58 / 83
第九章 思い出の食堂
第二話
しおりを挟む
「取り戻しましたな」
マルコシアスが感慨深く告げる。旧王都のインフラも復旧していった。街の様子を見終わると接見室の玉座に座る者に眼を戻す。
「そうね……。ここは旧都とか離宮にしましょう」
エレシュキガルは「失地王」などと侮辱されずに済んだことになる。
「アネットには感謝ね」
「そうですな。彼女が居なければ貴殿はエレシュキガルの地位があぶないところでした……下手すると命も」
そう、下手すると革命やクーデターが起こるところであった。
「影裏族の王はミナレス火山のふもとに?」
「そのようで」
「この戦いが終わると真の戦いが」
「そうです。聖女アネットとかの家族との一騎打ちが」
「でも四対一じゃ卑怯よ」
「それも考えてあります。あのフェルナンデスらも参加してもらいましょう」
「決闘場所はどこがいいかしら?」
この問いにマルコシアスは考えた。
「生贄を捧げし場所……この旧王都にあるテンカロ神殿がふさわしいでしょう。アネットが負けたら彼女を生贄に捧げるのです。それこそ人間族にとって最大の屈辱でしょう」
そこはエレシュキガルにとって偽聖女の心臓を食べた勝利の場であった。つまりアネットを利用するだけして最後は獲物にするという意味である。もちろんアネットの心臓を食べる者はエレシュキガルである。
「……あなたはとことん悪ね」
「そう、あなたも悪役にならねばならない。エレシュキガルであるうちは。そして因縁の人物をぶつけるのです」
「クロエ=シャーロットの事ね」
「負けてもあなたは別のエレシュキガルを指名すればいいだけ。まだエレシュキガル候補の段階なら替わりはいくらでもいる。でも彼女には次期エレシュキガルとして奥義をいくらでも授けられる。つまり勝ちはこちらにある。戦争せずして我らは勝つのです……まあ向こうも国のトップである聖女を退位してからアネットは挑むのだろうけど。それでも名誉で我らが勝てばよい」
それを聞いた悪役令嬢はおぞましさのあまり笑いいそしんだ。思わず震えてしまった。
(恩を仇で返すとは……なんという悪人かしら……私)
◆◇◆◇
「これが『魔王』の城」
アネットは驚く。周りの人間も驚いていた。
中は質実剛健であり美も備えていた。庭園はきれいで人間の美学と何も変わらぬ。王宮図書館まであり知を大事にしていることが分かる。
「なんと見事な」
フェルナンデスが感心する。長年のビヒモスラージャや聖女やエレシュキガル達の美学というものがよくわかる。
人間族も獣族も王城にすべて収容しきれないので近くの使われてないホテルを使っている。この光景を見るのは限られたものだけだ。大食堂も見た。普段の食事も見た。何も人間族と変わらない。でもそれは当たり前なのだ。獣族はかなりが元人間出自なのだから。
アネットはグレモリーの部屋を、フェルナンデスはベレトの部屋を使うこととなった。
復旧工事のためここに獣族の軍隊の一部を置くことになる。それは戦力が少しそがれる事を意味していた。
いくらここまで快進撃とは言え、大丈夫なのだろうか。結界の二重張りに死角はないのか。
アネットはどことなく不安だった。
マルコシアスが感慨深く告げる。旧王都のインフラも復旧していった。街の様子を見終わると接見室の玉座に座る者に眼を戻す。
「そうね……。ここは旧都とか離宮にしましょう」
エレシュキガルは「失地王」などと侮辱されずに済んだことになる。
「アネットには感謝ね」
「そうですな。彼女が居なければ貴殿はエレシュキガルの地位があぶないところでした……下手すると命も」
そう、下手すると革命やクーデターが起こるところであった。
「影裏族の王はミナレス火山のふもとに?」
「そのようで」
「この戦いが終わると真の戦いが」
「そうです。聖女アネットとかの家族との一騎打ちが」
「でも四対一じゃ卑怯よ」
「それも考えてあります。あのフェルナンデスらも参加してもらいましょう」
「決闘場所はどこがいいかしら?」
この問いにマルコシアスは考えた。
「生贄を捧げし場所……この旧王都にあるテンカロ神殿がふさわしいでしょう。アネットが負けたら彼女を生贄に捧げるのです。それこそ人間族にとって最大の屈辱でしょう」
そこはエレシュキガルにとって偽聖女の心臓を食べた勝利の場であった。つまりアネットを利用するだけして最後は獲物にするという意味である。もちろんアネットの心臓を食べる者はエレシュキガルである。
「……あなたはとことん悪ね」
「そう、あなたも悪役にならねばならない。エレシュキガルであるうちは。そして因縁の人物をぶつけるのです」
「クロエ=シャーロットの事ね」
「負けてもあなたは別のエレシュキガルを指名すればいいだけ。まだエレシュキガル候補の段階なら替わりはいくらでもいる。でも彼女には次期エレシュキガルとして奥義をいくらでも授けられる。つまり勝ちはこちらにある。戦争せずして我らは勝つのです……まあ向こうも国のトップである聖女を退位してからアネットは挑むのだろうけど。それでも名誉で我らが勝てばよい」
それを聞いた悪役令嬢はおぞましさのあまり笑いいそしんだ。思わず震えてしまった。
(恩を仇で返すとは……なんという悪人かしら……私)
◆◇◆◇
「これが『魔王』の城」
アネットは驚く。周りの人間も驚いていた。
中は質実剛健であり美も備えていた。庭園はきれいで人間の美学と何も変わらぬ。王宮図書館まであり知を大事にしていることが分かる。
「なんと見事な」
フェルナンデスが感心する。長年のビヒモスラージャや聖女やエレシュキガル達の美学というものがよくわかる。
人間族も獣族も王城にすべて収容しきれないので近くの使われてないホテルを使っている。この光景を見るのは限られたものだけだ。大食堂も見た。普段の食事も見た。何も人間族と変わらない。でもそれは当たり前なのだ。獣族はかなりが元人間出自なのだから。
