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31話・刷り込み[ゼルド視点]
*今回はゼルドさん視点のお話です*
冒険者となって数年は単独で活動してきた。人生のほとんどを鍛錬に費やしてきたおかげで戦う力だけは備えている。各地のダンジョンを巡り、様子を見て、二度と『あの時』のような悲劇を起こさぬようにすること。
全てを捨てた私に残された唯一の使命。
「ダメよ。ダンジョンに潜る許可は出せないわ」
新たに訪れた町の冒険者ギルド。
受付嬢は丸眼鏡の奥の目を吊り上げ、容赦なく探索計画書を突き返してきた。まさか拒否されるとは思わず、受付カウンターを挟んで数十秒ほど無言で睨み合う。
大抵の者は、たとえ冒険者であろうと私が睨めば怯むのだが、この受付嬢は恐れる様子もなく平然としている。恐らく彼女の身近に強者がいるのだろう。そういった者の扱いに慣れているように感じた。
「ちょっと顔を貸しなさい」
ギルドのフロアには他の冒険者の姿もあったが、彼女は気にせずカウンターを閉め、奥の部屋へと場所を移した。その部屋は扉や窓以外の壁一面に造り付けの棚があり、アイテムが整然と並べられていた。
部屋の中央にあるテーブルを囲むソファーのひとつに座るように促され、腰を下ろす。向かい座った受付嬢は、再び私の顔を正面から見据えた。
「カウンターじゃ周りに聞こえてしまうかもしれないから踏み込んだ話はできなかったんだけど」
そう前置きして、彼女は言葉を続けた。
「あなた、耳が聞こえづらいのではないかしら。さっきの会話も少し反応が遅かったし、無口なふりをしてるけど、実際は『話したくても話せない』んじゃない?」
「……」
初対面で言い当てられた経験など無く、面食らって黙り込む。否定はできない。実際、彼女の言う通りなのだから。
「冒険者に『ダンジョンに行くな』なんて死活問題だから強制するつもりはないわ。でも、危険だと分かっていてみすみす行かせるなんて真似もできないのよ、見定めるのが私の仕事だもの」
ギルドの受付は冒険者の力量を計る重要な仕事である。無謀で無計画な探索を許可した結果、冒険者が命を落とすような事態になれば、回り回ってギルドの損失となるからだ。
過去に訪れたギルドの受付が怠慢だったわけではない。彼女……この町のギルドの受付嬢の観察眼がズバ抜けて優れているだけだ。
「だから、あなたには支援役をつけてもらいます」
「……支援役?」
馴染みのない言葉に思わず聞き返す。
同時に、ノックもなしに部屋の扉が開き、二人の人物が入ってきた。
「もう、自分の部屋の片付けくらい自分でしてくださいよアルマさん!」
「寝られりゃいいんだよ部屋なんか~」
「ベッドの上まで物だらけだったじゃないですか!」
フラフラ歩く赤毛の女性の背中を押しながら、少年が何やら小言を繰り返している。彼はすぐにソファーに座る私たちに気付き、「お客さんがいたんですか、すみません」と勢いよく頭を下げた。すぐさま立ち去ろうとする彼を受付嬢が呼び止める。
「ちょうど良かったわ。ライルくん、あなたにこの人の支援を頼みたいのだけど」
「えっ」
「えっ」
思わぬ言葉に、私も彼も固まった。
そして、その時に初めてお互いを見た。
肩より少し長い黒髪を後ろでひとつに縛った、まだ幼さの残る少年だ。先ほどの赤毛の女性とのやり取りを聞いた限り、かなりの世話焼きのようだ。言葉遣いも丁寧で好感が持てる。
しかし、ライルと呼ばれた少年はこちらを見たまま顔を青くしていた。私の見た目に怯えているのだ。大柄な上に顔に目立つ傷があり、女性や子どもだけでなく大人の男からも避けられてきた。今さら彼の反応に傷付くほど繊細ではない。
しかし、組むとなれば話は別だ。
彼だって私と二人で行動するのは遠慮したいはずだ。ここは私から辞退すべきか、と迷っている間に受付嬢が彼に何やら耳打ちをしている。聞き取れないが、恐らく私の事情を説明しているのだろう。
うんうんと頷きながら受付嬢の話を聞いていた彼が、パッと目を見開き、私のほうに向き直った。すぐにそばまで駆け寄り、ぐるりと周囲を一周した。
「どちらが聞こえにくいですか」
「左だ」
「じゃあ右側から話しかければ聞こえます?」
「ああ」
「良かった!声の大きさはどうでしょう」
「問題ない」
怯えた表情はもうどこにもない。彼は私の耳の聞こえる程度を何度か確認し、深々と頭を下げた。
「微力ですがお手伝いさせていただきます」
「……こちらこそ、よろしく頼む」
予想より随分あっさりと受け入れられたことに驚き、つられて軽く頭を下げる。そのまま今後どうするかの話に移った。
「えっ、荷物これだけ?食料は?」
「数日くらいなら食べなくても」
「ダメですよ!冒険者は体が資本でしょう!おなかが空いてたらいざという時に戦えませんよ!聴力以前の問題です!僕、ちょっと買い出しに行ってきます!」
支援すると決めた瞬間から彼の世話焼きっぷりが発揮された。私の小さな荷袋の中身を確認してから、どこかへと走って行ってしまう。まるで嵐のようだと見送りながら思った。
「あの子、ライルくんっていうんだけど、今はギルドに住み込みで働いてくれてるの」
「そ~そ~。あたしの仕事部屋もライルが片付けてくれてんだよな~」
「あんたは自分で整頓しなさいよ」
「やだよ~整理整頓とか苦手だも~ん」
ライルくんが出て行った扉を眺めながら、ぽつぽつと受付嬢が話し始めた。
赤毛の女性は向かいのソファーに寝転がったまま、ヒラヒラと手を振って口を挟む。眼帯に覆われていないほうの目が私をジロリと睨んだ気がした。彼女はギルドの鑑定士で、ここは仕事部屋だという。並べられたアイテムは彼女のコレクションなのだろう。物が多いにも関わらず片付いているのは彼のおかげというわけだ。
「オクトに移ってくるまで、彼は支援役として色んな冒険者と組んでいたのよ。でも、その時に散々な目に遭ってね……それ以来、支援役としての活動は辞めちゃったの」
「ライルを虐めた奴は相応の報いを受けさせたけどな~。二度と冒険者ができないようにしてやった~」
何があったかは分からないが、この二人が憤っていることだけは理解できた。現在ライルくんが笑顔でいられるのは彼女たちが守ってきたからか。
「あなたは見た目は怖いけど良い人みたいだし、本当に支援が必要そうだから紹介したの。ライルくんも乗り気になってくれて良かったわ」
「私に任せていいのか」
「もちろん。その代わり、役に立ったらたくさん褒めてあげて。あの子は自信を失くしてしまっているの。自分を低く見積もり過ぎてるというか……」
そんな風には見えなかったが、と先ほどの様子を思い返す。明るく振る舞ってはいたが、過去に色々なことがあったようだ。
今回の提案は私のためというより、あくまで彼の社会復帰のため。
了承の意味を込めて頷く。
「泣かしたら、あたしがブッ殺す」
「やめなさい」
赤毛の女性が一瞬だけ殺気を発した。しかし、受付嬢が咎めるように素早く手刀で彼女の脳天を打つ。この二人、もしかしたらかなりの手練れなのかもしれない。
そういった経緯があって組んだこともあり、私は可能な限りライルくんに感謝の気持ちを伝えた。実際、彼は優秀な支援役で、無理やり褒めるところを探すなどするまでもない。思ったままを言葉にすれば、彼は謙遜しながらも嬉しそうに表情をほころばせる。
心の傷の片鱗を見せる時もあった。
