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幼年期
#18 才能
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避暑休みでこの別荘に来て5日が経った。
だらける…このままではだらけてしまう…
なんというか、生活が楽すぎて快適すぎて…なんというか…ダメ人間になる…異世界に来る前はダメ人間だった訳だけど。
「よっし、久しぶりにランニングでも行くかぁ…」
ふぁ~、と欠伸と伸びをし、体と意識を目覚めさせる。
時刻は…うん、早朝、丁度良い時間だ!
そして、俺はランニング用の服をトランクから取り出し、それに着替える。
そして、部屋を出て玄関へ向かう。
最初は良く廊下で迷ったものだが、5日も経てば慣れっこだ。
そして、玄関の前まで来ると、外の庭の方から、ガィン!という甲高くもあり重々しくもある剣同士がぶつかる音が聞こえた。
全く、誰ですか、朝から近所迷惑ざますよ…しっかり叱ってあげましょう。
と、そんなことを考えながら外に出る。
音の正体は、ターシャとミダムの二人だった。
二人とも恐ろしいスピードで剣を振っている、そして、その全てを二人は最小限の動きでいなしながら、次々と剣を振り抜く。
「そんなものではダメですよ!力を入れれば良いという考えは捨てましょう!全ては力を制御するテクニックです!」
「くっ…」
「隙有り!」
ミダムの素早い横凪ぎの剣撃はターシャの脇腹を捉えようと、接近する、が、しかし、ターシャの逆手で構えた剣の上で横滑りし、いなされる。
「ううっ!」
「耐えきりましたか、流石です、ですが…」
ミダムが少し感心するのと同時に、また剣を振り下ろす。
次は左上からの袈裟斬りだ。
この剣撃はターシャの首元を捉え、ピタッと寸前で止まる。
「まだ、そのあとの考える力が今一つですね」
その言葉が放たれてから、ターシャはぐったりと倒れこむ。
「また…今日も勝てなかったぁ…」
「気に病むことはありません、大人、それも、オルランド流の師範レベルと張り合えたのですから、充分ですよ」
「だけど…だけど」
するとターシャは仰向けになり、空を見上げる。
う~む…これは近づくべきか、近づくまいか…
「レイ様!お早いご起床ですね、今からなにか?」
あ、あっちから気付かれた、まぁ良いか、別に見られたくない訳じゃないし。
「最近、だらけ気味なので…ちょっとランニングにでも行こうと思いまして」
「それは良いですね!ランニングのオススメルートは湖の湖畔周りの並木道がオススメですよ、あそこは最高です」
「ありがとうございます、そうします」
と返事をし、ランニングを始める、走りながら、最近上がらなくなった魔力のことを考える。
最近、願望増幅能力が幼少期と比べると上手く働かなくなった、少しずつ上がりはするのだが、急にぐん!と伸びることがなくなった。
最近は「あの能力は期限付きだったんだ」と考えるようにしており、あまり気にしなくなった。
そうして、走っていると、大きな湖が見えてきた。
「うわぁ…!!」
あまりの綺麗さに自分の目を疑う。
特に水面に写し出された森の木々の緑色と湖の青色のコントラストは最高だった。
ありがとう、ミダム、この景色は最高だ。
と、心の中で呟く。
そして、ミダムのことを考えた所で、さっきのターシャとの会話で少し気になった所を思い出した。
それは、オルランド流の師範、という言葉の所だ。
オルランド流とは隣国、レンダル王国で最初に大成された、剣術である。
オルランド流は相手に隙を見せず、相手の隙を狙う、という一般的な剣術を基礎に一撃一撃の攻撃力を限界まで高め、隙を生んだ敵から潰していくというスタイルが特徴の、レンダル王国屈指の最強剣術だ。
しかし、欠点が一つある、相手の細かい挙動を観察し、隙を見つける、観察眼の才能が必要なため、習得するにはかなりの修行が必要となる。
そのため、最近だと少しずつ門下生は減り、比較的習得の安易なリューザオ流に人気が移っていっている。
そう考えるとミダムは天才だと言えるのかも知れない。
リューザオ流に関しては、後々説明しよう。
「オルランド流の師範レベルが…こんな近くに居たとはなぁ…」
そんなことを呟いているうちに、一周が終わっていた。
せっかくの景色も堪能せず走っていたため、次は景色を楽しみながら走るとしよう。
そうして、俺はもう一度、同じ道を走り始めたのだった。
_____________________________________
「ただいま帰りました」
俺が別荘の中に入ると、メイド長のチーカさんが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、グラント様、朝食は丁度15分後に始まります、5分前までに席に着いておくことをお薦め致します」
「ありがとうございます、チーカさん、そうします」
そう返事をすると俺は、朝食に遅れないよう、足早に部屋へ戻り、汗をしっかりと拭いた後、部屋着に着替えた。
う~む…ごわごわしてやっぱり動きにくい…貴族の人ってマジでこれで生活してるのかな?
