから。神前がさぼろうとしたらどつけ……殴っても蹴ってもいいぞ」
ランはその小学校三年生ぐらいのかわいらしい姿から想像できないような物騒な言葉を吐いた。
「私は嫌ですよ!パワハラなんて!」
ちっちゃな上司の過激な言葉に冷や汗をかきながらパーラは水色の髪をかき上げて笑っていた。
『ちっちゃくて偉大なる中佐殿』と呼ばれているクバルカ・ラン中佐は笑顔で部隊の広すぎるグラウンドを眺めていた。
今日も神前誠曹長の一日はランニングから始まる。
他の司法局実働部隊の隊員は一応ジャージに着替えて誠が走る様を眺めているが、彼に付きあってまじめに走るのは、誠と同じようにこの『特殊な部隊』になじめずにいるこの部隊唯一の真人間のパーラ・ラビロフ中尉くらいだった。
他の隊員達はいつものように疾走する二人の後ろをめんどくさそうに歩いている。しかし、『特殊な部隊』ではそれはいつもの光景だった。
「まじめだねえ……」
ジャージに着替えてすらいない誠の上官に当たる西園寺かなめ中尉は、のんびりとその光景を眺めていた。彼女はサイボーグなので体力強化のためのランニングをしたところで生体部品が消耗するだけだからまるで意味がないどころか逆効果だった。その事実に気づけばかなめがトレーニングに参加しないのは当然と言えば当然だが、そんな彼女を誠はなんとも釈然としない目で見つめていた。
「貴様のうちの草野球チームのエースになるんだ。体力は大事だろ?」
こちらは一応ジャージには着替えている、誠所属の第一小隊小隊長カウラ・ベルガー大尉はいつも通りの仏頂面でタフネスを見せつける誠に目をやっていた。
「神前君!まだ走るの?」
戦闘用人造人間、『ラスト・バタリオン』であり、一般の女性とは比べ物にならない体力の持ち主であるパーラにしても平気で二十キロを超えるランニングをこなす誠についていくのがやっとだった。
「僕、体力だけが取り柄なんで。大学の陸上部のハーフマラソンとかにも助っ人で呼ばれたこともあったんで」
「……ああ、そうなの。……すごいわね」
確かに誠はパイロットとしては三流以下だが、かつて高校で硬式野球部に所属していた時には『都立の星』と呼ばれたサウスポーだったので、その運動神経と体力は人並み外れたものがあった。それに一応は剣道場の跡取り息子と言うこともあって護身術ではそれなりの実力もある。逆に考えればどうしてそこまで操縦技術が低いのかが全く説明がつかないのが誠と言う存在だった。
「そうだ!まずは体力!次に気配り!そして根性!それがあればあとはどうにでもなる!操縦技術?そんなもん知るか!経験を積めばそんなもん何とかなる!」
一応、機動部隊の指導教官であるはずのランは高らかにそう言い放った。彼女の『体育会系新人教育』の矛先が誠に向けられているおかげで他の隊員は楽ができているので、誰もランの暴言を止めるものはいなかった。
「じゃあ、走りますんで」
ご機嫌なランの言葉に釈然としないものを抱えながら誠はそう言うしなかった。
走るのがこの『特殊な部隊』での一番の貢献だ。このところ誠はそう思うようになっていた。
「じゃあパーラ。アタシは隊長に呼ばれてっから。神前がさぼろうとしたらどつけ……殴っても蹴ってもいいぞ」
ランはその小学校三年生ぐらいのかわいらしい姿から想像できないような物騒な言葉を吐いた。
「私は嫌ですよ!パワハラなんて!」
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