9 / 30
第一章 ユースとエリー
第八話 ショッピングデート②
しおりを挟む
ICカード店にやって来た。
「いらっしゃいま……え、エリー様!!?」
「久しぶりね。」
エリーとこの店主は顔見知りだろうか。
(……いや、王女が来てたら覚えもするな。)
「で、そこの自然戦士はどちら様?」
「ユース・A・ルーヴェ、自然戦士歴一日の新人よ。ユースは初めてだから、私がどんな種類のカードがおすすめか教えてあげるわ。」
エリーはショーウィンドウに並べてあるカードを一つ一つ紹介し始めた。
「非殺傷任務において『変化~睡眠~』と『変化~麻痺~』のICカードは欠かせないわね。隠密行動では『変化~透明~』、『変化~無音~』、『変化~無探~』(対レーダーステルス)が有効だわ。コマンドレシーバーには、ICカードは一度に三つまでしかセットできないから、状況に応じて使い分けてね。」
「なるほど。」
「後、『睡眠』や『麻痺』、『変化~徹甲~』みたいな戦闘で使えるカードは、武器にセットすると効率よく使えるわよ。」
「武器にもカードをセットできるのか。」
「あとは『変身』系のカードね。」
「え? ほかの自然戦士にも変身できるの?」
「できないけど、セットした属性の技が使えるわ。勿論、太陽戦士が『氷結』のカードを使って、氷結戦士並みに操れるわけがないけどね。それから自分と同じ属性のカードをセットすると、霊法(炎波など)の威力がかなり上昇するわ。」
「ふーん。じゃあ『変身~太陽~』のカードは買っておこうかな。」
……そうしてユースは買い物を終えた。
ここで買ったものは
・変身~太陽~
・変身~水流~
・変身~突風~
・変化~睡眠~
・変化~麻痺~
・変化~透明~
・変化~無音~
・変化~無探~
の計八つで、合計金額は十五万エウロー。
ユースはそれを現金で支払った。
店主は「こ、こんな大金一体どこで……」と驚いていた。
「まあ、ちょっとした臨時収入(皇帝を暗殺から救った報奨金)があったもので……」
「さて、ICカードの次は武器調達ね。」
「武器ならもう剣があるけど。」
「それだけじゃ足りないわ。」そう言って足早に武器屋へと歩いて行った。
「……そういえばエリー、なんで僕の任務を手伝ってくれるの?」
「なんでって、……ユース一人じゃ頼りないって思ったからよ。」
「にしてもだよ?数時間前に会ったばかりで、しかもその時は滅茶苦茶暴言吐いてローマンド滅ぼす宣言してたのに。」
「!あ、あれは……! その、違うの! まさか私のこと知らない人がいるとは思わなかったから……」
「ずいぶんな自信だな。」
「テレビとかで私の事見たことないの!?」
「孤児院にテレビはあったけど、ほとんど年下の子が見てたからな。それにスマートフォンも買えないほど貧乏だったからね、ウチは。」
「そんなに田舎なの!? そりゃあ奴隷商人が身を隠すのに持って来いね。」
「まだ院長が犯人とは決まって……いやそうじゃなくて。」
ユースはエリーの正面に立ちふさがった。
「僕と最初に会ってから、次に会うまで、つまりワイルド大隊長に城を案内してもらっている間、何があった!?」
「……何、私の事疑ってんの?」
「まあ、そんな急に態度が変わるはずないからねぇ。」
「……まあ、いろいろ聞いたのよ、ロキから……」
そういってエリーはおもむろに語りだした。
さかのぼること数時間前、エリーがロキに城を案内されていた時だった。
「エリー殿下、ユース殿の事はお嫌いですか?」
「何当たり前の事言ってるのよ!あんな奴、嫌いにならないほうがおかしいじゃない!」
「……ユース殿は、自然戦士になってからまだ一日で、右も左もわからないのです。しかも初日に皇帝の命を救った男として、今やローマンド中で彼の名が知られています。だからユース殿は内心、期待の重圧に苦しんでるんだと思います。」
「……あのユースが?」
ロキはユースの心情を良く察知していた。
ユースは、感情を表に出すことがほとんどないが、その裏では自分が置かれた状況を良く思っていなかった。