今着ている貴族服はライルさんのお下がりだ。
だが、生地が厚く、重いせいか、とてもじゃないがこの重さを受けながら素早く動ける自信は、ない。
そして、広間へ急ぐ。
朝御飯じゃあ!!
______________________________________
「…で、何で居るの!?」
俺は少し訝しげな表情を浮かべながら聞く。
その問いに我らがパパン…ではなく父親、レーダス=グラントと我らがママン、ククリ=グラントはこう答える。
「いや、招待状が来たものでな、馬車を飛ばしてきた」
「息子の顔を久しぶりに見れるのだもの、来ない以外ないわ」
母さんは、ウフフ、と微笑んでいるのに対し、父さんは相変わらずぶっきらぼうな表情を浮かべている。
だが、わかる、俺にはわかる、今父さんはこの別荘に緊張している、平然を装っているように見えるが、きっと中身はプルプルと震えながらも、威勢を振り撒く、チワワのようになってしまっているだろう。
「悪かったかな?レイ君、サプライズのつもりだったのだが」
「い、いえ、少し気になっただけですので」
「そうか、それでは、朝食が冷めてしまわぬ間に食べようではないか」
そして、全員が手と手を組み、神に祈りを捧げる。
ここに来て久しぶりにやったものだ。
「我らに恵みを与えし、尊き神よ、感謝します」
全員で祈りを捧げ、食べ物に手をつける。
今日の朝食は、エッグサンドトーストだ。
ここに来てからわかったことが一つある、飯が、美味い。
流石貴族といったところか、卵は新鮮で、野菜もシャキシャキと音をたてれる程に新鮮、パンなんかは口当たりが良く、口の中に芳醇な香りが広がるほどだ。
でも、やっぱり足りない、醤油が足りない。
どっかに売ってないかな?
まぁ売ってたら後悔しないか。
そうしてあっというまに朝食を平らげた俺は、ふぅ…と満足げに息を吐く。
美味かった…やっぱりスクランブルエッグとパンの組み合わせは最強だな。
そんな味の感想に浸っていると、アマザが口を開く。
「レイ君、レックに魔法を教えてくれないか?」
「えっ」
唐突な言葉に驚き、つい、声が出る。
アマザは、少し微笑むと話の続きを話始めた。
「実はレックが魔法祭に行った日から、オルトメニア魔法学園に行きたいと、聞かなくてな」
「だって、行きたいんだもん」
アマザの言葉にレック君がそう付け加える。
「そこで、流石に息子の希望を完全に無かったものにするのは、流石に親として気が引けてな…そこで才能の有無をレイ君に見極めて貰いたいと思った所存だ、受けてくれるかね?」
「そうですね…」
教えるのは首席のターシャの方が良いんじゃないか?