小さな失敗を必要以上に悔い、落ち込み、謝罪し続ける姿に胸が痛む。その度に、過去に彼を傷付けた者への怒りを感じた。
「お、おひさしぶり……です……」
久々に会った知人に向けるにはぎこちない笑みを浮かべたライルくんの視線の先に、見慣れない冒険者の青年がいた。彼は随分と親しげに話しかけているが、ライルくんの顔色は悪く、テーブルの上に置かれた拳が小刻みに震えていた。
「ライルくんと組んでいる冒険者のゼルドだ」
「どうも。俺はタバク。今日この町に着いたばっかの冒険者だ。よろしく」
「ああ、よろしく頼む」
うまく話せないライルくんに代わり、青年を見据えて名前を告げる。私を見ても怯む様子はないところをみると、かなり腕が立つようだ。
もしかしたら、このタバクという青年が過去にライルくんを傷付けた人物なのではないかと考えたが、赤毛の鑑定士の話では件の冒険者は再起不能にしたという。つまり、彼ではない。
しかし、何故か気持ちがざわついた。
ライルくんにも歩んできた人生があり、様々な人と関わってきたと頭では理解しているのに、私以外の者に心を動かされている彼を見るのが嫌だった。
それが良い感情ではないとしても。
「……タバクさん、どうして……?」
彼と再会した日の夜、うなされたライルくんがこぼした言葉に湧き上がった気持ちは何と言い表せばよいか分からない。
悲しそうに眉を寄せ、涙を流しながら青年の名を呼び続ける声を聞きたくなくて無理やり起こした。
見ていた悪夢の内容を問えば、視線をそらして違う答えが告げられた。青年とのことに私は関係ない、と一線を引かれたような気がした。
頼られたい。
縋られたい。
その一心で、弱ったライルくんにつけこむような優しい言葉をかけた。寝ぼけていたからか、分かりやすく差し出した私の手を取ってくれた。
「私以外の者に心を動かされないでくれ」
再び寝入った彼の耳元に言い聞かせるように囁く。
夜毎こうして刷り込めば、私だけを見てくれるだろうかと身勝手な願いを隠しながら。
冒険者となって数年は単独で活動してきた。人生のほとんどを鍛錬に費やしてきたおかげで戦う力だけは備えている。各地のダンジョンを巡り、様子を見て、二度と『あの時』のような悲劇を起こさぬようにすること。
全てを捨てた私に残された唯一の使命。
「ダメよ。ダンジョンに潜る許可は出せないわ」
新たに訪れた町の冒険者ギルド。
受付嬢は丸眼鏡の奥の目を吊り上げ、容赦なく探索計画書を突き返してきた。まさか拒否されるとは思わず、受付カウンターを挟んで数十秒ほど無言で睨み合う。
大抵の者は、たとえ冒険者であろうと私が睨めば怯むのだが、この受付嬢は恐れる様子もなく平然としている。恐らく彼女の身近に強者がいるのだろう。そういった者の扱いに慣れているように感じた。
「ちょっと顔を貸しなさい」
ギルドのフロアには他の冒険者の姿もあったが、彼女は気にせずカウンターを閉め、奥の部屋へと場所を移した。その部屋は扉や窓以外の壁一面に造り付けの棚があり、アイテムが整然と並べられていた。
部屋の中央にあるテーブルを囲むソファーのひとつに座るように促され、腰を下ろす。向かい座った受付嬢は、再び私の顔を正面から見据えた。
「カウンターじゃ周りに聞こえてしまうかもしれないから踏み込んだ話はできなかったんだけど」
そう前置きして、彼女は言葉を続けた。
「あなた、耳が聞こえづらいのではないかしら。さっきの会話も少し反応が遅かったし、無口なふりをしてるけど、実際は『話したくても話せない』んじゃない?」
「……」
初対面で言い当てられた経験など無く、面食らって黙り込む。否定はできない。実際、彼女の言う通りなのだから。