幼少期に内戦に巻き込まれて両親を失い、その後は何とか平和に静かに過ごしていたら、突然軍がやってきて軍に入れと言われ、たまたま皇帝の命を救ったがために部下を監督する責任を負い、ついには育ての親を捕まえてこいなどと言われたら、さすがのユースも精神的に疲弊するだろう。
ロキ・F・ワイルド大隊長は、長く軍人として働き、部下に慕われてきた。
その経験と鋭い観察力があったからこそ、ユースの心情も察することができたのかもしれない……
「……で、急に優しくなったというわけか。」
「勘違いしないでよね。私も先輩自然戦士として監督責任があるんだから。」
「君の傘下に入った覚えはないけどね。」
「私は王族よ!?もうちょっと敬ったらどうなの!?」
「僕は肩書でマウントを取ろうとするやつが嫌いだ。」
「あっそう!私もあんたの事嫌いだから!……ところでどこ行くんだっけ?」
「武器屋でしょ。」
「そ、そう武器屋!ほら、さっさと行くわよ!」
二人の距離は、初対面の時から急速に縮まっていた。
第九話 ショッピングデート③ に続く
あとがき:「自然戦士」専門用語其の五
「Imagination Creating カード」
自然戦士のキーアイテム。
装着者自身の想像エネルギーを満たした「変身」カードや、霊法や武器の性能を強化する「変化」カード、武器そのものをデータ化して、レシーバーを通して再構築する「装備」カードなどがある。
コマンドレシーバーに装着すると、カードの中にあるエネルギーを放出して、透明で何も書かれていない「虚空」カードとなり、取り出す寸前にエネルギーや武器を再充填する必要がある。
「いらっしゃいま……え、エリー様!!?」
「久しぶりね。」
エリーとこの店主は顔見知りだろうか。
(……いや、王女が来てたら覚えもするな。)
「で、そこの自然戦士はどちら様?」
「ユース・A・ルーヴェ、自然戦士歴一日の新人よ。ユースは初めてだから、私がどんな種類のカードがおすすめか教えてあげるわ。」
エリーはショーウィンドウに並べてあるカードを一つ一つ紹介し始めた。
「非殺傷任務において『変化~睡眠~』と『変化~麻痺~』のICカードは欠かせないわね。隠密行動では『変化~透明~』、『変化~無音~』、『変化~無探~』(対レーダーステルス)が有効だわ。コマンドレシーバーには、ICカードは一度に三つまでしかセットできないから、状況に応じて使い分けてね。」
「なるほど。」
「後、『睡眠』や『麻痺』、『変化~徹甲~』みたいな戦闘で使えるカードは、武器にセットすると効率よく使えるわよ。」
「武器にもカードをセットできるのか。」
「あとは『変身』系のカードね。」
「え? ほかの自然戦士にも変身できるの?」
「できないけど、セットした属性の技が使えるわ。勿論、太陽戦士が『氷結』のカードを使って、氷結戦士並みに操れるわけがないけどね。それから自分と同じ属性のカードをセットすると、霊法(炎波など)の威力がかなり上昇するわ。」
「ふーん。じゃあ『変身~太陽~』のカードは買っておこうかな。」
……そうしてユースは買い物を終えた。
ここで買ったものは
・変身~太陽~
・変身~水流~
・変身~突風~
・変化~睡眠~
・変化~麻痺~
・変化~透明~
・変化~無音~
・変化~無探~
の計八つで、合計金額は十五万エウロー。
ユースはそれを現金で支払った。
店主は「こ、こんな大金一体どこで……」と驚いていた。
「まあ、ちょっとした臨時収入(皇帝を暗殺から救った報奨金)があったもので……」
「さて、ICカードの次は武器調達ね。」
「武器ならもう剣があるけど。」
「それだけじゃ足りないわ。」そう言って足早に武器屋へと歩いて行った。
「……そういえばエリー、なんで僕の任務を手伝ってくれるの?」
「なんでって、……ユース一人じゃ頼りないって思ったからよ。」
「にしてもだよ?数時間前に会ったばかりで、しかもその時は滅茶苦茶暴言吐いてローマンド滅ぼす宣言してたのに。」
「!あ、あれは……! その、違うの! まさか私のこと知らない人がいるとは思わなかったから……」
「ずいぶんな自信だな。」
「テレビとかで私の事見たことないの!?」
「孤児院にテレビはあったけど、ほとんど年下の子が見てたからな。それにスマートフォンも買えないほど貧乏だったからね、ウチは。」
