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56話・いじわるしないで
しおりを挟む反応を示した僕に気を良くしたゼルドさんが、今度は服の中に手を入れてきた。シャツを捲り、大きな手のひらが直接おなかを撫でていく。風呂から出てすぐだからか、指の先まで熱い。たぶん僕の身体も熱いんだろう。触れ合っている部分がじんわりと汗ばんできた。
ひとしきりおなかを撫でた後に手は引き抜かれ、今度はシャツを脱がしにかかった。太い指先が小さなボタンを外していく様子をぼんやりと見下ろす。
今日はもう寝るだけのつもりで、寝間着代わりの簡素なシャツとズボンしか身に付けていない。さっき着たばかりなのに、なんて思っているうちに僕は上半身裸の状態にされてしまった。
同じ部屋で寝起きをしているし、最近はお風呂も一緒だ。何度も見られたことがあるのに、今は無性に恥ずかしかった。着替えや入浴以外で肌を晒したことなんてないからだ。
室内とはいえ脱げば肌寒い。ふるりと肩を震わせると、ゼルドさんが慌てたように抱きしめてきた。当然ながら、ゼルドさんの上半身は金属鎧に覆われている。素肌につるりとした金属が当たり、余計にひんやりとしてしまった。
「済まない」
「い、いえ」
そうか、鎧が脱げないとこうなるんだ。分かってはいたけれど、実際に体験してみると予想以上にやりづらい。
鎧の胸元には十字の模様が浅く彫られている。手のひらを軽く押し当て、体温を移してから抱きつくと、腕を回して僕の肩を抱きしめてくれた。
「鎧が脱げたら君をもっと感じられるのに」
ゼルドさんも同じことを考えていたようで、溜め息混じりに呟いている。
鎧の下はまだ何も身に付けていない。湯上がりの汗が引いたら着替え用のキルト生地製の服を着せるつもりだったんだけど、触れ合いを優先してしまった。
「もう少ししたら鎧が脱げますね」
「……ああ」
タバクさんがダンジョン探索から帰ってきたら、すぐに『対となる剣』を譲ってもらえるように交渉しよう。鎧が脱げれば、僕たちは素肌で抱き合える。もっと互いの体温を感じられるようになる。
そして、二人で旅に出るんだ。
ダンジョンの大暴走を防ぐために。
「ライルくん」
顔を上げれば、ゼルドさんと超至近距離で目が合った。抑えきれない情欲を孕んだ瞳が僕を射抜き、無意識のうちに息を飲む。彼のものは相変わらず硬いまま僕の下腹部に当てられていた。
「これ、ツラいですよね」
手を伸ばして触れると、それはまるで別の生き物のように小さく跳ねた。
ズボン越しにそっと撫でてから、ベルトの金具を外して前をくつろげる。下穿きの布を押し上げ、存在を主張しているそれに手を這わせ、刺激を加えていく。
以前ここに触れた時に怒られたことを思い出し、手を止める。恐る恐るゼルドさんを見れば、いつもの平然とした様子とは違い、頬を赤く染めて何かに耐えるように唇を噛んでいた。僕の手を振り払うこともなく受け入れている。
あの時の僕は罪悪感や義務感で行動していた。そんな気持ちで触れられて発散しても嬉しくないのだと今なら分かる。
ゼルドさんをベッドの真ん中に座らせ、僕もベッドの上に上がって脚の間に膝をつく。下穿きの前をずり下ろすと、目の前にそそり立つゼルドさんのものが現れた。あまりの大きさにやや怯みかけるも、なんとか勇気を振り絞って直接手を伸ばして触れてみた。ビクンとゼルドさんの身体が揺れる。
「触りますね」
左手を添え、右手で先端を撫でる。肉色の見た目としっとりした質感が生々しい。お風呂で何度か見たことはあったけれど、完全に勃ち上がった状態をじっくり観察した経験はない。大きいな、と思いながら竿をゆるゆると扱いていく。
この時、僕は不思議なくらいに高揚していた。
