彷徨えるジパング～蒙古襲来編～

第29章 影が動く

モンゴル帝国軍が誇る旗艦の私室の中でヒンドウ総帥は誰かと話していた。
その部屋にはヒンドウ総帥一人しかいないが、ヒンドウ総帥以外の影がゆらりゆらりと揺らいでいた。
「影よ。郭はこっちへ戻ったか。」
「けけけけーけ。」
「そうか。戻ったのか。」
洪から負け戦の報告があったが、この戦は郭の作戦通りにならず、戦死者５千人近くも出してしまった。
その責任は郭やその部下４人に取ってもらうしかないな。
５人の首を切り取り塩漬けにしてクビライ皇帝様へ送るか…。
「影。モンゴル帝国へ悪をなす彼奴ら、郭とその部下４人を今すぐやれ（殺せ）。」
「けーけ。」
妙な奇声が消えた後、人の影が一人分減っていた。
モンゴル困りし時は影現る。か。

影（陰）とは、日本の東北地方にある座敷童（陽）と似たような者（一族）だが、
座敷童と違うことは、座敷童は家に憑くが、影一族はモンゴル民族といつも共にあり、モンゴル人達の為だったら容赦はしないことだった。
影の特徴は、黒のモンゴル衣装に身を包み、髪はおかっぱ頭で、成人の身長は1メートル位と小さいが、腕が太く長くて手が巨大で男の２倍程もあり、その腕力はゴリラほどにもなり人を殺す道具になっていた。