「そんなに田舎なの!? そりゃあ奴隷商人が身を隠すのに持って来いね。」
「まだ院長が犯人とは決まって……いやそうじゃなくて。」
ユースはエリーの正面に立ちふさがった。
「僕と最初に会ってから、次に会うまで、つまりワイルド大隊長に城を案内してもらっている間、何があった!?」
「……何、私の事疑ってんの?」
「まあ、そんな急に態度が変わるはずないからねぇ。」
「……まあ、いろいろ聞いたのよ、ロキから……」
そういってエリーはおもむろに語りだした。
さかのぼること数時間前、エリーがロキに城を案内されていた時だった。
「エリー殿下、ユース殿の事はお嫌いですか?」
「何当たり前の事言ってるのよ!あんな奴、嫌いにならないほうがおかしいじゃない!」
「……ユース殿は、自然戦士になってからまだ一日で、右も左もわからないのです。しかも初日に皇帝の命を救った男として、今やローマンド中で彼の名が知られています。だからユース殿は内心、期待の重圧に苦しんでるんだと思います。」
「……あのユースが?」
ロキはユースの心情を良く察知していた。
ユースは、感情を表に出すことがほとんどないが、その裏では自分が置かれた状況を良く思っていなかった。
幼少期に内戦に巻き込まれて両親を失い、その後は何とか平和に静かに過ごしていたら、突然軍がやってきて軍に入れと言われ、たまたま皇帝の命を救ったがために部下を監督する責任を負い、ついには育ての親を捕まえてこいなどと言われたら、さすがのユースも精神的に疲弊するだろう。
ロキ・F・ワイルド大隊長は、長く軍人として働き、部下に慕われてきた。
その経験と鋭い観察力があったからこそ、ユースの心情も察することができたのかもしれない……
「……で、急に優しくなったというわけか。」
「勘違いしないでよね。私も先輩自然戦士として監督責任があるんだから。」
「君の傘下に入った覚えはないけどね。」
「私は王族よ!?もうちょっと敬ったらどうなの!?」
「僕は肩書でマウントを取ろうとするやつが嫌いだ。」
「あっそう!私もあんたの事嫌いだから!……ところでどこ行くんだっけ?」
「武器屋でしょ。」
「そ、そう武器屋!ほら、さっさと行くわよ!」
二人の距離は、初対面の時から急速に縮まっていた。
第九話 ショッピングデート③ に続く
あとがき:「自然戦士」専門用語其の五
「Imagination Creating カード」
自然戦士のキーアイテム。
装着者自身の想像エネルギーを満たした「変身」カードや、霊法や武器の性能を強化する「変化」カード、武器そのものをデータ化して、レシーバーを通して再構築する「装備」カードなどがある。
コマンドレシーバーに装着すると、カードの中にあるエネルギーを放出して、透明で何も書かれていない「虚空」カードとなり、取り出す寸前にエネルギーや武器を再充填する必要がある。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
『まて』をやめました【完結】
かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。
朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。
時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの?
超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌!
恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。
貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。
だから、もう縋って来ないでね。
本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます
※小説になろうさんにも、別名で載せています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる