彷徨えるジパング~バルチック艦隊編~

花田 一劫

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第19章 悪しき密談

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バルチック艦隊との決戦の前日に芦破とパプリチェンコは、赤坂にある高級割烹の老舗店で会うことになっていた。
店の内外には、日本のSP(セキュリティーポリス)が10人いたが、パプリチェンコがサハリンナ州の私服警察官5人と一緒にやって来て、その私服警察官5人も警護に当たった。
この老舗店の6名座敷の個室には防音効果がしてあり、芦破はならず者議員達との悪どい話をする時に昔からよく使っていた。
パプリチェンコは、和服を着た50前後の女性に案内され個室に入ると、そこには芦破の他に見るからに怪しそうな二人の男が来ていた。
「パプリチェンコさん、お待ちしておりました。さあ、どうぞ、どうぞ。」と芦破が言い向かいの席を勧めた。
パプリチェンコは座りながら、「芦破総理が電話でおっしゃってました同志の方々ですね。」と言ったそばから、狐目で男達の値踏みをし始めた。
中肉中背の男が、「初めまして、石谷と言います。外務大臣をやっております。どうぞよろしく。」と、言い、
怪しい目で軽くお辞儀をした。
こいつ、アイシャドーを塗ったような、くまが出来た顔をしてるが、この手の顔は、紳士ぶってるが姑息なハイエナの男が多いし…、その上、女好きのやつと思えるが。まぁいいか。
「サハリンナ州知事のパプリチェンコと申します。お見知りおきください。以後よろしくお願いします。」
もう一人の男が、
「いやぁ、パプリチェンコ君は、総理から聞いてましたが本当に日本語が堪能ですな。私の名前は村下ぁ。内閣の要である総務大臣の職を努めておってなぁ。まぁヨ・ロ・シ・ク、わっわっは。」と言うような上から目線の挨拶をした。
この手の男は口は達者(軽口)で、大柄な上、お調子者が多くいる…、しかし、この見苦しい十重二十重の体はどうだ、自分の手でけつの穴を拭くことも出来ないのではないか。一つおだててみるか。
「村下総務大臣様、やはり並々の人とは違いますね。お持ちになっているオーラが凄いとしか言えません。」
「いや~。そうか。そぉうか。総理、パプリチェンコ君とは、少し話しただけで分かるぅ。信じるに足る人材だと思いましたわい。わっわっはぁ~。」
石谷は二人の会話を白けて聞いていた。
芦破は村下の言葉を無視し、部屋の隅へ座っている女性へ、「女将さん、内輪の話があるから外してもらえるかなぁ。終わったら呼ぶからね。」と言い席を去るように促した。
「どうぞ、ごゆっくりと。」
芦破は女将が立ち去っていく姿を見届けた後、
「ところでパプリチェンコさん、私にとって大事な話とは、なんですかねぇ?」と聞いてきた。
「先日、サハリンナ州を日本国(北海道)へ併合させる話をしましたが、北海道全部を私にください。」
「何を馬鹿なことを言ってるんだ。」
石谷がパプリチェンコを睨んでいった。
パプリチェンコは話を続けて、
「バルチック艦隊がやって来る時が、紀元前660年から始まった云われる日本の皇室を全て排除する好機だと思います。」
と言い出した。
「ど・どういうことだ。」
「即ち、天皇には元首を降りていただき、芦破さんに日本の社会主義初代大統領になって貰えるチャンスかと。」
芦破の細いダーティーアイ(目)が怪しく光った。
「そ・それで。」
「明日、日本国民へ核ミサイルと言う恫喝を仕掛けますから、その機に乗じてクーデターを起こせば出来る事だと。スターリン以上の独裁政権が可能となり、皆さんにとって、酒池肉林、何でもできる楽園(国)が待っていますが。」
石谷と村下はその言葉を思い浮かべて舌なめずりし始めたが、少し冷静になり、
「もし、クーデターがうまく行かない場合は。責任はどうする。絞首刑はごめんだ。」
芦破は疑りかかっていた。
「ご心配なく。失敗した場合は我が配下にある師団の司令官ゴーマン大佐に全て責任は取らせます。計画や保険として失敗した場合の対処の仕方について、これからご説明いたします。」
それから二時間に亘り悪行の密談が続いた。
「それで、それで~。」「なるほど~ぅ。」「うっしっしぃ。」
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