アネットはグレモリーの部屋を、フェルナンデスはベレトの部屋を使うこととなった。
復旧工事のためここに獣族の軍隊の一部を置くことになる。それは戦力が少しそがれる事を意味していた。
いくらここまで快進撃とは言え、大丈夫なのだろうか。結界の二重張りに死角はないのか。
アネットはどことなく不安だった。
0
あなたにおすすめの小説
黄金の魔族姫
風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」
「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」
とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!
──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?
これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。
──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!
※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。
※表紙は自作ではありません。
最低の屑になる予定だったけど隣国王子と好き放題するわ
福留しゅん
恋愛
傲慢で横暴で尊大な絶世の美女だった公爵令嬢ギゼラは聖女に婚約者の皇太子を奪われて嫉妬に駆られ、悪意の罰として火刑という最後を遂げましたとさ、ざまぁ! めでたしめでたし。
……なんて地獄の未来から舞い戻ったギゼラことあたしは、隣国に逃げることにした。役目とか知るかバーカ。好き放題させてもらうわ。なんなら意気投合した隣国王子と一緒にな!
※小説家になろう様にも投稿してます。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています
h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。
自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。
しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━?
「おかえりなさいませ、皇太子殿下」
「は? 皇太子? 誰が?」
「俺と婚約してほしいんだが」
「はい?」
なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。
婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。
桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。
「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」
「はい、喜んで!」
……えっ? 喜んじゃうの?
※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。
※1ページの文字数は少な目です。
☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」
セルビオとミュリアの出会いの物語。
※10/1から連載し、10/7に完結します。
※1日おきの更新です。
※1ページの文字数は少な目です。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
※完結しました。
離婚約――それは離婚を約束した結婚のこと。
王太子アルバートの婚約披露パーティーで目にあまる行動をした、社交界でも噂の毒女クラリスは、辺境伯ユージーンと結婚するようにと国王から命じられる。
アルバートの側にいたかったクラリスであるが、国王からの命令である以上、この結婚は断れない。
断れないのはユージーンも同じだったようで、二人は二年後の離婚を前提として結婚を受け入れた――はずなのだが。
毒女令嬢クラリスと女に縁のない辺境伯ユージーンの、離婚前提の結婚による空回り恋愛物語。
※以前、短編で書いたものを長編にしたものです。
※蛇が出てきますので、苦手な方はお気をつけください。
死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?
神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。
(私って一体何なの)
朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。
そして――
「ここにいたのか」
目の前には記憶より若い伴侶の姿。
(……もしかして巻き戻った?)
今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!!
だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。
学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。
そして居るはずのない人物がもう一人。
……帝国の第二王子殿下?
彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。
一体何が起こっているの!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる