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ハイカラなホテル
第22話 年代物のワイン
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その時急にドアが開き、島田がそのドアにしたたか頭を打ち付けた。
「何してんの?」
頭を抱えて座り込む島田を見下ろしている紺色の髪の女性が誠の視界に入った。入ってきたのはアメリアだった。しばらくして顔を上げると島田は恨みがましい目で彼女を見上げる。
「あっ、島田君ごめんね。痛かったでしょう」
アイシャが謝るが、軽く手を上げた島田はそのまま廊下に消えていった。
「一人で退屈でしょ。うちの部屋来ない?」
「はあ……」
誠はなぜ自分が独りになると言うことを知っているのか不思議に思いながら生返事をする。満足げにアメリアはそれを見つめる。
「誰の部屋だと思ってんだ? ちゃんと持ち主の許可をとれってんだよ!」
怒鳴り込んできたのはかなめだった。そしてそのまま窓辺に立っている誠の目の前まで来るとしばらく黙り込む。
「あの……西園寺さん?」
誠の言葉を聞いてようやくかなめは何かの決意をしたように誠を見上げてきた。
「その……なんだ。ボルドーの2302年ものがあるんだ。一人で飲むのはつまらねえからな。良いんだぜ、別に酒はもう勘弁って思ってるんだったらアタシが全部飲むから」
かなめをちらちら見ながらアメリアが揉み手をしながら近づいてくる。
「いいワインは独り占めするわけ?ひどいじゃないの!」
アメリアがかなめに噛み付く。開かれたドアの外ではカウラが困ったような表情で二人を見つめている。
「わかりました、今行きますよ」
そう言って誠は窓に背を向ける。そして満足そうに頷いているアイシャに手を握られた。
「何やってんだ?オメエは」
タレ目なので威圧してもあまり迫力が無いが、かなめの機嫌を損ねると大変だと誠は慌てて手を離す。カウラにも見つめられて廊下に出た誠は沈黙が怖くなり思わず口を開いた。
「ワインですか。なんか……」
「アタシの柄じゃねえって言いてえのか?一応、甲武の殿上貴族ってもんはそのくらいの味は分かるんだよ!それに日暮れ前だ、ラムにはまだ早いってところだ」
頭を掻きながらかなめが見つめてくるので、笑みを作った誠はそのまま彼女について広い廊下の中央を進んだ。
やわらかい乳白色の大理石で覆われた廊下を歩く。時折開いた大きな窓からは海に突き出した別館が見える。かなめは先頭に立って歩いている。
「本当にすごいですね」
窓の外に広がる眺望に誠は息を呑んだ。広がる海。波の白い線、突き出した岬の上の松の枝ぶり。
「アタシは嫌いだね、こんな風景。成金趣味が鼻につくぜ」
先頭を歩くかなめは吐き捨てるようにそう言った。こう言うとっておきの風景を見慣れすぎたこの人にはつまらなく見えるのだろうと誠は思った。
甲武四大公筆頭西園寺家の当主。擦り寄ってくる人間の数は万を超えたものになるだろう。擦り寄ってくる相手にどう自分を演じて状況から逃れるのか。それはとても扱いに困るじゃじゃ馬を演じること。かなめはそう結論付けたのかもしれないと誠は考えていた。
そんなことを考えている誠を気にするわけでもなく廊下を突き当たったところにある凝った彫刻で飾られた大きな扉にかなめが手をかざした。
「何してんの?」
頭を抱えて座り込む島田を見下ろしている紺色の髪の女性が誠の視界に入った。入ってきたのはアメリアだった。しばらくして顔を上げると島田は恨みがましい目で彼女を見上げる。
「あっ、島田君ごめんね。痛かったでしょう」
アイシャが謝るが、軽く手を上げた島田はそのまま廊下に消えていった。
「一人で退屈でしょ。うちの部屋来ない?」
「はあ……」
誠はなぜ自分が独りになると言うことを知っているのか不思議に思いながら生返事をする。満足げにアメリアはそれを見つめる。
「誰の部屋だと思ってんだ? ちゃんと持ち主の許可をとれってんだよ!」
怒鳴り込んできたのはかなめだった。そしてそのまま窓辺に立っている誠の目の前まで来るとしばらく黙り込む。
「あの……西園寺さん?」
誠の言葉を聞いてようやくかなめは何かの決意をしたように誠を見上げてきた。
「その……なんだ。ボルドーの2302年ものがあるんだ。一人で飲むのはつまらねえからな。良いんだぜ、別に酒はもう勘弁って思ってるんだったらアタシが全部飲むから」
かなめをちらちら見ながらアメリアが揉み手をしながら近づいてくる。
「いいワインは独り占めするわけ?ひどいじゃないの!」
アメリアがかなめに噛み付く。開かれたドアの外ではカウラが困ったような表情で二人を見つめている。
「わかりました、今行きますよ」
そう言って誠は窓に背を向ける。そして満足そうに頷いているアイシャに手を握られた。
「何やってんだ?オメエは」
タレ目なので威圧してもあまり迫力が無いが、かなめの機嫌を損ねると大変だと誠は慌てて手を離す。カウラにも見つめられて廊下に出た誠は沈黙が怖くなり思わず口を開いた。
「ワインですか。なんか……」
「アタシの柄じゃねえって言いてえのか?一応、甲武の殿上貴族ってもんはそのくらいの味は分かるんだよ!それに日暮れ前だ、ラムにはまだ早いってところだ」
頭を掻きながらかなめが見つめてくるので、笑みを作った誠はそのまま彼女について広い廊下の中央を進んだ。
やわらかい乳白色の大理石で覆われた廊下を歩く。時折開いた大きな窓からは海に突き出した別館が見える。かなめは先頭に立って歩いている。
「本当にすごいですね」
窓の外に広がる眺望に誠は息を呑んだ。広がる海。波の白い線、突き出した岬の上の松の枝ぶり。
「アタシは嫌いだね、こんな風景。成金趣味が鼻につくぜ」
先頭を歩くかなめは吐き捨てるようにそう言った。こう言うとっておきの風景を見慣れすぎたこの人にはつまらなく見えるのだろうと誠は思った。
甲武四大公筆頭西園寺家の当主。擦り寄ってくる人間の数は万を超えたものになるだろう。擦り寄ってくる相手にどう自分を演じて状況から逃れるのか。それはとても扱いに困るじゃじゃ馬を演じること。かなめはそう結論付けたのかもしれないと誠は考えていた。
そんなことを考えている誠を気にするわけでもなく廊下を突き当たったところにある凝った彫刻で飾られた大きな扉にかなめが手をかざした。
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