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選び取る未来
第79話:成長の理由
しおりを挟む必死の形相でこちらを見つめる七人。
その瞳にさっきまでの悲壮感は感じられない。
あるのは強い意志のみ。
八十神くんは顎に手を当てて少し考えてから、まず玲司さんのおじいさんを指差した。
「……富多見 誠司。事業に成功して得た財を地域に還元し、近隣の寺社に度々寄進している。信頼も厚く人望がある」
「な、なんだね急に」
突然見ず知らずの男子中学生にフルネームで呼ばれ、おじいさんはたじろいだ。
「数年前に曰く付きの山を知人から購入、その地にあった壊れた祠を新たな場所に移設した件で徳を積んだ。放っておいても死後数十年後くらいに富多見家の祖霊として神上がりしそうではあったけれど……だいぶ予定が早まったね」
移設先の土地を購入し、縁結びの祠を新しく作り直したり、それらの費用は全部玲司さんのおじいさんが負担している。
「そして、徳の余剰分が孫の富多見 玲司に流れている」
「なんだそりゃ。俺はじーちゃんのおこぼれで成長してんのかよ!」
「いや、君の成長は真の友を得た時から始まっている。同年代のまとめ役として、集団から孤立した人間をさりげなくサポートしているね。君の働きで自死を諦めた人も少なくない」
「え、そーなん?」
玲司さんも色々やっていたみたい。それを聞いて、お兄ちゃんがムッと眉間に皺を寄せた。
「……つまり、おまえが僕にしつこく電話やメールしてくるのもサポートの一環だったのか」
「朝陽は違うって。俺がしたいから連絡してんの!」
「どうだか」
小声での言い争いが続く中、八十神くんが視線を移した。
「伊能 千景。君の家は代々この辺りの地主で、ここの神社の氏子総代を何度も務めている。だから、さっきから御祭神がうるさいんだよね。君に危害を加えるなと怒っている」
「え、神様が?」
ここは近所にある神社の裏にある森。
だから神様の目が届くんだろうか。
「それと、明野 夢路。鞍多 寅生。二人の家もこの神社の氏子だよね」
「わ、私たちも?」
「それより、おまえ、なんで俺の下の名前まで知ってんだ。あと呼び捨てやめろ」
あたしも先生のフルネーム初めて聞いた。
「他の若い人たちと違い、君たちはこの町から出ようという気がない。だから特別な加護を受けている。……いや、逆だな。加護を受けているから出ていかないのか。そして、この前榊之宮さんが浄化した動物の魂。その徳が神社を通じてそれぞれに分配され、これが魂の成長の元になっている。それと末社の神がそれぞれ追加で加護を授けてる。この前小火を出した竈の神は鞍多先生に。火と相性いいのかな」
慰霊碑の動物霊を浄化した徳?
神社が徳の分配を仲介してるって面白いな。
鞍多先生には炎を操る華陀真さんが憑いている。性格は真逆だから不思議だったけど、属性の相性だったみたい。
「田鎬 叶恵は転生の度に里巳 歩香を支える運命にある。毎回迷惑を掛けられてるのに辛抱強く側に居続けている。それと、さっきの縁結びの神との結び付きが強い。本来なら神格化まであと数度転生して修行を積まなくてはならなかったはずなのに、今回の件でクリアしてる」
「え、私と歩香ってそうなの?」
転生する度に一緒ってすごい。
しかも毎回迷惑を掛けられるのが確定してる。
それでも叶恵ちゃんは見捨てなかったんだね。
「今回、君たちは神格化した魂とそれぞれ同調し、同じ気持ちを共有した。それが一番魂に影響を与えている」
最後に、八十神くんはお兄ちゃんを見た。
「──そして、榊之宮 朝陽。こうなるように仕組んだのは君だね? 今回の人選は単なる寄せ集めじゃない。もしかして最初からこれを狙っていたんじゃない?」
「……まさか。たまたま近くにいた頼れる人たちがこのメンバーだっただけだよ」
睨み合う八十神くんとお兄ちゃん。
間に挟まれたあたしは、ただただ二人を交互に見るしか出来ない。
えーと、これ、どういうことなの?
「なんで八十神くんはそんなことが分かるの?」
「ちょっとイレギュラーな展開になったから天界に問い合わせた」
「問い合わせとか出来るんだ……」
コールセンターでもあるのかな?
過去から現在に至るまで、全ての情報を把握されてるってことだよね。なんだか怖い。
「さて、どうしようか」
八十神くんは本当に困った顔をしている。
どうしようかって……どうなるの。
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