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朝の出来事
第44話 ご機嫌なかなめ
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アンが立ち去った後、誠達は茫然としていた。そこに入れ替わるようにしてサラとパーラがやってきた。
「アメリア、遅いよ!菰田君達が場所取ったからつれて来いって騒いでるんだから」
サラがめんどくさそうにつぶやいた。
「菰田の馬鹿だろ?あんな連中ほっときゃいいんだよ。それより神前。冷えたビールをケースで買って来い金は……」
「そんな、島田先輩。もしかして一人で運ぶんですか?」
いつものような島田の非情な指令に誠は泣き言を言う。だが島田はそんな誠を苛めるのが楽しくてしょうがないと言う顔をしている。
「アタシも行くよ。コンビニの場所とか知らねえだろうし、金はどうせ立替で後で精算だろ?小夏!オメエも来い!なんか買ってやるよ」
その言葉、誰もが予想しなかったかなめの登場に周囲の空気が止まった。
「お前、何か企んでいるのか?」
かなめの気まぐれに恐る恐るカウラがたずねた。サングラスをはずしたかなめは他意が無いというようなまなざしを投げる。
「何が?」
カウラはじっとかなめのタレ目を確認した後、そのまま押し黙る。
「別にいいじゃないの。かなめちゃん、先行ってるわよ」
そう言うとアメリアはいまひとつ納得できないと言うような顔をしている島田達を連れて出て行った。
「じゃあアタシ等も行くぞ」
かなめはそう言うと先頭を切って歩いた。
「神前の兄貴。あの外道、何かあったんですか?」
小夏が小声で誠にささやいた。首をひねってみた誠だが思いつくことも無いので黙ってかなめについて行く事にした。
「うわっ、暑いなあこりゃ」
自動ドアを出たとたんかなめが叫んだ。9時を回ったばかりだと言うのに、破壊的な日差しが一同に容赦なく降り注ぐ。海風も周りのアスファルトに熱せられて、気味が悪くなるほどの熱風となって誠一行を迎える。
「コンビニって近いんですか?」
誠は車止めの坂を下りながらかなめに尋ねてみた。
「なに、ちょっと海水浴場を通り過ぎた所にあるんだ」
かなめはそう言うとずんずん先を歩いていく。サイボーグの彼女ならこのような場所でも平気かも知れないが生身の誠には拷問に近いものだった。先ほどまでのホテルの冷気に慣れた誠の体力を熱風が確実に奪っていく。
そのまま道を下ってみやげ物屋が軒を連ねる海辺の街道に出ると、それまでの熱風が少しはさわやかな海風と呼べるような代物になったていた。誠は防波堤の向こうに広がる砂浜のにぎわう様を見ていた。
「やっぱり結構人が出てますね」
砂浜はパラソルの花があちらこちらに咲き乱れ、波打ち際には海水浴客の頭が浮いたり沈んだりを繰り返している。
「まあ盆過ぎだからイモ洗いにはならねえけどな。小夏のジャリ」
「ジャリじゃねえ、この外道が!」
今度は小夏が頬を膨らませる。彼女も先ほどまでは誠と同様暑さにへこたれそうになっていたのだが海からのさわやかな風に息を吹き返していつもの調子でかなめをにらみつけた。
「アタシ等、一箱づつ持って帰るわけだが、お前持てるのか?一箱」
かなめはそう言って得意げに小夏に目を向ける。誠は伊達に鍛えてはいない、かなめは軍用のサイボーグである。シャムはその小柄な体に見合わず力持ちであることは誠は知っていた。
「アタシだって……」
缶ビール一ケースの重さは、飲み屋の娘である小夏には良く分かっていた。しかし狭いあまさき屋の中を運ぶのとはわけが違う。
「僕が二箱持ちますよ」
当然そうなるだろうと覚悟しながら誠はそう言った。
「アタシが二つ持つから、ジャリはつまみでも持ちな」
サーフボードの青年を避けて振り返ったかなめの言葉に誠と小夏の目が点になった。明らかにいつものかなめが口にする言葉では無かった。
「おい、外道!何か後ろめたいことでもあるのか?」
小夏が生意気にそう言った。いつものかなめならそのまま小夏の頭をつかんでヘッドロックをかますところだ。しかし、振り向いたかなめは口元に不敵な笑いを浮かべるだけだった。
