【完結】侯爵家令息のハーレムなのに男しかいないのはおかしい

みやこ嬢

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本編

16話:大聖堂の秘密の部屋 1

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 週末。貴族学院は休みだ。
 折角の休日にも関わらず、アデルはいつもと同じ時刻に起きて身支度をしていた。

 アルタリオと会う約束をしているからだ。

 大聖堂の特別室を見せてくれるというので、アデルはこの日をずっと楽しみにしていた。

 もちろん大聖堂自体には何度も行ったことがある。しかし、関係者以外は拝廊や礼拝堂といった場所しか入室が許されていない。一般に公開されているのは、巨大な施設のごく一部に過ぎない。

 それに、大聖堂には修道女……つまり女性がたくさんいる。普段女性と縁遠いアデルにとって、大聖堂はまさに希望の星であった。
 人脈作りにはならないが、なんでもいいからとにかく女性と会話したい。触れ合いたい。アデルは思春期の少年らしい素直な欲望の塊と化していた。







「やあ、よく来てくれました」

「お招きありがとう、アルタリオ君」


 大聖堂前で馬車を降りると、既に門の前にアルタリオの姿があった。約束の時間より少し早く着いたはずだが、どうやらそれを見越して早めに待ってくれていたらしい。持参した手土産の焼き菓子を渡し、並んで歩く。


「そういえば、制服以外でお会いするのは初めてでしたね。今日の服もお似合いですよ、アデル君」

「アルタリオ君も。それは?」


 アルタリオの今日の装いは白いシャツに細身のズボンという至って普通の服装だが、肩に帯状の青い布が掛けられている。銀糸で細かな刺繍が施されていてとても美しい。


「ああ、司祭位を表すストラです。これを身に付けていないと大聖堂の奥には入れませんので」

「へぇ、そうなんだ。…………えっ、アルタリオ君、司祭なの!?」

「はい。昨年資格を得たばかりですが」

「すごいね……!」

「幼い時からずっと大聖堂ここで生活していますからね。自然とそうなりました」


 アルタリオの言葉に、アデルは驚きを隠せなかった。既に将来を考えて行動している同級生の姿を目の当たりにして、尊敬の気持ちと同じくらい焦りを感じた。アデルはまだ目標達成の目処が立っていない。

 大聖堂の中へと通され、入り口から中央の回廊を通り、最奥にある礼拝堂に向かって歩く。
 王都の中心部に建つこの大聖堂は敷地面積が広く、建物自体もかなり大きい。高い天井部分には神話をモチーフにした絵が描かれ、内部はとても華やかな印象を受ける。礼拝堂にはたくさんの長椅子が並べられ、多くの信者が一斉に祈りを捧げることが出来る。今日は休日のため、一般の参拝者が多い。

 ここまではアデルも入ったことがあるエリアだ。


「こちらが聖職者の居住区になります。鍵を持つ者しか入れないんですよ」

「え、僕も入っちゃっていいの?」

「もちろんですとも」


 側廊の柱の裏、目立たない位置にある扉の鍵を開け、アルタリオはアデルを招き入れた。

 扉の向こう側の居住区は意外と質素な外観だった。とはいえ、地味な色合いではあるが床には隙間なく絨毯が敷かれ、廊下の端に置かれた壺や柱に取り付けられているランプ等は骨董価値の高そうなものばかりだ。

 ここに来るまでのあいだに見掛けたのは男性司祭が数名のみ。こちらは表の礼拝堂と違って誰もいない。


「あ、あの、ここで働いている人たちは?」

「参拝者の対応をしている者以外は今頃裏庭で洗濯や掃除をしているかと。……おや? そういえば、いつもならもうひと仕事終えて表に出ているはずなのですが、おかしいですね」

「そ、そっか」


 表にも居住区にも修道女がいない。あてが外れたことにアデルはやや落胆した。

 ちなみに、これはアリス専属の侍女エルマとアルマの仕業である。
 彼女たちは事前に修道女スタイルに変装した上で大聖堂に侵入し、洗濯や掃除をするフリをしながら作業を妨害していた。修道女たちの朝のお勤めを終わらせないようにしたのだ。決まった仕事を終わらせねば次に移ることが出来ないという戒律を逆手にとっての行動である。それ故、修道女たちはみな裏庭にある水場から離れられずにいた。


「これで足止めは完璧ですね」

「お嬢様のためとはいえ、洗い終えたばかりの洗濯物をひっくり返したり、掃き集めた落ち葉をぶちまけるのは心が痛みますね」

「ここの修道女さんたちに悪いことをしました」


 エルマたちは間違って誰かがアデルの元に行かないよう裏で見張りを続ける。






 何も知らないアデルは、アルタリオの案内で更に大聖堂の奥へと進んでいった。
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