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第三十三章 『悪内府』脅迫と彼の言う協調
第155話 もう一人のこの事件の主役
「しかし災難ですね、カント将軍も。ゲリラへの機動兵器の譲渡の段取りを指示してくれたあなたが、その計画を潰そうとする俺にその情報が筒抜けだったなんて想像もしてないんじゃないですか?ああ、あなたには情報が筒抜けだった自覚は無いみたいですね。情報を盗まれた被害者気取りだ。今のあなたはずいぶんと嫌な顔してますよ。そんなに俺が言うことが気に障りますか?」
そう言うと嵯峨はこの部屋の主の意向を聞かないで胸のポケットからタバコを取り出す。母国のゲルパルトには喫煙者は皆無に等しく、カーンは不快そうな顔でタバコに火をつける嵯峨を見つめていた。
「なに、彼はそこまでの人物だったそれだけの話だ。私の眼鏡にはかなわない存在だった。この世界から消えても誰も困らない程度の軽い命の持主。そんなところかな」
タバコを吸う嵯峨に明らかに嫌な顔をしながらカーンはそう返した。
「つれないねえ、あんたがどれだけそう言う言葉で部下を切り捨てて行ったかよくわかりますよ。私にとってはいい反面教師だ。同じ戦争犯罪人同士だが、あんたと俺には徹底的な違いがあるようだ。あんたは平気で部下を見捨てるが、俺はあの戦争で誰一人部下を見捨てたことは無かった。それだけがあの戦争で俺がした『善行』だと思ってますよ」
嵯峨のふかしたタバコの煙がカーンを襲う。その匂いにさらに不愉快そうな顔をするカーンだが、嵯峨はまるでそれを楽しんでいるように口元にだけ笑顔を作って見せる。
「『善行』ねえ……その結果が部下を逃がすためにアメリカに投降して時間稼ぎをして自分が強者たる法術師から『最弱の法術師』に成り下がる結果を生んだわけだ。私に言わせれば、君のその『善行』は愚かに過ぎるよ。より優れたものが生き延びる、それがこの世界の秩序と言うものだ。だったら自ら力を捨てるような愚行は行うべきではない。どんな犠牲を払っても力だけは守らなければならなかった……違うかね?」
カーンはベーコンを食べ終わるとそう言って嵯峨の事を軽蔑するようなまなざしで見つめた。彼に言わせれば部下などいくらでも代わりが居る『使い捨ての駒』であり、自分の理想を実現することがその『使い捨ての駒』への最大の手向けであると言う思想を持っていた。
「使い古しの優性論ですか?社会学的なその論理が実際に意味を持っていたのは20世紀はじめの話ですよ。それも当時のおめでたい為政者や民族主義者なんかが気に食わない奴をぶっ殺すのに便利なお題目として使っただけで本気で信じてたとは俺も思えないんですがね」
カーンは苛立っていた。目の前の男が法律学・政治学・経済学の博士号を持つ秀才であることはカーンも知ってはいた。だが、それ以上に屁理屈をこねる天才であることは今日初めて目の前に嵯峨と言う男を見てようやく理解できた。
「なるほど、君がただの野蛮人でないことはよくわかったよ。そして、そんな秀才がただ情報の提供の礼を言うためだけにここに来たわけじゃないということもね」
前の戦争が終わった時の出発点が同じはずなのに二人の立場には天と地ほどの開きがあるのを自覚しながらカーンは嵯峨に本題を訪ねた。
「ほう、物分りがいいですね。もっとガチガチで俺の顔を見たら機嫌を損ねて部屋に帰るとばかり思っていましたが」
再び嵯峨はタバコの煙を吐き出す。それを受けてカーンは咳き込むが、嵯峨はそれを狙っていたとでも言うように笑顔でカーンを見つめた。
そう言うと嵯峨はこの部屋の主の意向を聞かないで胸のポケットからタバコを取り出す。母国のゲルパルトには喫煙者は皆無に等しく、カーンは不快そうな顔でタバコに火をつける嵯峨を見つめていた。
「なに、彼はそこまでの人物だったそれだけの話だ。私の眼鏡にはかなわない存在だった。この世界から消えても誰も困らない程度の軽い命の持主。そんなところかな」
タバコを吸う嵯峨に明らかに嫌な顔をしながらカーンはそう返した。
「つれないねえ、あんたがどれだけそう言う言葉で部下を切り捨てて行ったかよくわかりますよ。私にとってはいい反面教師だ。同じ戦争犯罪人同士だが、あんたと俺には徹底的な違いがあるようだ。あんたは平気で部下を見捨てるが、俺はあの戦争で誰一人部下を見捨てたことは無かった。それだけがあの戦争で俺がした『善行』だと思ってますよ」
嵯峨のふかしたタバコの煙がカーンを襲う。その匂いにさらに不愉快そうな顔をするカーンだが、嵯峨はまるでそれを楽しんでいるように口元にだけ笑顔を作って見せる。
「『善行』ねえ……その結果が部下を逃がすためにアメリカに投降して時間稼ぎをして自分が強者たる法術師から『最弱の法術師』に成り下がる結果を生んだわけだ。私に言わせれば、君のその『善行』は愚かに過ぎるよ。より優れたものが生き延びる、それがこの世界の秩序と言うものだ。だったら自ら力を捨てるような愚行は行うべきではない。どんな犠牲を払っても力だけは守らなければならなかった……違うかね?」
カーンはベーコンを食べ終わるとそう言って嵯峨の事を軽蔑するようなまなざしで見つめた。彼に言わせれば部下などいくらでも代わりが居る『使い捨ての駒』であり、自分の理想を実現することがその『使い捨ての駒』への最大の手向けであると言う思想を持っていた。
「使い古しの優性論ですか?社会学的なその論理が実際に意味を持っていたのは20世紀はじめの話ですよ。それも当時のおめでたい為政者や民族主義者なんかが気に食わない奴をぶっ殺すのに便利なお題目として使っただけで本気で信じてたとは俺も思えないんですがね」
カーンは苛立っていた。目の前の男が法律学・政治学・経済学の博士号を持つ秀才であることはカーンも知ってはいた。だが、それ以上に屁理屈をこねる天才であることは今日初めて目の前に嵯峨と言う男を見てようやく理解できた。
「なるほど、君がただの野蛮人でないことはよくわかったよ。そして、そんな秀才がただ情報の提供の礼を言うためだけにここに来たわけじゃないということもね」
前の戦争が終わった時の出発点が同じはずなのに二人の立場には天と地ほどの開きがあるのを自覚しながらカーンは嵯峨に本題を訪ねた。
「ほう、物分りがいいですね。もっとガチガチで俺の顔を見たら機嫌を損ねて部屋に帰るとばかり思っていましたが」
再び嵯峨はタバコの煙を吐き出す。それを受けてカーンは咳き込むが、嵯峨はそれを狙っていたとでも言うように笑顔でカーンを見つめた。
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