「一応この体だって握力250kgあるんだぜ、アタシは。缶ビール二ケースくらい余裕だよ」
かなめは上機嫌に話す。そしてそのまま彼女は浜辺に目を向けた。
「アメリア、遅いよ!菰田君達が場所取ったからつれて来いって騒いでるんだから」
サラがめんどくさそうにつぶやいた。
「菰田の馬鹿だろ?あんな連中ほっときゃいいんだよ。それより神前。冷えたビールをケースで買って来い金は……」
「そんな、島田先輩。もしかして一人で運ぶんですか?」
いつものような島田の非情な指令に誠は泣き言を言う。だが島田はそんな誠を苛めるのが楽しくてしょうがないと言う顔をしている。
「アタシも行くよ。コンビニの場所とか知らねえだろうし、金はどうせ立替で後で精算だろ?小夏!オメエも来い!なんか買ってやるよ」
その言葉、誰もが予想しなかったかなめの登場に周囲の空気が止まった。
「お前、何か企んでいるのか?」
かなめの気まぐれに恐る恐るカウラがたずねた。サングラスをはずしたかなめは他意が無いというようなまなざしを投げる。
「何が?」
カウラはじっとかなめのタレ目を確認した後、そのまま押し黙る。
「別にいいじゃないの。かなめちゃん、先行ってるわよ」
そう言うとアメリアはいまひとつ納得できないと言うような顔をしている島田達を連れて出て行った。
「じゃあアタシ等も行くぞ」
かなめはそう言うと先頭を切って歩いた。
「神前の兄貴。あの外道、何かあったんですか?」
小夏が小声で誠にささやいた。首をひねってみた誠だが思いつくことも無いので黙ってかなめについて行く事にした。
「うわっ、暑いなあこりゃ」
自動ドアを出たとたんかなめが叫んだ。9時を回ったばかりだと言うのに、破壊的な日差しが一同に容赦なく降り注ぐ。海風も周りのアスファルトに熱せられて、気味が悪くなるほどの熱風となって誠一行を迎える。
「コンビニって近いんですか?」
誠は車止めの坂を下りながらかなめに尋ねてみた。
「なに、ちょっと海水浴場を通り過ぎた所にあるんだ」
かなめはそう言うとずんずん先を歩いていく。サイボーグの彼女ならこのような場所でも平気かも知れないが生身の誠には拷問に近いものだった。先ほどまでのホテルの冷気に慣れた誠の体力を熱風が確実に奪っていく。
そのまま道を下ってみやげ物屋が軒を連ねる海辺の街道に出ると、それまでの熱風が少しはさわやかな海風と呼べるような代物になったていた。誠は防波堤の向こうに広がる砂浜のにぎわう様を見ていた。
「やっぱり結構人が出てますね」
砂浜はパラソルの花があちらこちらに咲き乱れ、波打ち際には海水浴客の頭が浮いたり沈んだりを繰り返している。
「まあ盆過ぎだからイモ洗いにはならねえけどな。小夏のジャリ」
「ジャリじゃねえ、この外道が!」
今度は小夏が頬を膨らませる。彼女も先ほどまでは誠と同様暑さにへこたれそうになっていたのだが海からのさわやかな風に息を吹き返していつもの調子でかなめをにらみつけた。
「アタシ等、一箱づつ持って帰るわけだが、お前持てるのか?一箱」
かなめはそう言って得意げに小夏に目を向ける。誠は伊達に鍛えてはいない、かなめは軍用のサイボーグである。シャムはその小柄な体に見合わず力持ちであることは誠は知っていた。
「アタシだって……」
缶ビール一ケースの重さは、飲み屋の娘である小夏には良く分かっていた。しかし狭いあまさき屋の中を運ぶのとはわけが違う。
「僕が二箱持ちますよ」
当然そうなるだろうと覚悟しながら誠はそう言った。
「アタシが二つ持つから、ジャリはつまみでも持ちな」
サーフボードの青年を避けて振り返ったかなめの言葉に誠と小夏の目が点になった。明らかにいつものかなめが口にする言葉では無かった。
「おい、外道!何か後ろめたいことでもあるのか?」
小夏が生意気にそう言った。いつものかなめならそのまま小夏の頭をつかんでヘッドロックをかますところだ。しかし、振り向いたかなめは口元に不敵な笑いを浮かべるだけだった。
「一応この体だって握力250kgあるんだぜ、アタシは。缶ビール二ケースくらい余裕だよ」
かなめは上機嫌に話す。そしてそのまま彼女は浜辺に目を向けた。
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