カウドゥール等(メインキャラ)の短編集

東龍ベコス

文字の大きさ
16 / 57
カウドゥール

グロピーとFt~ネズミたんモコモコ☆~

しおりを挟む
「まず、かわいい下着を買うぞ~♪」
 
 モコモコフワフワの愛らしい帽子をかぶった幼女・Ftが、ご機嫌な様子で賑やかな街頭を行く。スキップする度に、マロン色のツインテールがぴょいぴょいはねる。

 その後ろを10代後半くらいの青年・Rtが「姉さん待って」と追いかける。『姉さん』と言う割に青年の髪は少女と異なっていて、青い。
 
 と、いうわけで2人は義姉弟である。

「大人の体に戻ったら、まずはカワイイぱんつ! そして、念願のブラジャーを着けるぞぉぉぉ~!!」

 こう見えて、幼女は実は三十路である。
 幼児愛好者の相手をするために実父に薬で体の成長を止められ、実父が亡くなった現在も薬の効果は切れず、未だに幼い体型のままなのである。

 昔は「ずっと若いままだワーイ」と気楽に構えていたが、年をとっていくとだんだん「子供を作れないのか」「マトモな仕事に就けないのか」と不安と不満ばかりになってきた。
 
 それに、下着。
 フリフリや色付きの下着を買いたいのだが、店員のおばさんに「お嬢ちゃんは、こんなハデなおぱんつはダメよぉ~?」と、白い下着・もしくはかぼちゃパンツを勧められる。大きなお世話である。

******

 数日前。
 やっと探しあてることに成功した“成長停止薬を製造したあの男”……の孫・グロピー(笑)が「ついに解毒薬ができたぞ!」と、手紙で自分らを呼び出した。

 繁華街の裏路地にあるグロピーの家に、本当にできたの?! できたの?! と、ワクワクしながらFt達は直行した。
 家に着くとグロピーは「よぉ」と、にたりと笑いながら出迎えてくれた。
 
 グロピーの家には様々な薬品の瓶、謎の固形物等が整然と並ばれた棚ばかりあり、それらの発する独特な匂いが混じりあって部屋中に充満している(つまりKU・SA・I★)。

 普通、客人が来たら茶のひとつやふたつお出しするものだが、グロピー宅ではそういうことはしない。できない。むしろ、出されても相手も困るし断る。
 出される飲食物に知ってか知らずか何が付着混入されてるものだか、不安すぎるからだ。

 グロピーはFt達に何もお出しすることなく、用件である『透明なケースに入れられた1匹のラット』を持ってきた。
 このラットは、事前に“Ftが投与された成長停止薬”を投与されている実験用ラットである。とても小型で若々しく動き回っているが、もう2歳……立派な成体であるはずのラットだった。
 グロピーは小皿のミンチ肉の中に何か液体を混ぜ、それをケース内に入れた。ラットは何も警戒することなく、それを食べ始めた。
 
「2日ほどで効果が目に見えて現れると思うから、2日後にまた来い!」
 と、得意げな顔でグロピーが満面の笑みを浮かべた。
 
 別のラットと取り替えがきかないように、グロピーはFtの目の前で、そのラットの左腹部に“とぐろうんこ”を落書きした。

「何ソレ、きったないわねぇ! やめてよ!」
 Ftが激昂したので「うっせーなぁ」とグロピーは“とぐろうんこ”に適当にスマイルな表情をつけた。 
 ほら、可愛いだろぉ~、とヘラつくグロピーのスネをFtは思いっきり蹴飛ばした。

 ちなみに、グロピーらがキャイキャイやっているすぐそばでK、という黒髪赤瞳の青年がグロピー新作の毒を飲んで緑色の反吐を床に撒き散らしながらうずくまっているのだが、今回のお話には全く関係がないので特に触れないでおく。
 
 ……大丈夫。数十分経つ頃には「毒、効かねぇ!」と元気に叫びながら起き上がります。




 2日後に再度、グロピー宅に行ってみる。
 薬物を投与されたその"とぐろうんこ"イラスト付きのラットは、明らかに体が大きく成長していた。しかも、元気にケース内をうろついている。

「ほら見ろ、そら見ろ、どうだぁ! 年相応の大きさになったぞぉ!」

 グロピーが喜色満面、耳障りなデカい声で自慢する。
 いつもは不快にしか感じないグロピーの偉そうな態度が、喜びの感情のおかげでなんとも思わない。Ftは目を輝かせた。

「……ねっ、ねぇ! もうコレ、成功じゃない? 薬、飲ませてよ! ねぇねぇ!」
 年相応の体に早く成長したいFtが、グロピーを急かす。

「いや。まだたった2日しか経っていない。もう少し様子を見てから……」
「いやぁだ! 大人の体になりたいブラジャーつけたいカワイイぱんつ買いたい妊娠したい! ……あ、ねぇKさん!」

 近くの席で泥水のような謎の液体を腕の血管に注入していたKに、Ftがいきなり話をふる。

「私が大人の体になったら、子種ちょうだい!……ね? 私、Kさんのこと好きだから!」
「………?! ヤですよ!!!」
「抱いてよぉ!」
「………う、くぅっ……」

 Ftの鬼畜のような実父を殺害したのは、昔のKである。K自身はそれを負い目に感じているのだが、Ftはそのことをただ感謝していた。
 実の娘を平気で売るような男は、死んで当然。同情の欠片も浮かんでこない。
 と、いうわけでFtはKを好いていた。