でもターシャはターシャで剣術の件で忙しそうだ。
受ける前に、俺はメリットがあるのか少し考える。
ある…のかもしれない、相手は貴族の息子だ、ここで魔法を教えれば、いつかこれを恩としてくれるかもしれない、それに、試さないよりかは試したほうが+の道に進むだろう。
「…わかりました、慎んでお受け致します」
「そうか!ありがとう、早速今日から教えて頂くことは可能かな?」
「大丈夫です」
「それならば朝食後、すぐに修練場を手配しよう」
「はい」
修練場は必要ありません、と言おうとしたが、何となくだが、やめておいた。
____________________________________
修練場は至って普通の修練場で、的があり、所定の位置からその的を狙う、というスタンダードな学園のよりも少し小さい位のものだった。
ここまでもが大きかったら、どうしようか、とも思ったが良かった。
ちなみにレック君に魔法の才能があるのかは、[小炎]で確認済みだ。
とりあえずレック君に魔法の基本を教えていくことにした。
魔法とは、魔力を触媒に精霊の力を借りるというものだということ、魔法の形はイメージの仕方によって変わること、その他もろもろを座学で教えて、実践に移る。
「それじゃあ、教えた通りにイメージして、ゆっくり…息を整えて、打て!!」
「[風よ 吹き荒れろ]!!」
すると指先から弓の形をした、初級風魔法[ウィンド]が飛び出した。
その風の弓は勢い良く飛び出したものの、威力は低く、弱々しく的に当たり霧散した。
「出来た!出来たよ!お父さん!!」
レック君は息を切らしながら満足げにアマザの方へと振り向く。
するとアマザは俺に「どうかな?」と目配せをする。
正直この歳で魔法を使えるのはスゴい、才能はもちろんあると言って良いだろう。
「魔力の量に一抹の不安はありますが、これからしっかりと毎日訓練すれば次席…いや首席レベルまで到達出来るかと思います、そ過程で魔力の問題も解消されていくでしょう」
「そうか!それは良かった!!」
アマザもアマザで息子の願いは叶って欲しかったのだろう、彼は、嬉しそうな笑顔を浮かべ、返事をした。
「お父さん、これで学園に行かせてくれる?」
「そうだな…では一つ条件を付けよう」
「なに?」
「首席になれ、これが条件だ、首席になれなかった場合は、魔法学園ではなく、普通の貴族校に行ってもらう、良いな?」
「そ、そんな…僕が首席になんて…なれな」
「なれるさ」
俺はレック君を鼓舞するように、そう言う。
「俺だって魔法を始めたのは4歳の頃だ、まぁ…次席だけど、首席のすぐ下には居るんだ。それに君には才能がある、このまま訓練を続ければ絶対に首席になれる、だから…」
そして、そこで俺は第二の人生を歩き始めてからの目標を彼に告げる。
「後悔はしないように、するんだ、そうすればいつのまにか道は出来る」
そう、出来るんだ、俺も続けてきたから出来たことが沢山ある。
だから自信を持って告げる。
「だから、頑張ろう!!」
その言葉にレック君が元気良く返事をする。
「うん!わかった!がんばる!!頑張って首席になる!!」
「よし!そのやる気が大事だ!頑張るぞ!!オー!!」
「オー!!」
それからレック・R=マルートは毎日ひたむきに努力し、見事首席を勝ち取ったのは、また後々の話…
だらける…このままではだらけてしまう…
なんというか、生活が楽すぎて快適すぎて…なんというか…ダメ人間になる…異世界に来る前はダメ人間だった訳だけど。
「よっし、久しぶりにランニングでも行くかぁ…」
ふぁ~、と欠伸と伸びをし、体と意識を目覚めさせる。
時刻は…うん、早朝、丁度良い時間だ!
そして、俺はランニング用の服をトランクから取り出し、それに着替える。
そして、部屋を出て玄関へ向かう。
最初は良く廊下で迷ったものだが、5日も経てば慣れっこだ。
そして、玄関の前まで来ると、外の庭の方から、ガィン!という甲高くもあり重々しくもある剣同士がぶつかる音が聞こえた。
全く、誰ですか、朝から近所迷惑ざますよ…しっかり叱ってあげましょう。
と、そんなことを考えながら外に出る。
音の正体は、ターシャとミダムの二人だった。
二人とも恐ろしいスピードで剣を振っている、そして、その全てを二人は最小限の動きでいなしながら、次々と剣を振り抜く。
「そんなものではダメですよ!力を入れれば良いという考えは捨てましょう!全ては力を制御するテクニックです!」
「くっ…」
「隙有り!」
ミダムの素早い横凪ぎの剣撃はターシャの脇腹を捉えようと、接近する、が、しかし、ターシャの逆手で構えた剣の上で横滑りし、いなされる。
「ううっ!」
「耐えきりましたか、流石です、ですが…」
ミダムが少し感心するのと同時に、また剣を振り下ろす。
次は左上からの袈裟斬りだ。
この剣撃はターシャの首元を捉え、ピタッと寸前で止まる。
「まだ、そのあとの考える力が今一つですね」
その言葉が放たれてから、ターシャはぐったりと倒れこむ。
