特殊装甲隊 ダグフェロン『廃帝と永遠の世紀末』② 海と革命家、時々娘

橋本 直

文字の大きさ
96 / 111
下士官寮

第96話 引っ越しそば

しおりを挟む
「なんでオメエがいるんだよ。カウラ」 

 かなめは喫煙所のソファーに身を任せる。そして一言そう吐き捨てるように言うとタバコに火を点す。そのまま大きく息を飲み込み、天井に向けて煙を吐いた。

「私がいるとまずいことでもあるのか?」 

 そんなかなめの態度に苛立ちながらカウラがかなめの前に立った。

「ああ、目障りだね」 

 そう言いながらまたタバコを口にくわえる。明らかに不機嫌になるカウラに誠はおどおどしながらどうすれば間を取り持てるか考えていた。

「あの、良いですか?」 

 にらみ合う二人に声をかけたのは少年兵アン・ナン・パク曹長だった。

「何だよ。タバコを止めろとか言うのは止めとけよ」 

「違います。嵯峨隊長にこれをもってくるように言われたので」 

 そう言ってアンがスーパーのレジ袋を差し出した。とりあえず誠がそれを受け取って中身を見る。

 手打ちそばが入っていた。

「本部で嵯峨隊長にこれをみんなで食えって渡されたんだが。そのまま帰っちゃって……あの人は一体、何しに本部まで来てるんですか?」 

 アンがカウラの方に目をやる。

「昨日言ってた引越しそばだな。誠、パーラを呼んでくれないか」 

 カウラの言葉に誠はそのままアメリアの部屋の前に向かった。島田をはじめ、手伝っていた面々はダンボールから漫画を取り出して読んでいた。

「パーラさんいますか?」 

「何?」 

 部屋の中からパーラが顔を出す。当然、彼女の手にも少女マンガが握られていた。

「なんか隊長がそば打ったってことで、アン君が来てるんですけど」

 パーラは呆れたようにすぐに大きなため息をつく。 

「隊長はこういうことだけはきっちりしてるからね。アメリア!後は自分でやってよ」 

 そう言うと漫画をダンボールに戻してパーラは立ち上がった。

「サラ、それに西君。ちょっとそば茹でるの手伝ってよ」 

 パーラの言葉に漫画を読みふけっていたサラ達は重い腰を上げた。パーラは一路、食堂へと向かった。

「アン君。こっちよ」 

 喫煙所前で突っ立っていたアンに声をかけると、パーラはそのまま食堂へ向かった。

「そばか、いいねえ」 

 タバコを吸い終えたかなめがいる。

「手伝うことも有るかも知れないな」 

 そう言うとカウラは食堂へ向かう。

「何言ってんだか。どうせ邪魔にされるのが落ちだぜ」 

 かなめはあざ笑うようにそう言うとそのまま自分の部屋へと帰っていった。誠は取り残されるのも嫌なので、そのまま厨房に入った。

「パーラさん。こっちの大鍋の方が良いんじゃないですか?」 

 奥の戸棚を漁っている西の高い音程の叫び声が響く。

「しかし良い所じゃないですか。本部から近いしこうして食事まで出る……建物はぼろいですけどね」 

 周りを見回すアンにカウラがきつい視線を送ってくるのを感じて、誠はそのまま厨房に入った。

「誠君。竹のざるってある?」 

「無いですね。それに海苔の買い置きって味付けしか無いですよ」 

 誠は食器棚を漁っているパーラに答えた。

「わさびはあるわ。それにミョウガも昨日とって来たのがあるわよ」 

「グリファン少尉。あんまりそばの薬味にはミョウガを使わないと思うんですけど。ネギがあるからそれだけで十分ですよ!」 

「だから冗談よ!」 

 西に突っ込まれて、サラは微妙な表情をしながら冷蔵庫から冷えた水を取り出した。

「まだ早いわよ。じゃあ金ざるで代用するから。あと神前君は手伝うつもりが無かったら外で待っててくれない?」 

 パーラは慣れた調子で大なべに火をつけた。邪魔になるのもなんだと思い直して誠は食堂に戻った。

「はいはい!邪魔ですよ!」

 今度はサラがそばを手に食堂に腰かけようとしていた誠を追い立てる。

「追い出されたのか?」 

 何度も食堂の中を振り返りつつ誠が渋々廊下に出た。廊下と階段の間の喫煙所でタバコを吸うわけでもなアンが笑っていた。

「とりあえずお水を」

 食堂からお盆を持って出てきたサラからアンは冷えた水を受け取った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。

