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『勝利』を目指す『高貴なるツワモノ』
第103話 貴族の没落
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甲武国海軍加古級重巡洋艦『那珂』。
第六艦隊本隊とは離れて行動していた。
第四惑星『甲武』の軌道上のアステロイドの中にその姿はあった。
そこは甲武国第三演習宙域にある揚陸戦用コロニー群と呼ばれる場所だった。
20年ほど前の『第二次遼州大戦』の激戦地として知られていた。
進軍する『連合軍』と、それを阻止しようとする『枢軸軍』の『甲武国軍』が激しくぶつかった宙域として知られていた。
8年前にここを管理していた『東和共和国平和維持軍』から『甲武国』に返還された後は、海軍の演習場として利用されている。
巡洋艦『那賀』の幹部用私室、近藤忠久中佐はモニターに映る彼と同じ『官派』の同志達の堂々巡りの評定をうんざりした顔で眺めていた。
『近藤君。君が言っていることは分かる。私としても今の西園寺内閣の『同盟協調主義』という姿勢には義憤を感じるものの一人だ。だからこうして君の非公然組織にも助力してきた。しかし今回は……少し分が悪く無いかね……』
甲武国陸軍の将軍の徽章をつけた老人が、モニターの中で髭を弄りながらうつむいて話す。
『そうだとも!我々はここまで来たのだ!悪いことは言わん、これは罠だ。宰相、西園寺義基と、あの義弟嵯峨惟基陸軍少将や、その手先の政治家や幕僚達の罠だ!」
ゆったりとした執務用の椅子に腰掛けた近藤は、どれも消極的な支援者に対し薄ら笑いで答えた。
「皆さんはご自分がこれまでなさってきたことが、『何のため』かお忘れのようですね。西園寺義基首相の明らかに貴族の国家支配の象徴である枢密院を無視した強引なやり口を続けてきたのはご存じですよね。特に海軍ではあの憎らしい兄弟のシンパが大きな顔で歩き回っている。陸軍は前回の全面決起でのトラウマから西園寺政権の軍縮政策に抵抗すら示せないでいる。あの兄弟への恨み……お忘れになったわけではないでしょう?」
そう余裕を持って主張する近藤の言葉に、軍部の領袖である同志達はただうなづくしかなかった。
「国家の根幹を揺るがし、混迷を招いた普通選挙制度。軍の士気低下を招いた士族の恩位による将校、官僚への登用制度の廃止。枢密院の権限を奪い取って、平民達の人気取りに躍起になる庶民院の決議権の優先を選んだ愚行。どれも甲武国の誇りある体制と姿勢をなし崩しにして一弱小国家に貶めた許しがたい所業ばかりです!」
その挑発的にも見える近藤の笑みに、海軍・陸軍の高官達は黙り込んだ。
「これまで我々は卑屈に過ぎました。思えば『官派の乱』と呼ばれた、陸軍の同志達の倒閣運動。あなた達はこの出来事を『過激派の暴挙』と呼んで、負けた同志達を抹殺したt。ですが彼等のの予言した、我々貴族の没落は、そのときには始まっていたことくらい、今になればあなた達にもお分かりになるんじゃないですか?」
甲武国を二分し、争われた『官派の乱』。貴族擁護を掲げて立ち上がった、同志達を見殺しにした罪悪感のある軍の幹部達の表情は曇った。近藤の過激な言葉は彼等の胸に深く突き刺さるものだった。
第六艦隊本隊とは離れて行動していた。
第四惑星『甲武』の軌道上のアステロイドの中にその姿はあった。
そこは甲武国第三演習宙域にある揚陸戦用コロニー群と呼ばれる場所だった。
20年ほど前の『第二次遼州大戦』の激戦地として知られていた。
進軍する『連合軍』と、それを阻止しようとする『枢軸軍』の『甲武国軍』が激しくぶつかった宙域として知られていた。
8年前にここを管理していた『東和共和国平和維持軍』から『甲武国』に返還された後は、海軍の演習場として利用されている。
巡洋艦『那賀』の幹部用私室、近藤忠久中佐はモニターに映る彼と同じ『官派』の同志達の堂々巡りの評定をうんざりした顔で眺めていた。
『近藤君。君が言っていることは分かる。私としても今の西園寺内閣の『同盟協調主義』という姿勢には義憤を感じるものの一人だ。だからこうして君の非公然組織にも助力してきた。しかし今回は……少し分が悪く無いかね……』
甲武国陸軍の将軍の徽章をつけた老人が、モニターの中で髭を弄りながらうつむいて話す。
『そうだとも!我々はここまで来たのだ!悪いことは言わん、これは罠だ。宰相、西園寺義基と、あの義弟嵯峨惟基陸軍少将や、その手先の政治家や幕僚達の罠だ!」
ゆったりとした執務用の椅子に腰掛けた近藤は、どれも消極的な支援者に対し薄ら笑いで答えた。
「皆さんはご自分がこれまでなさってきたことが、『何のため』かお忘れのようですね。西園寺義基首相の明らかに貴族の国家支配の象徴である枢密院を無視した強引なやり口を続けてきたのはご存じですよね。特に海軍ではあの憎らしい兄弟のシンパが大きな顔で歩き回っている。陸軍は前回の全面決起でのトラウマから西園寺政権の軍縮政策に抵抗すら示せないでいる。あの兄弟への恨み……お忘れになったわけではないでしょう?」
そう余裕を持って主張する近藤の言葉に、軍部の領袖である同志達はただうなづくしかなかった。
「国家の根幹を揺るがし、混迷を招いた普通選挙制度。軍の士気低下を招いた士族の恩位による将校、官僚への登用制度の廃止。枢密院の権限を奪い取って、平民達の人気取りに躍起になる庶民院の決議権の優先を選んだ愚行。どれも甲武国の誇りある体制と姿勢をなし崩しにして一弱小国家に貶めた許しがたい所業ばかりです!」
その挑発的にも見える近藤の笑みに、海軍・陸軍の高官達は黙り込んだ。
「これまで我々は卑屈に過ぎました。思えば『官派の乱』と呼ばれた、陸軍の同志達の倒閣運動。あなた達はこの出来事を『過激派の暴挙』と呼んで、負けた同志達を抹殺したt。ですが彼等のの予言した、我々貴族の没落は、そのときには始まっていたことくらい、今になればあなた達にもお分かりになるんじゃないですか?」
甲武国を二分し、争われた『官派の乱』。貴族擁護を掲げて立ち上がった、同志達を見殺しにした罪悪感のある軍の幹部達の表情は曇った。近藤の過激な言葉は彼等の胸に深く突き刺さるものだった。
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