「また…今日も勝てなかったぁ…」
「気に病むことはありません、大人、それも、オルランド流の師範レベルと張り合えたのですから、充分ですよ」
「だけど…だけど」
するとターシャは仰向けになり、空を見上げる。
う~む…これは近づくべきか、近づくまいか…
「レイ様!お早いご起床ですね、今からなにか?」
あ、あっちから気付かれた、まぁ良いか、別に見られたくない訳じゃないし。
「最近、だらけ気味なので…ちょっとランニングにでも行こうと思いまして」
「それは良いですね!ランニングのオススメルートは湖の湖畔周りの並木道がオススメですよ、あそこは最高です」
「ありがとうございます、そうします」
と返事をし、ランニングを始める、走りながら、最近上がらなくなった魔力のことを考える。
最近、願望増幅能力が幼少期と比べると上手く働かなくなった、少しずつ上がりはするのだが、急にぐん!と伸びることがなくなった。
最近は「あの能力は期限付きだったんだ」と考えるようにしており、あまり気にしなくなった。
そうして、走っていると、大きな湖が見えてきた。
「うわぁ…!!」
あまりの綺麗さに自分の目を疑う。
特に水面に写し出された森の木々の緑色と湖の青色のコントラストは最高だった。
ありがとう、ミダム、この景色は最高だ。
と、心の中で呟く。
そして、ミダムのことを考えた所で、さっきのターシャとの会話で少し気になった所を思い出した。
それは、オルランド流の師範、という言葉の所だ。
オルランド流とは隣国、レンダル王国で最初に大成された、剣術である。
オルランド流は相手に隙を見せず、相手の隙を狙う、という一般的な剣術を基礎に一撃一撃の攻撃力を限界まで高め、隙を生んだ敵から潰していくというスタイルが特徴の、レンダル王国屈指の最強剣術だ。
しかし、欠点が一つある、相手の細かい挙動を観察し、隙を見つける、観察眼の才能が必要なため、習得するにはかなりの修行が必要となる。
そのため、最近だと少しずつ門下生は減り、比較的習得の安易なリューザオ流に人気が移っていっている。
そう考えるとミダムは天才だと言えるのかも知れない。
リューザオ流に関しては、後々説明しよう。
「オルランド流の師範レベルが…こんな近くに居たとはなぁ…」
そんなことを呟いているうちに、一周が終わっていた。
せっかくの景色も堪能せず走っていたため、次は景色を楽しみながら走るとしよう。
そうして、俺はもう一度、同じ道を走り始めたのだった。
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「ただいま帰りました」
俺が別荘の中に入ると、メイド長のチーカさんが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、グラント様、朝食は丁度15分後に始まります、5分前までに席に着いておくことをお薦め致します」
「ありがとうございます、チーカさん、そうします」
そう返事をすると俺は、朝食に遅れないよう、足早に部屋へ戻り、汗をしっかりと拭いた後、部屋着に着替えた。
う~む…ごわごわしてやっぱり動きにくい…貴族の人ってマジでこれで生活してるのかな?
今着ている貴族服はライルさんのお下がりだ。
だが、生地が厚く、重いせいか、とてもじゃないがこの重さを受けながら素早く動ける自信は、ない。
そして、広間へ急ぐ。
朝御飯じゃあ!!
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「…で、何で居るの!?」
俺は少し訝しげな表情を浮かべながら聞く。
その問いに我らがパパン…ではなく父親、レーダス=グラントと我らがママン、ククリ=グラントはこう答える。
「いや、招待状が来たものでな、馬車を飛ばしてきた」
「息子の顔を久しぶりに見れるのだもの、来ない以外ないわ」
母さんは、ウフフ、と微笑んでいるのに対し、父さんは相変わらずぶっきらぼうな表情を浮かべている。
だが、わかる、俺にはわかる、今父さんはこの別荘に緊張している、平然を装っているように見えるが、きっと中身はプルプルと震えながらも、威勢を振り撒く、チワワのようになってしまっているだろう。
「悪かったかな?レイ君、サプライズのつもりだったのだが」
「い、いえ、少し気になっただけですので」
「そうか、それでは、朝食が冷めてしまわぬ間に食べようではないか」
そして、全員が手と手を組み、神に祈りを捧げる。
ここに来て久しぶりにやったものだ。
「我らに恵みを与えし、尊き神よ、感謝します」
全員で祈りを捧げ、食べ物に手をつける。
今日の朝食は、エッグサンドトーストだ。
ここに来てからわかったことが一つある、飯が、美味い。
流石貴族といったところか、卵は新鮮で、野菜もシャキシャキと音をたてれる程に新鮮、パンなんかは口当たりが良く、口の中に芳醇な香りが広がるほどだ。
でも、やっぱり足りない、醤油が足りない。
どっかに売ってないかな?
