【完結】かみなりのむすめ。

みやこ嬢

文字の大きさ
13 / 98
消えたクラスメイト

第12話:行方不明

しおりを挟む


 その日の夜、夕食が終わったくらいの時間に家の電話が鳴った。

「はい榊之宮さかきのみやで──あら、どうも~!」

 電話を取ったのはお母さんだ。町内の知り合いからみたいで、最初は笑顔だったんだけど、その表情は次第に曇っていった。お兄ちゃんとリビングでくつろぎながら、どうしたんだろうと顔を見合わせる。

「ええっ? ……ちょっと待ってくださいね」

 そう言ってお母さんは受話器の口元を押さえ、こちらに振り向いた。

夕月ゆうづき田鍋たなべさんちの叶恵かなえちゃんがまだ家に帰ってないんだって。あんた、何か聞いてない?」
「え、叶恵ちゃんが?」

 叶恵ちゃんはあたしのクラスメイトだ。真面目で大人しくて、親に無断で夜遊びなんかするような子じゃない。というか、この町に夜遊び出来るような場所なんかない。

「あたし、知らない」

 家が離れているから、叶恵ちゃんとは学校以外で会うことは滅多にない。それに、この前歩香あゆかちゃんや深雪みゆきちゃんと一緒にあたしに詰め寄ってきた。以前はともかく、今はあまり仲は良くない。

 あたしの返答を電話の相手に伝え、しばらく話し込んだ後、お母さんは受話器を置いた。

「普段よく遊んでる子たちの家にも連絡したそうなんだけどね、どこの家にもお邪魔してないらしいのよ」
「……叶恵ちゃん、どこ行っちゃったんだろう」

 時刻は夜七時半。
 当然外は真っ暗だ。

 あんなことがあったとはいえ、小学校からの付き合いだ。行方が分からないなんて聞いたら心配になってしまう。

「他の学年の子にも連絡して、それでも見つからないようだったら、警察と消防で人を集めて探しに行くことになるそうよ。ウチもお父さんが帰ってきたら行ってもらおうかしら」

 なんだか大ごとになってきた。
 さっきは心当たりはないと言ったけど、そういえば叶恵ちゃんには執着している人物がいる。

「お、お母さん、八十神やそがみくんちにも連絡ってしたのかなあ?」
「え、時哉ときやくん? ……あそこは引っ越して間もないから、まだ電話引いてないんじゃないかしら。それに、夕方におかずを届けに行った時は何も……」
「その後で遊びに来たのかもしれないよ。じゃあ、あたし今から聞きに行ってくる!」

 ソファから立ち上がり、玄関に向かおうとするあたしの手をお兄ちゃんが掴んだ。

「夕月、僕も行くよ」
「お兄ちゃんは家にいて。近所だし、すぐに帰ってくるから」
「でも、」
「あたしには味方がいるもん」

 お兄ちゃんだけに聞こえるよう、こっそりと耳打ちする。そうしたら、渋々だけど手は離された。

 あたしには七つの光が守りについている。その光と会話できるお兄ちゃんがいるから、もし何かあっても伝わるはずだ。

「……すぐ帰ってこいよ」
「うん、わかった」

 家を飛び出し、走って裏の通りに向かう。近所と言っても田舎だから家は少ない。街灯もまばらだ。目当ての家には明かりが灯っていた。留守じゃなくて良かった。

「ご、ごめんくださーい!」

 門に設置されてるインターホンを押しながら声を張り上げる。何度か繰り返していると、奥にある玄関の引き戸が開いた。

「あれ、榊之宮さん」

八十神くんの髪は濡れていて、肩にはタオルが掛かっていた。お風呂上がりだったみたい。

「ご、ごめんね。こんな時間に」
「構わないよ。あ、タッパーまだ洗ってないや」
「あっ違う違う、タッパー取りに来たんじゃないの! 聞きたいことがあって」

 慌てるあたしを見ながら、八十神くんはクスクスと笑った。
しおりを挟む
感想 79

あなたにおすすめの小説

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫(299)
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞受賞しました(^_^)/  香を操り、死者の想いを知る一族がいる。そう囁かれたのは、ずっと昔の話だった。今ではその一族の生き残りすら見ず、誰もが彼ら、彼女たちの存在を忘れてしまっていた。  ある日のこと、一人の侍女が急死した。原因は不明で、解決されないまま月日が流れていき……  その事件を解決するために一人の青年が動き出す。その過程で出会った少女──香 麗然《コウ レイラン》──は、忘れ去られた一族の者だったと知った。  香 麗然《コウ レイラン》が後宮に現れた瞬間、事態は動いていく。  彼女は香りに秘められた事件を解決。ついでに、ぶっきらぼうな青年兵、幼い妃など。数多の人々を無自覚に誑かしていった。  テンパると田舎娘丸出しになる香 麗然《コウ レイラン》と謎だらけの青年兵がダッグを組み、数々の事件に挑んでいく。  後宮の闇、そして人々の想いを描く、後宮恋愛ミステリーです。  シリアス成分が少し多めとなっています。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...