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学校の怪
第36話:慰霊碑
しおりを挟む千景ちゃんと夢路ちゃんと一緒に校門を出ようとした時、見慣れた人影が校舎裏のほうに歩いていくのを見掛けた。すぐに建物の陰に隠れて姿が見えなくなる。
あれは、八十神くん?
珍しく取り巻きが一人も周りにいなかった。休み明けで今日もたくさん女の子たちに囲まれていたし、あんまり騒がれるものだからイヤになって逃げ出したのかも。だとしたら、そっとしておいたほうがいいよね。
「どーしたの夕月」
「何かあった?」
「う、ううん、何でもない」
二人に八十神くんの話をしたら怒られちゃう。幸い気付いていないみたいだし、彼のことは言わないでおこう。
「ねえ、校舎の向こう側って何にもないよね?」
「なに急に。まあ何にもないけど」
「飼育小屋があるけど、今は何も飼ってないものね」
「あ、あれ物置じゃないんだ」
確かに、何に使うか分からないボロボロの小屋が二つ建っている。外から板で塞がれてるから飼育小屋だったとは知らなかった。
「昔は学校でウサギとかアヒルとか飼っていたそうよ。生徒の数が減ってきて飼育当番をするのが難しくなったから無くなったって」
「へえ~、そんなとこにまで少子化の影響が」
確かに、この学校は生徒数か年々減っている。一学年一クラスしかないし、あまりに人数がいないから部活動もなくなった。
「ウサギかあ。触ってみたかったな」
「山の奥に行けばイノシシとかいるんじゃない?」
「やだ~! 可愛いのがいい!!」
そんな話をしながら家に帰った。
翌日、学校で何やら騒ぎが起きていた。
もうすぐ朝礼の時間だというのにクラスメイトのほぼ全員が教室から出て廊下に出ていた。何をしているかというと、廊下の窓から校舎の裏……北側を見下ろしているのだ。
「え、なにしてるの?」
あたしも見たかったけど、そちら側の窓は人垣で埋まっている。
「なんだろね」
「さあ?」
首を傾げながら千景ちゃんたちと教室に入る。すぐに先生が来てみんな慌てて席についた。
「えー、今朝、裏の慰霊碑が壊されているのが見つかった。危ないから近付かないように」
慰霊碑?
そんなのあったんだ。
みんなが窓から見ていたのはそれかぁ。
でも、なんであんなに騒いでいたんだろう。
「慰霊碑に付いてた赤いの、血じゃない?」
「やだ、怖いこと言わないでよ」
不安そうに囁き合う声が聞こえる。
血!?
え、なにそれ怖い。
単なるイタズラじゃなさそう。
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