暗算参謀は王国を追放される――戦わずして勝ち続けた男の失脚譚――

まさき
ファンタジー
現代日本から異世界へ転生した主人公。 彼に与えられた唯一の能力は、瞬時にあらゆる数値を弾き出す「暗算」だった。 剣も魔法も使えない。 だが確率と戦略を読み解くことで、王国の戦を幾度も勝利へ導いていく。 やがて王国の戦略顧問として絶大な信頼を得るが、 完璧すぎる功績は貴族の嫉妬を招き、巧妙な罠により不正の罪を着せられてしまう。 証明できぬ潔白。 国の安定を優先した王の裁定。 そして彼は、王国を追放される。 それでも彼は怒らない。 数字は嘘をつかないと知っているからだ。 戦わずして勝ち続けた参謀が、国を去るその日までを描く、 知略と静かな誇りの異世界戦略譚。

黄金の魔族姫

風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」 「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」  とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!  ──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?  これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。  ──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!   ※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。 ※表紙は自作ではありません。

処刑を望んだ悪役令嬢ですが、幼なじみの騎士が手放してくれません

藤原遊
恋愛
「私は処刑される運命の悪役令嬢――そう信じて、死を望んでいた。 けれど、幼なじみの騎士は『この命に代えても守る』と離してくれなくて……?」 侯爵令嬢アメリアは、幼い頃から「悪役令嬢」として囁かれてきた。 その冷たい視線と噂の中で、彼女は静かに己の役目を受け入れていた――。 けれど、すべてを遠ざけようとする彼女の前に現れたのは、まっすぐに想いを示す幼なじみの騎士。 揺らぐ心と、重ねてきた日々。 運命に逆らえないはずの未来に、ほんの少しの希望が灯る。 切なく、温かく、甘やかに紡がれる悪役令嬢物語。 最後まで見届けていただければ幸いです。 ※ 攻略対象の叔母である悪役令嬢に転生したけれど、なぜか攻略対象の甥に激重に愛されてます にて、親世代の恋愛模様を描いてます。

殲滅(ジェノサイド)ですわ~~!! ~異世界帰りの庶民派お嬢様、ダンジョン無双配信を始めます~

SAIKAI
ファンタジー
「わたくしの平穏なニート生活を邪魔するゴミは……殲滅(ジェノサイド)ですわ~~!!」  ブラック企業の理不尽な上司に対し、「代わりがいくらでもいるとおっしゃるなら、さっそくその有能な方を召喚なさってはいかが?」と言い残し、颯爽と退職届を置いてきた華園凛音(はなぞのりおん)。  実家で優雅なニート生活を満喫しようとした彼女だったが、あろうことか自宅の裏庭にダンジョンが出現してしまう。 「お庭にゴミを捨てるなんて、育ちが悪くってよ?」  実は彼女、かつて学生時代に異世界に召喚され、数多の魔王軍を「殲滅(ジェノサイド)」してきた伝説の勇者だった。 現代に戻り力を封印していた凛音だが、暇つぶしと「デパ地下のいいケーキ代」を稼ぐため、ホームセンターで購入したお掃除用具(バール)を手に、動画配信プラットフォーム『ToyTube』でのダンジョン配信を決意する!  異世界の常識と現代の価値観がズレたままの凛音がバールを一振りするたび、世界中の視聴者が絶叫し、各国の専門家が物理法則の崩壊に頭を抱え、政府の調査団が土下座で資源を請い願う。  しかし本人はいたって庶民派。 「皆様、スパチャありがとうございますわ! これで今夜は高い方のメンチカツですわ! 最高ですわ~~!!」  これは、本人は至って普通の庶民派お嬢様だと思っているニートが、無自覚に世界ランクをのぼり詰める殲滅の記録。

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

レンタル従魔始めました!

よっしぃ
ファンタジー
「従魔のレンタルはじめました!」 僕の名前はロキュス・エルメリンス。10歳の時に教会で祝福を受け、【テイム】と言うスキルを得ました。 そのまま【テイマー】と言うジョブに。 最初の内はテイムできる魔物・魔獣は1体のみ。 それも比較的無害と言われる小さなスライム(大きなスライムは凶悪過ぎてSランク指定)ぐらいしかテイムできず、レベルの低いうちは、役立たずランキングで常に一桁の常連のジョブです。 そんな僕がどうやって従魔のレンタルを始めたか、ですか? そのうち分かりますよ、そのうち・・・・

処理中です...