「冒険者に『ダンジョンに行くな』なんて死活問題だから強制するつもりはないわ。でも、危険だと分かっていてみすみす行かせるなんて真似もできないのよ、見定めるのが私の仕事だもの」
ギルドの受付は冒険者の力量を計る重要な仕事である。無謀で無計画な探索を許可した結果、冒険者が命を落とすような事態になれば、回り回ってギルドの損失となるからだ。
過去に訪れたギルドの受付が怠慢だったわけではない。彼女……この町のギルドの受付嬢の観察眼がズバ抜けて優れているだけだ。
「だから、あなたには支援役をつけてもらいます」
「……支援役?」
馴染みのない言葉に思わず聞き返す。
同時に、ノックもなしに部屋の扉が開き、二人の人物が入ってきた。
「もう、自分の部屋の片付けくらい自分でしてくださいよアルマさん!」
「寝られりゃいいんだよ部屋なんか~」
「ベッドの上まで物だらけだったじゃないですか!」
フラフラ歩く赤毛の女性の背中を押しながら、少年が何やら小言を繰り返している。彼はすぐにソファーに座る私たちに気付き、「お客さんがいたんですか、すみません」と勢いよく頭を下げた。すぐさま立ち去ろうとする彼を受付嬢が呼び止める。
「ちょうど良かったわ。ライルくん、あなたにこの人の支援を頼みたいのだけど」
「えっ」
「えっ」
思わぬ言葉に、私も彼も固まった。
そして、その時に初めてお互いを見た。
肩より少し長い黒髪を後ろでひとつに縛った、まだ幼さの残る少年だ。先ほどの赤毛の女性とのやり取りを聞いた限り、かなりの世話焼きのようだ。言葉遣いも丁寧で好感が持てる。
しかし、ライルと呼ばれた少年はこちらを見たまま顔を青くしていた。私の見た目に怯えているのだ。大柄な上に顔に目立つ傷があり、女性や子どもだけでなく大人の男からも避けられてきた。今さら彼の反応に傷付くほど繊細ではない。
しかし、組むとなれば話は別だ。
彼だって私と二人で行動するのは遠慮したいはずだ。ここは私から辞退すべきか、と迷っている間に受付嬢が彼に何やら耳打ちをしている。聞き取れないが、恐らく私の事情を説明しているのだろう。
うんうんと頷きながら受付嬢の話を聞いていた彼が、パッと目を見開き、私のほうに向き直った。すぐにそばまで駆け寄り、ぐるりと周囲を一周した。
「どちらが聞こえにくいですか」
「左だ」
「じゃあ右側から話しかければ聞こえます?」
「ああ」
「良かった!声の大きさはどうでしょう」
「問題ない」
怯えた表情はもうどこにもない。彼は私の耳の聞こえる程度を何度か確認し、深々と頭を下げた。
「微力ですがお手伝いさせていただきます」
「……こちらこそ、よろしく頼む」
予想より随分あっさりと受け入れられたことに驚き、つられて軽く頭を下げる。そのまま今後どうするかの話に移った。
「えっ、荷物これだけ?食料は?」
「数日くらいなら食べなくても」
「ダメですよ!冒険者は体が資本でしょう!おなかが空いてたらいざという時に戦えませんよ!聴力以前の問題です!僕、ちょっと買い出しに行ってきます!」
支援すると決めた瞬間から彼の世話焼きっぷりが発揮された。私の小さな荷袋の中身を確認してから、どこかへと走って行ってしまう。まるで嵐のようだと見送りながら思った。
「あの子、ライルくんっていうんだけど、今はギルドに住み込みで働いてくれてるの」
「そ~そ~。あたしの仕事部屋もライルが片付けてくれてんだよな~」
「あんたは自分で整頓しなさいよ」
「やだよ~整理整頓とか苦手だも~ん」
ライルくんが出て行った扉を眺めながら、ぽつぽつと受付嬢が話し始めた。
赤毛の女性は向かいのソファーに寝転がったまま、ヒラヒラと手を振って口を挟む。眼帯に覆われていないほうの目が私をジロリと睨んだ気がした。彼女はギルドの鑑定士で、ここは仕事部屋だという。並べられたアイテムは彼女のコレクションなのだろう。物が多いにも関わらず片付いているのは彼のおかげというわけだ。