まぁ売ってたら後悔しないか。
そうしてあっというまに朝食を平らげた俺は、ふぅ…と満足げに息を吐く。
美味かった…やっぱりスクランブルエッグとパンの組み合わせは最強だな。
そんな味の感想に浸っていると、アマザが口を開く。
「レイ君、レックに魔法を教えてくれないか?」
「えっ」
唐突な言葉に驚き、つい、声が出る。
アマザは、少し微笑むと話の続きを話始めた。
「実はレックが魔法祭に行った日から、オルトメニア魔法学園に行きたいと、聞かなくてな」
「だって、行きたいんだもん」
アマザの言葉にレック君がそう付け加える。
「そこで、流石に息子の希望を完全に無かったものにするのは、流石に親として気が引けてな…そこで才能の有無をレイ君に見極めて貰いたいと思った所存だ、受けてくれるかね?」
「そうですね…」
教えるのは首席のターシャの方が良いんじゃないか?
でもターシャはターシャで剣術の件で忙しそうだ。
受ける前に、俺はメリットがあるのか少し考える。
ある…のかもしれない、相手は貴族の息子だ、ここで魔法を教えれば、いつかこれを恩としてくれるかもしれない、それに、試さないよりかは試したほうが+の道に進むだろう。
「…わかりました、慎んでお受け致します」
「そうか!ありがとう、早速今日から教えて頂くことは可能かな?」
「大丈夫です」
「それならば朝食後、すぐに修練場を手配しよう」
「はい」
修練場は必要ありません、と言おうとしたが、何となくだが、やめておいた。
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修練場は至って普通の修練場で、的があり、所定の位置からその的を狙う、というスタンダードな学園のよりも少し小さい位のものだった。
ここまでもが大きかったら、どうしようか、とも思ったが良かった。
ちなみにレック君に魔法の才能があるのかは、[小炎]で確認済みだ。
とりあえずレック君に魔法の基本を教えていくことにした。
魔法とは、魔力を触媒に精霊の力を借りるというものだということ、魔法の形はイメージの仕方によって変わること、その他もろもろを座学で教えて、実践に移る。
「それじゃあ、教えた通りにイメージして、ゆっくり…息を整えて、打て!!」
「[風よ 吹き荒れろ]!!」
すると指先から弓の形をした、初級風魔法[ウィンド]が飛び出した。
その風の弓は勢い良く飛び出したものの、威力は低く、弱々しく的に当たり霧散した。
「出来た!出来たよ!お父さん!!」
レック君は息を切らしながら満足げにアマザの方へと振り向く。
するとアマザは俺に「どうかな?」と目配せをする。
正直この歳で魔法を使えるのはスゴい、才能はもちろんあると言って良いだろう。
「魔力の量に一抹の不安はありますが、これからしっかりと毎日訓練すれば次席…いや首席レベルまで到達出来るかと思います、そ過程で魔力の問題も解消されていくでしょう」
「そうか!それは良かった!!」
アマザもアマザで息子の願いは叶って欲しかったのだろう、彼は、嬉しそうな笑顔を浮かべ、返事をした。
「お父さん、これで学園に行かせてくれる?」
「そうだな…では一つ条件を付けよう」
「なに?」
「首席になれ、これが条件だ、首席になれなかった場合は、魔法学園ではなく、普通の貴族校に行ってもらう、良いな?」
「そ、そんな…僕が首席になんて…なれな」
「なれるさ」
俺はレック君を鼓舞するように、そう言う。
「俺だって魔法を始めたのは4歳の頃だ、まぁ…次席だけど、首席のすぐ下には居るんだ。それに君には才能がある、このまま訓練を続ければ絶対に首席になれる、だから…」
そして、そこで俺は第二の人生を歩き始めてからの目標を彼に告げる。
「後悔はしないように、するんだ、そうすればいつのまにか道は出来る」
そう、出来るんだ、俺も続けてきたから出来たことが沢山ある。
だから自信を持って告げる。
「だから、頑張ろう!!」
その言葉にレック君が元気良く返事をする。
「うん!わかった!がんばる!!頑張って首席になる!!」
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