特殊装甲隊 ダグフェロン 第一部 蘇る火付盗賊改方 (ひつけとうぞくあらためかた) とは……殺人許可書を持つ「特殊な部隊」

橋本 直

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プライドゼロの策士の計略

駄目隊長とちんちくりんエースの楽屋裏

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 静かに隊長室の扉が閉まった。

「神前のツッコミ。伸びるんじゃないの……あとは場数だな、場数」

 そう言いながら嵯峨はタバコの箱を取り上げる。

「そんな話より。本当に使えるのか?アイツ」

 ランは笑顔を浮かべながら隊長室の前に立った。

「俺とお前じゃ足りないと思ってね、『力』を使う時に法律的に問題のない人間。それで神前を呼んだわけ」

 そう言って嵯峨はタバコを箱から一本取り出し口にくわえる。

「しかし、よくあのお方が許したなそんなこと」

 ランはそう言いながらニヤニヤ笑っている

「そう言うお方だよ、あのお方は。自分の息子の力が正しく使われることを望んでおられる。そう言う立派なお方だよこのお方は」

 そう言って嵯峨は手前にあったスイッチに手をかざした。フォログラムに浮かんだ写真には学生服を着た誠と二十歳ぐらいに見える女性が映し出されていた。

「アタシが言える立場じゃねーが。神前のかーちゃん、よく身元がばれないもんだな。どう見ても姉貴にしか見えねーぞ」

 ランは半分呆れたような口調でつぶやく。

「なあに、知ってるんだろうな、諜報機関と接触があった時に俺にもその情報が回ってきた。公然の秘密、この遼州系の独立を決めた遼の国の巫女、それが今でも生きているんだ。表ざたにすれば、立場がヤバくなる人間は五万といる。だから、誰も知っていても知らないふりをする……違うか?俺も……そしてお前も」

 そう言って嵯峨はタバコの煙を天井に向けて吐き出す。

「もう、隠し通せなくなったってことか。その為の手駒はアタシとあんただけじゃ……」

 ランの表情が神妙なものに変わった。

「足りないね。また、2枚大駒と1枚使える駒の手配が済んでいるが、どれも時間がかかる。その前に仕掛けたい……その時は言うよ。手駒にされるのはこりごりなんだろ……空気読んで……やる」

 嵯峨は引き出しから誠の顔のプリントアウトされた書面を取り出す。

「こいつに一つ、『鬼退治をさせる」。好きだろ?『鬼退治』。桃太郎の役を『誠』に変えたお遊戯会の舞台を俺が仕立てて、オメエが演技指導すれば確実に誠は『桃太郎』として『鬼』を退治する。もう『人の皮をかぶった鬼』はうようよいる世の中だ。ターゲットには事欠かないんだ。混じってたまに人間が死ぬが、そいつ等はみんな自殺志願者だから自殺だな。ただ、それ以外の人が死んだり、後でもめたりするんだ……そのタイミングは俺からでいい?」

 そう言って嵯峨は静かに目を閉じた。

「分かった。アンタに任せる」

 そう言ってランは嵯峨に背を向けて隊長室を出て行った。

「やりたくないよ……俺だって。でも、俺しかいないんだもん仕方ないよ。鬼退治なんてうんざり、鬼ヶ島から出した馬鹿!責任取れ!」

 そう言いながら嵯峨は袖机の引き出しから先程の風俗情報誌を取り出した。
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