「……“命令”なら僕に拒否する権利はないので……はい、仕方ない、ですね……」
 Kがものすごく引きつった苦笑を浮かべた。

「やったぁ! 子種ゲットォ!」
 Ftはガッツポーズをした。そばでRtが「良かったね、姉さん」と控えめに拍手をする。

「………いや、まだだっつってんだろ。事を急くな、三十路」

 グロピーが低いテンションでFtの歓喜に水をさす。
「安全性がまだわからんから、もう少し……」
「いいよ! 投与してよ! ホラ!」

 Ftが椅子に“どかっ”と座り、左袖をまくって、細く白い腕を出す。
「子供扱いは、も~うウンザリ! お酒を呑みたい! 高いヒール履きたいぃぃぃ! 」

 Ftが左腕で机をどんどん叩く。グロピーがメガネの位置を直しながら、舌打ちをする。
「今日は、ただの経過報告としてお前らを呼んだだけであって、人体に投与するのはまだ早い。次はネコ辺りに実験……」

 と、言ったところでグロピーが言葉を止めた。
 Ftが不思議に思ってグロピーの顔をよくよく見てみると、どうやら視線が自分の後ろの方に向いている事がわかった。

 Ftが振り返ると、ごちゃごちゃと物が散乱している机の上に置いたケースの中のラットの体が、つい先程見た時より若干……若干、大きくなっていた。

 じっ、と見つめているとラットの皮膚がボコボコと醜く膨れ始めた。

 内側から何か破裂しているのだろうか、“ボコボコ”のリズムに合わせてラットが口から血を吹き出す。
 ボコボコムクムクを繰り返し、ラットがただの“肉団子”と化したところで、それは破裂した。

 ケース内が、内蔵と血によって鮮やかに彩られた。千切れた“笑うとぐろうんこ”の皮膚部分がケースにべったり貼り付き、こちらに微笑む。
「……………」
 この場にいた4人全員が、沈黙した。

「…………よし」

 しばらくして、最初に沈黙を破ったのはグロピーだった。

「………じゃ、投与するか……」

 グロピーはFtの剥き出しの細腕に、そっと触れた。

「おいぃぃぃぃ!!!??」
 Ftが全く可愛くない叫びを上げる。

「今! 破裂したわよ?! ネズミ!! ソレを見てなんで、そんな言葉が出るワケ?!」
「………あんなすごい毒薬……試してみたいじゃないか……」
 グロピーはワクワクしている。どうやら『人体に試したい』という毒師の性に火がついたらしい。

「あんた、さっきまで『結果がどうなるかわからん』だの『安全性』だの言ってたでしょーにっ!」

「……ん、もうどうでもよくなった。……もうあきらめろよ。幼女姿、ツラいんだろ? ……ラクになろうぜ」
 グロピーが異様に優しい笑顔を浮かべる。

「っつーか俺、そもそも『人を異常にさせる』のが本業だっつの。そんな俺が『人を治せる』ワケねぇじゃん?」
 それもそうですね、と隣でKが納得した。

「や、や、や、やぁぁぁああ!!!!」
 Ftが泣き叫びながらグロピー宅を飛び出した。Rtも慌てて、それに倣う。

「このバカァ! ぽんこつメガネェ! 役立たずぅ!」
 マニアが耳に入れたらさぞ喜ぶであろう、泣きの入ったロリボイスを、Ftは無料で聴かせてくれた。

******

 めんどくせぇ。
 その当の“ぽんこつメガネ”は、しみじみそう思った。

 グロピーの本業は、先程も言ったが『人を異常にする・もしくは殺す薬の作成』である。『人を治す』なんてことは、したことがない。
 風邪などの、簡単な治療薬なら作成できるが、あの“偉大なる毒師”である祖父の生み出した毒薬の解毒劑など、作成できるわけがない。

 “ぽんこつメガネ”は、ため息をついた。

 ………いやいや、毒の再現作成はできたのだ。なら、解毒薬だって作れるはずだろ、俺。
 とっとと完成させて、あのまとわりつくうるさいロリ三十路を追い払いたい。そして………。

 グロピーが苦々しい顔をしている横で、Kが「この錠剤、飲んでもいいですか?」と棚の中の瓶を指差した。

 飲めばぁ? と許可すると、Kはその“食べると手足の痺れ・肛門の激痛を伴う下痢・皮膚のただれ”が起こるはずの錠剤を、ボリボリとラムネのように食べ始めた。グロピーはついでに、その錠剤の1粒を取り、また別のケース内のラットに与えた。

 数十分経っても何も起こらないので、Kが「コレ、お菓子だったのですか?」と、のたまった。
 錠剤を与えたラットの方は、ケース内でもんどりうって糞尿を垂れ流している。


 殺したい………。
 祖父の作った毒の解毒と、Kを殺す薬、どちらが先に完成するだろうか。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

短編)どうぞ、勝手に滅んでください。

黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。 あらすじ) 大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。 政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。 けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。 やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。 ーーー ※カクヨム、なろうにも掲載しています

処理中です...