「オクトに移ってくるまで、彼は支援役として色んな冒険者と組んでいたのよ。でも、その時に散々な目に遭ってね……それ以来、支援役としての活動は辞めちゃったの」
「ライルを虐めた奴は相応の報いを受けさせたけどな~。二度と冒険者ができないようにしてやった~」
何があったかは分からないが、この二人が憤っていることだけは理解できた。現在ライルくんが笑顔でいられるのは彼女たちが守ってきたからか。
「あなたは見た目は怖いけど良い人みたいだし、本当に支援が必要そうだから紹介したの。ライルくんも乗り気になってくれて良かったわ」
「私に任せていいのか」
「もちろん。その代わり、役に立ったらたくさん褒めてあげて。あの子は自信を失くしてしまっているの。自分を低く見積もり過ぎてるというか……」
そんな風には見えなかったが、と先ほどの様子を思い返す。明るく振る舞ってはいたが、過去に色々なことがあったようだ。
今回の提案は私のためというより、あくまで彼の社会復帰のため。
了承の意味を込めて頷く。
「泣かしたら、あたしがブッ殺す」
「やめなさい」
赤毛の女性が一瞬だけ殺気を発した。しかし、受付嬢が咎めるように素早く手刀で彼女の脳天を打つ。この二人、もしかしたらかなりの手練れなのかもしれない。
そういった経緯があって組んだこともあり、私は可能な限りライルくんに感謝の気持ちを伝えた。実際、彼は優秀な支援役で、無理やり褒めるところを探すなどするまでもない。思ったままを言葉にすれば、彼は謙遜しながらも嬉しそうに表情をほころばせる。
心の傷の片鱗を見せる時もあった。
小さな失敗を必要以上に悔い、落ち込み、謝罪し続ける姿に胸が痛む。その度に、過去に彼を傷付けた者への怒りを感じた。
「お、おひさしぶり……です……」
久々に会った知人に向けるにはぎこちない笑みを浮かべたライルくんの視線の先に、見慣れない冒険者の青年がいた。彼は随分と親しげに話しかけているが、ライルくんの顔色は悪く、テーブルの上に置かれた拳が小刻みに震えていた。
「ライルくんと組んでいる冒険者のゼルドだ」
「どうも。俺はタバク。今日この町に着いたばっかの冒険者だ。よろしく」
「ああ、よろしく頼む」
うまく話せないライルくんに代わり、青年を見据えて名前を告げる。私を見ても怯む様子はないところをみると、かなり腕が立つようだ。
もしかしたら、このタバクという青年が過去にライルくんを傷付けた人物なのではないかと考えたが、赤毛の鑑定士の話では件の冒険者は再起不能にしたという。つまり、彼ではない。
しかし、何故か気持ちがざわついた。
ライルくんにも歩んできた人生があり、様々な人と関わってきたと頭では理解しているのに、私以外の者に心を動かされている彼を見るのが嫌だった。
それが良い感情ではないとしても。
「……タバクさん、どうして……?」
彼と再会した日の夜、うなされたライルくんがこぼした言葉に湧き上がった気持ちは何と言い表せばよいか分からない。
悲しそうに眉を寄せ、涙を流しながら青年の名を呼び続ける声を聞きたくなくて無理やり起こした。
見ていた悪夢の内容を問えば、視線をそらして違う答えが告げられた。青年とのことに私は関係ない、と一線を引かれたような気がした。
頼られたい。
縋られたい。
その一心で、弱ったライルくんにつけこむような優しい言葉をかけた。寝ぼけていたからか、分かりやすく差し出した私の手を取ってくれた。
「私以外の者に心を動かされないでくれ」
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