彷徨えるジパング～蒙古襲来編～

第14章 裏切りジョニー

「総理、ジョニー沖縄県知事が我が国から離国する旨の宣誓がなされました。」
総理第一秘書の河原崎が大慌てで、蒙古襲来対策会議室へ飛び込んできた。
テレビをつけてみるとテレビの生中継では、ジョニーが、勝ち誇った顔で右手を突き出していた。
「このような非常時に…。」矢橋官房長官は首を横に振った。

テレビ中継でジョニー沖縄県知事は、「私は沖縄県知事として、今回のことで国の脆弱さを看過することはできないと思い、県民を守るため。民意により興産党の皆さんと共に新たな国を創ることに決めました。国名は琉球共和国です。これからは、モンゴル帝国の皆さんを歓迎し、より良い独立国家を目指していく所存です。」と言い、周りから拍手喝采が鳴り響いていた。
知事公室には、左派の記者やテレビ局しか入れてもらえない状況で、興産党の党員達１０名が入口を十分にガードしてあった。

「矢橋さん、中央国は本当に現存していないのですか？」橘田（総理）はおろおろし始めた。
そこに、長老の浅生田が話に入り、「ジタバタするんじゃない。お前、総理だろ。かの北条時宗は20歳代で執権（総理）となり、蒙古襲来に立ち向かったんだ。お前はいくつだ。しっかりしろ！このままでは次の（衆議院）選挙は大負けするぞ。」
橘田は我知らずと言うようにそっぽを向いた。

知事公室では、ジョニーへの大きな拍手が更に鳴り響いたが、しかし、県庁舎外では大多数の県民達が不安になり困惑をしていた。
「これは民意です。いいですか。沖縄を守るため。いや琉球を守るための決断です。」
ジョニーはテレビカメラに向かいガッツポーズを決めていた。
県庁舎内の全ての入り口が興産党の党員達や中央国の諜報活動員達により閉ざされ外部との連絡が遮断された。
党員達や中央国の諜報活動員達は銃を持ち、爆薬を腹に巻いている人もいた。
庁舎内にいた全職員には、離国（中央国）の同意書に有無を言わさず（恫喝による）記名押印をさせられていた。その上、県民住所録に載っている名前で同意書にサイン（偽名）したものを60万通を作成するよう強要していた。
拒否した職員も28人いたが、地下のある会議室に拘束されていた。
ジョニーによる独裁政権が始まるのか…。

「ホップ司令官（中将）。ジョニー沖縄県知事から駐日米大使及びホップ在日米軍司令官宛でEメールが届いております。」
「内容を読んで聞かせてくれたまえ。」
「ハッ。読み上げます。日本国土は約７００年前の鎌倉時代にワープしたと思われる。大和の国（日本国）に牛耳られてきた沖縄（県）は、これを契機に離国をすることを民意により決定した。新たな国名は琉球共和国である。貴国におきましては。これから一か月以内に旧名沖縄県からすべての米軍兵及びその家族を琉球共和国外に立ち退かせること。琉球共和国　大統領　ジョニー・珠喜。」
ホップは、余りの驚きで椅子から立ち上がったが、ソファーに向かい腰掛けて目を閉じた。我がアメリカ軍はどうすればいいのか…。
アメリカ大陸に移民開拓を開始したのが、１７世紀。
今いると思われる１３世紀ではコロンブスでさえアメリカ大陸へ到達していない。
私達が帰る母国、アメリカ合衆国はないのか…。