一度は拒絶された部分に触れることを許され、ゼルドさんを楽にしてあげられるのだ。今まで僕が不甲斐ないばかりに我慢を強いてきたけれど、これからはもっと役に立てる。気持ち良くしてあげられる。
「……っく、……」
苦しそうにゼルドさんが呻く。痛いくらいに張り詰めているそれは、不慣れで覚束ない僕の手付きでも十分な刺激になったようで、すぐに限界が訪れた。
「……ライルくん、離してくれ」
「え?」
ゼルドさんは僕の肩を押し退けると、自分の手で先端を隠すように覆った。次の瞬間、彼の身体がびくんと跳ね、白濁の液が手のひらに放出された。
はぁ、はぁ、と肩で息をするゼルドさんに手拭いを差し出すが、何故か受け取ってもらえなかった。どうするのだろうと首を傾げていたら、汚れていないほうの手で二の腕を掴まれ、ベッドの上に転がされてしまった。呆然と天井を見上げていると、ゼルドさんが上にのしかかってくる。
「今度は君の番だ」
「え、あ、ちょっ」
ズボンの腰に手が掛かり、下穿きごと一気に引き下ろされた。上半身はとっくに脱がされているし、これじゃ僕だけほとんど裸だ。外気に晒され、再び身体を震わせる。
ゼルドさんが自分の身体に毛布をかけてから僕に覆いかぶさったことで肌寒さは感じなくなった。同時に、室内を照らすランプの明かりが遮断され、直接下半身が見えなくなったことで羞恥も半減する。
「ひゃあ、ッ」
ホッとしたのも束の間、ゼルドさんの大きな手のひらが半勃ち状態の僕のものを握ってきた。先ほど白濁の液が出されたほうの手だ。粘りのあるそれが全体にまとわりつき、手のひらが上下に動かされるたびに言葉では言い表せないほどの快感に襲われた。
逃げようにも、身体の上にはゼルドさんが跨るようにのしかかっており、もう片方の手は僕の腰をがっちりと掴んでいる。身動きを封じられ、ただ与えられる快楽に小さな喘ぎをこぼすしかできなくなった。
「あ、だめ、はなして、もうだめ」
「一度達したら離そう」
「だ、だって……こんなの、ぼく」
僕のものはゼルドさんの大きな手のひらにすっぽり収まっている。さほど激しくもない動きにも関わらず、自分で慰めるより遥かに強い刺激に負け、すぐに果てた。
「んん……っ、はぁ、あ……」
片手はベッドのシーツを握り、もう片方の手で顔を隠す。乱れた呼吸を何とか正常に戻そうとしたけれど、ガクガクと震えた身体では息をするだけで精一杯だった。
そういえば、ゼルドさんの手の中に出してしまった。慌てて上半身を起こそうとしたら、再び手の動きを再開された。
「やっ、なんで?もうイッたのに」
「これは私が出したものだろう?」
そう言いながら、ゼルドさんは濡れた手のひらをこちらに向けた。どろりと垂れる白濁液はどちらが出したものなのかは判別がつかない。つくはずがない。もうとっくに混じり合ってしまっているのだから。
「いじわるしないで。もうむりです」
「…………わかった」
これ以上触られたら保たない。断固拒否の姿勢を見せれば、渋々ではあるけれどやめてくれた。
ゼルドさんは僕の上半身を抱き起こし、軽く湿らせた手拭いで汚れた身体を清め、服を着せてくれた。脱力したままの僕は甲斐甲斐しく世話を焼くゼルドさんに身を任せながら快感の余韻に浸る。
本来ならばあんなものでは済まない。僕が音を上げなければ、きっと更に先の行為に及んでいたはずだ。経験不足な僕には先に進む余裕がなかった。
触れ合うことに慣れれば、いずれゼルドさんの全てを受け入れられるようになるだろうか。
「ゼルドさん、大好き」
「私もだ、ライルくん」
自分から顔を寄せ、唇を重ねる。ゼルドさんは僕の言葉に応えるように、ついばむような口付けを何度も何度も繰り返した。
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